OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

これは不思議に飽きない名盤

2010-11-14 10:02:36 | Jazz

3 Blind Mice / Art Blakey & The Jazz Messengers (United Artist)

ジャズ・メッセンジャーズの全盛期が何時だったのか、今となっては、そのキャリアの全てがそうだったしか言えませんが、本日ご紹介のアルバムが制作された1962年は、その決定的な時期だった事に異論は無いと思います。

なにしろ当時のメンバーはフレディ・ハバード(tp)、カーティス・フラー(tb)、ウェイン・ショーター(ts)、シダー・ウォルトン(p)、ジミー・メリット(b)、そして御大のアート・ブレイキー(ds) という黄金の3管編成!

しかも音楽的なリーダーシップはウェイン・ショーターが握っていたと言われていながら、メンバー各々が作編曲にも長けていた事は、このアルバムの充実度に顕著でしょう。

それは当時の最新流行だったモード手法とジャズ・メッセンジャーズ伝来のファンキーな味わいが見事に融合した、まさに唯一無二のモダンジャズだと思います。

録音は196年3月、ハリウッドにあったクラブ「ルネサンス」でのライプセッションという事で、先鋭的な熱気とクールなカッコ良さが横溢しているところも大きな魅了♪♪~♪

A-1 Three Blind Mice
 カーティス・フラーの作曲とクレジットされていますが、実態は古くからアメリカに伝わる童謡のメロディをモード的に解釈したもので、そのアレンジをカーティス・フラーが担当したということでしょう。
 そして結果はアート・ブレイキーの強いジャズビートに煽られた、なかなか見事なモード大会! かなり意地悪なベースワークをやらかしているジミー・メリットも流石の存在感を示すリズム隊の動きが曲者でしょう。
 ですから、チョイ聞きにはシンプルなウェイン・ショーターのアドリブが深淵な企みに満ちている事が、続くカーティス・フラーの絶好調節を呼び込み、さらにクールで熱いフレディ・ハバードのトランペットを炸裂させる原動力になっていると思います。
 つまり決して一筋縄ではいかないバンド全体の纏まりは鉄壁で、これは今に至るも不滅の名演♪♪~♪
 実は告白すれば、最初に聴いた時にはそれほど感銘する事もなかったんですが、結果的には何度聴いても飽きないどころか、その度に得体の知れない凄さを感じてしまうんですねぇ~♪
 またシダー・ウォルトンの控えめな伴奏も良い感じ♪♪~♪
 う~ん、やっぱり当時のジャズ・メッセンジャーズは最強のバンドでした。

A-2 Blue Moon
 お馴染みのスタンダードメロディを朗々と吹いてくれるフレディ・ハバードの潔さ!
 それは所謂パラードプレイでありながら、静謐な緊張感と躍動的なジャズ魂に満ちた至高の名演といって過言ではないでしょう。特にジェントルなテーマ解釈からグッと腰の入ったアドリブパートでの奔放な歌心は絶品♪♪~♪
 ちなみに演奏の主役はフレディ・ハバードの独り舞台ではありますが、リズム隊の堅実なサポートに加え、カーティス・フラーとウェイン・ショーターが寄り添うホーンによるハーモニーがシブイ!
 まさに3管編成が狙いどおりの魅力になっていると思います。

A-3 That Old Feeling
 これまた映画音楽からスタンダード曲となった素敵なメロディをシダー・ウォルトンが主役となって演じる魅惑のトラック♪♪~♪
 もちろんバックでは見事な3管のアンサンブルとグルーヴィなペース&ドラムスのサポートがありますから、シダー・ウォルトンが持前の歌心と美しいピアノタッチを全開させたファンキーでスインギーな展開はお約束以上の仕上がりです。
 そして個人的にも、昔はこの演奏ばっかり聴いていた前科を告白しておきます。

