■Loggins & Messina (Columbia)
ここ2~3日、グッと春めいてきましたですね。うん、こうなると聴きたくなるのが本日の主役たるロギンス&メッシーナ♪♪~♪
1972年の結成デビュー当時から、玄人筋を中心にジワジワと人気を集めていたのですが、個人的には翌年に我国でも大ヒットした「愛する人 / Thinking Of You」、またその前段となるR&Rヒットの「ママはダンスを踊らない / Your Mama Don't Dance」あたりから、急速に一般ウケしたのが、当時の事情でした。
そして本日ご紹介のアルバムは、その初期の2大ヒットを含んだ人気盤で、通算2作目のLPです。
A-1 Good Friend
A-2 Whiskey
A-3 Your Mama Don't Dance / ママはダンスを踊らない
A-4 Long Tail Cat
A-5 Golden Ribbons / 勲章
B-1 Thinking Of You / 愛する人 (album version)
B-2 Just Before The News
B-3 Till The End Meet / 片思い
B-4 Holiday Hotel
B-5 Lady Of My Heate
B-6 Angry Eyes
まず特筆すべきは、普通、こうしたシンガーソングライター系のレコーディングにはスタジオセッションで活躍するミュージシャンが集められ、実際のライプ巡業では専用のツアーバンドが編成されるところを、ロギンス&メッシーナは、まずレギュラーのバンドを率いての活動からレコード作りも、その体制を維持していたことでしょう。
ですから全体の仕上がりは、なかなかバラエティに富んでいて、さらに纏まりがきっちりと気持良いほどにキマッています。
メンバーはケニー・ロギンス(vo,g)、ジム・メッシーナ(vo,g) 以下、ラリー・シムズ(b,vo)、メレル・ブリガンテ(ds,per,vo)、アル・ガース(fiddle,sax)、ジョン・クラーク(sax,fl,key) という実力派のレギュラーが集められ、さらに特別ゲストとしてマイケル・オマーティアン(key) やミルト・ホランド(per) 等々の売れっ子も参加しているのですから、ジム・メッシーナのプロデュースもツボを外していません。
A面ド頭からクラヴィネットが唸るファンキーロックな「Good Friend」が、モロに意表を突いた痛快さっ! ロギンス&メッシーナをカントリーロック風味のウエストコースト系コンビ、なぁ~んて思っていると確実に仰天させられるでしょう。告白すれば、これを最初に聴いた時のサイケおやじにしても、あまりに自分好みのソウル&ジャズっぽさと溌剌としたロック本流の融合に接し、うっと絶句させられた記憶が、今も鮮烈です。
あぁ、このパキパキにファンキーなギター、躍動するリズム隊のヘヴィなグルーヴ、隠し味というにはあまりにも印象的なキーボードとホーンの使い方! 実にクールで熱い仕上がりですよねぇ~♪
そして一転、フルートと生ギターが彩るハートウォームな「Whiskey」は、定番のコーラスワークも含めて、我国の歌謡フォークへの影響も絶大でしょうし、続く「ママはダンスを踊らない」が、これまた楽しい浮かれたR&R♪♪~♪ その突き放したような曲メロとメリハリの効いたビート感、さらにサックスやエレキギターのシンプルなアドリブ等々、まさに当時の流行になりかかっていたオールディズポップスのエッセンスを凝縮していますから、ヒットするのは当たり前田のクラッカー!
さらにポール・マッカートニー調の「Long Tail Cat」、じっくり構えてウエストコーストロックのシリアスな部分を表現した「勲章」と続くA面は、本当に幕の内弁当的なんですが、なんら違和感なく楽しめると思います。
そしてB面には私の大好きなヒット曲「愛する人」がトップに据えられていますが、これはシングルとは別テイク! 比較すれば、こちらはソフトバージョンという感じですが、そよ風のような気持良さは不変ですし、アルバム全体の流れからすれば、これしか無いでしょうねぇ~♪
そうした部分はカントリーロッキンなアップテンポのインスト「Just Before The News」へと見事に繋がり、それを短い前奏曲としたケニー・ロギンスの名唱「片思い」が尚更に味わい深くなるのです。あえて言えばデイヴィッド・クロスビーがスティーヴィー・ワンダーしたような、摩訶不思議な折衷スタイルが良い感じ♪♪~♪
そして王道カントリーロックの「Holiday Hotel」、実にジェントルなメロディがクセになるボサロック「Lady Of My Heate」を経て始まるのが、このバンドの真骨頂となった8分近い長尺演奏「Angry Eyes」で、ズパリ、フュージョンロックですよっ! もちろんメンバー各人のアドリブパートも用意され、ランテタッチのファンキーグルーヴと乾いたジャズフィーリングが絶妙に融合した名演になっています。
ちなみに、この曲は実際のステージでもバンドの実力を披露する、ひとつのハイライトになっていて、それは後に発売されるライプ盤「オン・ステージ」にも熱い演奏が収録されていますが、このスタジオバージョンの纏まりとスリルのバランスも秀逸だと思います。
ということで、今となってはロックの名盤本に載るようなアルバムではないかもしれませんが、時代へ見事にアクセスした仕上がりには、なかなか愛着を覚えるファンも大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
ただしこのアルバムでも顕著なように、ファンキーもカントリーロックもシンガーソングライターも、さらにはフュージョンやプログレにまでも手を伸ばしてしまうバラエティな意欲が、一部では節操が無いとか、融通が利きすぎるという批判にもなっていたようです。
そのあたりは後に発表されていく作品群を聴き進めば、確かに否めません……。
しかし、このアルバムは、イイよなぁ~~~♪
と、私は言いたいです。
特に、この時期! 春先限定の名盤かもしれませんよ。