■かなしみ通り / 野本直美 (discomate / ビクター)
今にして思えば、日本における昭和50年代中頃からの大衆音楽は歌謡曲もロックも、また演歌やアイドル歌謡さえも、「ニューミュージック」という便利な言葉で括られるほど、ひとつの方向性を強制されていた時期が確かにありました。
ですから、所謂シンガーソングライターと称される自作自演の歌手にしても、それが持ち味だとはいえ、頑なに自分だけの世界を表現していては売れないという現実の厳しさに直面させられ、路線やスタイルの変更を余儀なくされながら、結局は……。
プロとしてのビジネスを成り立たせるためには、そ~ゆ~事だって、何れば自分自身の表現を貫く為の手段とは思いつつ、ファンやマニアからすれば、気持ちを共有しかねる状況は哀しいわけです。
本日掲載のシングル盤を公式プロデビュー作とした野本直美は、熱心なファンから、どのように思われていたのか、冒頭からグダグダと述べさせていただいた観点からして、大いに気になる存在です。
なにしろ彼女は生粋(?)のヤマハ系シンガーソングライターとして、大人の女性の気持ちを歌うという評価が高く、そのスタイルは演歌っぽさも時には滲ませるフォーク歌謡でしたから、ここにA面収録の自作曲「かなしみ通り」にしても、飛沢宏元のアンプラグドなアレンジを得て、姉御肌っぽい歌いっぷりを披露しているあたりは、全くジャケ写どおりのイメージだったんですねぇ~~♪
ところが、サイケおやじは大いに気に入っていたんですが、客観的には時代にアクセスしていない雰囲気が濃厚で、決してヒットしたとは言い難い状況だったんじゃ~ないでしょうか……。
実際、サイケおやじにしても、この「かなしみ通り」を最初に聴いたのは業界の知り合いからプレゼントされたカセットコピーであり、掲載の私有盤にしても、中古ゲットしたサンプル盤というのが実情ですから…… (^^;
何時しか彼女がロックぽい方向へプロデュースされていったのも、頷けるとはいえ、失礼ながら彼女のルックスは、あんまりロックしていない感じですし、それが女版の佐野元春みたいになっていた時期もあり、結果的にフェードアウト……。
あくまでも個人的な希望ではありますが、ど~せなら、ボニー・レイットみたいな、ブルースロックウーマンを演じて欲しかったと思っています。
ということで、しかし、それでも野本直美は素敵なレコードを残してくれた事に間違いはありません。
問題は、それを気に入るか、あるいは拒否反応を示すのか、等々という嗜好品としての扱いに近いところでしょうか?
一応、それなりにレコードは集めてありますので、何れご紹介させていただく事として、本日は失礼させていただきます <(_ _)>