OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

テンプターズ登場

2010-11-24 15:22:47 | 日本のロック

今日を生きよう / ザ・テンプターズ (フィリップス)

GS全盛期に、タイガースと人気を競っていたのがテンプターズでした。

メンバーは萩原健一(vo,hmc)、松崎由治(vo,g)、田中俊夫(g)、高久昇(b)、大口広司(ds) の5人組で、現在では俳優であり、個性的な歌手でもある萩原健一が、当時はショーケンの愛称で看板スタアだったグループとして記憶されていると思いますが、そのテンプターズこそ、ストーズやキンクス、あるいはスモール・フェィセスといったブリティッシュビートの有名バンドを我国に知らしめた功績も、実は忘れてはならないのです。

なにしろサイケおやじがリアルタイムから好きだったスモール・フェィセスを知ったのは、テンプターズがテレビや雑誌で事ある毎に尊敬するバンドして名前を出していたからですし、萩原健一のヘアースタイルやバンドの衣装も、イギリスで最高のセンスとされていたスモール・フェィセズからの影響が大きかったと言われています。

またテンプターズの不良っぽい雰囲気は、前述したライバル的な存在のタイガースに比べると抜群のカッコ良さがありましたから、最初はタイガースのファンだった女の子達がテンプターズへとシフトする浮気現象が頻発したのも、決して尻の軽いことではありません。

そしてテンプターズには、ロックバンド本来のムードを感じ取った野郎どものファンも意外と多く、サイケおやじも堂々と、そのひとりだったのです。

さて、本日掲載したのは昭和42(1967)年秋に発売されたテンプターズのデビューシングル盤で、それをあえてB面収録の「今日を生きよう」にしたのは、サイケおやじの趣味性の表れにすぎません。

ちなみに当時のシングル盤はA・B面両用の二つ折りタイプのスリープが使われることが多いという、それが我国高度成長期の証でもありましたですね。

で、この「今日を生きよう」は、ご存じのとおり、日本語の歌詞が付けられた洋楽カバーの曲なんですが、これが一般的にはアメリカ西海岸系のポップスバンドだったグラス・ルーツの大ヒットバージョンは決してオリジナルではなく、実はイタリア産!?

「Piangi Con' Me」というのが原題で、それはイタリア語で歌われたバージョンが幾つか残されているそうですが、サイケおやじは残念ながらレコードを持っていません。

しかしイタリアや欧州各地では相当にヒットしていたのでしょう。前述したグラス・ルーツの英語バージョンが作られたのもムペなるかな、柳の下のなんとやらで、やはり様々なグループや歌手による多くのカパーが出ているのですが、それにしてもテンプターズの日本語バージョンのカッコ良さは出色!

ワンッ、ツー、スリー、フォ~
 シャ~、ラ~、ララ、ララ~、おまえが~
 シャ~、ラ~、ララ、ララ~、好きだよぉ~

というサビが出来過ぎなほどキマッているのは、なかにし礼が書いた日本語詞の覚え易さもあるんですが、やはりショーケンが歌う、ちょいと刹那的なカッコ良さがあればこそっ!

またバンド演奏そのものも、なかなかタイトなノリが素晴らしいと思います。

そして後に知った事ではありますが、その頃にラジオで聴いて、これがオリジナルと思っていたグラス・ルーツのバージョン「Let's Live For Today 」が明るく前向きな雰囲気だったのとは異なり、テンプターズの歌と演奏から感じられる微妙に退廃的なムードは、なんとリビング・デイライトという、日本ではほとんど無名のバンドが同時期に発売していたカパーを、テンプターズ流儀に解釈したものだという真相です。

ちなみに本日、何故に「今日を生きよう」を書いたかと言えば、某オークションで問題のリビング・デイライトが演じるシングル盤を落札出来たからなんですよ♪♪~♪

あぁ、早く届かないかなぁ~~♪

まあ、それはそれとして、サイケおやじがリアルタイムでこのテンプターズのシングル盤を買ったのは、もちろん「今日を生きよう」にシビレていたからです。

そして本来のA面曲「忘れ得ぬ君」だって、作者の松崎由治が会心の出来として個性的なリードボーカルを聞かせる、これまた刹那の名曲で、ショーケンはハーモニカを演じているんですから、捨て難い魅力があるのは確かてす。

ただ、それゆえにスタア性という事を鑑みれば、確かに松崎由治がライプステージやテレビ出演で、それこそ泣きそうになって「忘れ得ぬ君」を歌う姿も強い印象を残していますが、ショーケンのちょいと不貞腐れたロックフィーリングの自然な発露ともいうべき佇まいには、天性のものを感じてしまうんですよねぇ~。

もちろん松崎由治がテンプターズのために書き続けたオリジナル曲は素晴らしい歌ばっかりですし、バンド全員が醸し出すロッカーとしての不良性、また大口広司のタイトなドラミングを主軸にしたガッツ溢れるビートバンドとしての本質は、決して忘れてはならないでしょう。

実際、幸運にもその頃に数回接したテンプターズのライプでは、もちろん歌謡ヒットも演じていましたが、ストーンズの「Satisfaction」や「Jumpin' Jack Flash」、アニマルズの「孤独の叫び」等々の定番の他にビートルズやゾンビーズのカパーまでも堂々とロックビートを全面に出し、それこそ嬉々としてやっていたんですよっ!

しかしそれでも今日、アイドルGSだったの如き印象しか残っていないのは、ショーケンのスタア性の強さであり、「神様おねがい」や「エメラルドの伝説」等々の歌謡ロック路線のヒットがショーケンによって、かなり劇的なパフォーマンスになっていたからでしょう。特に「神様おねがい」なんか、ショーケンが膝まづいて神様に祈るポーズまで演じていたんですよねぇ……。

まあ、それもロケンロールの本質のひとつではありますが、不思議にも退廃したムードを日本のロックでメジャーに展開したテンプターズの本領は、既にデビューシングルから全開していたというのが、本日も独断と偏見に満ちた結論なのでした。

暴言、ご容赦願います。

コメント (5)
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