B-1 Plexis
 シダー・ウォルトンが書いた先鋭的なモード曲で、ラテンビートも交えたアップテンポのバンドアンサンブルが見事なテーマ演奏を聴いているだけで、本当に血が騒ぐ名演です。
 そしてアドリブ先発のフレディ・ハバードが血管ブチキレの突撃トランペットを炸裂させれば、ウェイン・ショーターの意図的な「はぐらかし」を多用した変態フィーリングが逆に心地良く、ついにはカーティス・フラーの爆裂トロンボーンがボケとツッコミを一人二役で披露するという、これぞっ、モダンジャズの本流が凄いですねぇ~♪
 またリズム隊の躍動感も素晴らしい限りで、シダー・ウォルトンのアドリブパートでトリオ編成になった時のヘヴィでファンキー、そして尖がったフィーリングは、同時期のジャズ界では圧倒的な存在感を示していると思いますし、それこそがジャズ・メッセンジャーズをトップバンドに君臨させた原動力じゃないでしょうか。
 ちなみに、この頃のマイルス・デイビスのレギュラーバンドはケリー、チェンバース&コブという黄金のリズムセクションが抜けていたそうですし、ジョン・コルトレーンのレギュラーカルテットのリズム隊だったマッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という怖い3人組にしても、親分のジョン・コルトレーンがライプの現場はともかく、レコードの売り上げで苦戦を強いられていたとあっては、尚更だと思います。 

B-2 Up Jumped Spring
 フレディ・ハバード書いたキュートなメロディが素敵な人気曲で、作者のミュートトランペットも素晴らしいんですが、ワルツテンポを強靭にドライヴさせていくリズム隊、特にアート・ブレイキーの繊細で豪胆なドラミングが最高♪♪~♪
 あぁ、これがジャズ・メッセンジャーズの魅力でしょうねぇ~~♪
 テーマ部分でのバンドアンサンブルも気が利いていますし、ウェイン・ショーターの摩訶不思議なアドリブが思わせぶりを演じれば、カーティス・フラーの春風のようなトロンボーンが絶妙の和みを提供してくれますよ。
 また、気になるシダー・ウォルトンが些か煮え切らない感じではありますが、フレーズを積み重ねるうちに調子を上げていく流れは決して憎めず、これも現場主義の結果オーライいう、如何にもジャズの楽しみだと思います。

B-3 When Lights Are Low
 オーラスは、これまた良く知られたスタンダード曲をカーティス・フラーを主役に据えての大快演♪♪~♪ 実際、ここでのスインギーに良く歌うトロンボーンは圧巻ですし、バックのホーンアンサンブルとのコンビネーションも最高です。

ということで、このアルバムはジャズのガイド本には必ずと言っていいほど紹介される、所謂名盤のひとつなんですが、もちろんサイケおやじは後追いで聴いた事もあって、最初はピンっときませんでした。

というか、ジャズ・メッセンジャーズにはイケイケの先入観を抱いていた所為もあるでしょう。

それがこのアルバムでは、メンバー各人の独り舞台的な演奏が多く収められ、またアート・ブレイキーの強烈なドラムソロも無く、また白熱したアドリブの応酬よりは、バンドアンサンブルを重視したグループとしての表現が、個人的には物足りなくもありました。

しかし、それこそが、当時は最先端だったのでしょう。

ご存じのとおり、この時期の音源からは後に未発表演奏集が出された事によって、そこに聴かれる如何にもハードバップ的な展開は、モード手法に基づきながらも、ちょいと古臭い感じが否めません。

まあ、個人的にはそれも大好きな世界ではありますが、親分のアート・ブレイキーにすれば、長年在籍したブルーノートでの契約を更新せず、あえて別レーベルに移ったからには、新しいものを披露する意気込みがあったんじゃないでしょうか。

ちなみに当時のライプ映像に接してわかった事ではありますが、実際のステージでもメンバー各人の独り舞台的な演奏がメインという状況は、なかなか興味深いものがあります。

そう思えば、このアルバムの聴き飽きない魅力も肯定する他はありませんし、リアルタイムで接した先輩ファンを羨む気持ちが打ち消せません。

そして以降、これもサイケおやじが大好きな名盤「ウゲツ」とか、まさにモード時代の代表作を残していくジャズ・メッセンジャーズにとっては、全盛期の証となった記念碑として、永遠に聴かれ続けるアルバムと断言して、後悔しないでしょう。

最後になりましたが、今回の病気騒動の顛末では、皆様にいろいろとご心配をおかけし、また励ましとお見舞いのご厚情には深く感謝する次第です。

そして本日から、サイケおやじの生活と音楽というテーマに沿ったプログを再び続ける所存ですので、よろしくお願い致します。

コメント (2)
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