■孤独の旅路 / Neil Young (Reprise / ワーナーパイオニア)
ニール・ヤングの人気を世界的に決定づけたシングルヒット曲で、これがラジオから流れまくった昭和47(1972)年の我国でも、歌謡フォークの大ブームと連動するが如き有様でした。
実際、遠藤賢司や初期のRCばかりではなく、リアルタイムで活躍していたフォーク系シンガーのネタ元のひとつがニール・ヤングだった!?! それが一般のファンに知れ渡ったほどです。
ご存じのとおり、ニール・ヤングはバッファロー・スプリングフィールドのメンバーとして1966年にメジャーデビューしながらも、それは自我の強さだったと言われていますが、結果的にグループ内では浮いた存在として、出入りが激しかったようです。
そして結局は自らの才能を活かすべく、1969年頃から自己名義のレコードを出し始め、それは局地的とはいえども、忽ち高い評価と人気を集めたのですが、何の因果か、同時期には前述したバッファロー・スプリングフィールドでの盟友であり、またライバルでもあったスティーヴン・スティルスがグラハム・ナッシュやディヴィッド・クロスピーと組んでいたCS&Nに参加し、CSN&Yとして大ブレイクした経緯は今や歴史だと思います。
しかしニール・ヤングの本質的な魅力は、ある種の我儘というか、誰にも打ち消すことの出来ない個性の発露であって、平たく言えば、例のクセの強い声質によるボーカルと不思議な「泣き」のメロディ感覚を融合させた歌いっぷり、さらにヘタウマの極北的なエレキギターとヘヴィなビートを潜ませたアコースティックギターは、一度でも虜になると、決して抜けだせない魅力に溢れています。
そのあたりを確実に楽しめるのは、現在まで夥しく作られたソロアルバムの中でも、特に初期というか、1970年代中頃までの作品に顕著だと感じるのは、サイケおやじばかりでは無いでしょう。
前述したように我国のフォーク系シンガーの多くが、そのスタイルを積極的に取り入れていた事も、また然りだと思います。
ちなみにサイケおやじが、何時頃からニール・ヤングを意識したのかは、ちょいと定かではないんですが、周囲の仲間内では、サードアルバムの「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」が最高っ♪♪~♪ という評判がありましたし、また個人的にも映画「いちご白書」で使われていたニール・ヤングの楽曲で聞かれるギターソロのエグ味は気になるところでした。
そして決定的だったのが、CSN&Yのライプ盤「4ウェイ・ストリート」におけるスティーヴン・スティルスとのエレキギター合戦、あるいはアクの強いソロパフォーマンスの印象度!!!
そんな諸々があっての流れで、いよいよ出たのが「孤独の旅路 / Heart Of Gold」だったというわけです。
まずはイントロからヘヴィなビートを表出するアコースティックギターのカッティング、それと呼応する重いドラムスとベース、さらに哀愁たっぷりのハーモニカ♪♪~♪
こういう最高のお膳立てがあって歌い出されるニール・ヤングが自作のメロディは、我儘な猫のような声質に主導され、限りなく刹那的なロックを構築していきます。
あぁ、こういう境地って、ボブ・ディランとは似て非なる自作自演ロックだよなぁ~~♪
そして意地っ張りなサイケおやじは、当時の流行だった歌謡フォークや和製シンガーソングライターのレコードを聴きたくても、それが素直に出来なかった見苦しい行動をニール・ヤングというフィルターを通して、なかなか狡い言い訳をすることになります。
それについてのあれこれは今回、ご容赦願いたいところなんですが、それにしてもニール・ヤングの存在感は圧倒的で、サイケおやじは忽ち苦しい経済状況の中、過去の音源の探索や新譜を待望した気持は言うまでもありません。
ちなみにニール・ヤングの楽曲は、あの個性的な声質や節回しからして、ちょいと女々しい印象なんですが、歌詞の中身は意外なほど硬派であり、また本音の心情吐露が出来なくて下手な嘘をついてしまったような自暴自棄が魅力のひとつかもしれません。
それと今となっては何かと問題になる音楽的な変遷については、やりたい事をやったという以外に結論は無いわけですが、1970年代後半にはAORに走ったシンガーソングライターが大勢いた中にあって、ある意味では頑なな姿勢を貫いたところは流石だと思います。
また独得の味わいが深いエレキギターの魅力は語りつくされている感もありますが、個人的にはアコースティックギターでのヘヴィなビートの出し方が大好き♪♪~♪ ジェームス・テイラーとは別の意味で、サイケおやじの目標とする偉人でもあります。
という事で、ニール・ヤングについては、いくら書いても尽きないものがありますので、今後もジワジワとご紹介する所存ですが、まずは「孤独の旅路」が出なければ、そのきっかけもありません。
そしてサイケおやじは、今でもあの重たいビートのイントロと刹那のハーモニカが流れてくると、思わず胸が熱くなるのでした。