■行け! タイガーマスク c/w みなし児のバラード / 新田洋 (キングレコード)
日本の映画やテレビドラマの劇伴を担当し、偉大な功績を残した菊池俊輔の訃報に接しました。
おそらくは日本で暮らしている我々にとって、故人の書いたメロディは必ずや耳にしているはずで、例えばテレビドラマやアニメ、そして特撮のジャンルだけでも「キイハンター」「タイガーマスク」「仮面ライダー」等々、夥しく心に染み込んでいる歌や演奏は忘れられるものではありません。
ですから、代表作を選ぶなんて事は愚行に等しく、しかし、それでも本日は昭和44(1969)年10月から約2年間、日本テレビ系列で放送されていた本格的プロレスアニメ「タイガーマスク」の主題歌とエンディングテーマをカップリングしたシングル盤を取り出しました。
ご存知のとおり、件のアニメは梶原一騎の原作を辻なおきが描いた漫画作品として、最初は昭和43(1968)年から講談社の月間漫画雑誌「ぼくら」に連載され、それは現実のプロレスラーが実名で登場するというリアルなスポ根物という面白さに加えて、如何にもプロレスらしい荒唐無稽な描写や物語展開がありながら、同時にタイガーマスクは孤児だったという生い立ちから、過去に世話になっていた施設の子供達との関わりも描かれた素晴らしいドキュメンタリー&フィクションでしたから、忽ち人気は沸騰!
ですから、前述のテレビアニメ版も高視聴率番組となり、ついには新日本プロレスに現実世界のタイガーマスクが登場し、爆発的なブームを巻き起こした事は皆様ご存知のとおりです。
で、そんなわけですから、件のテレビアニメ版の主題歌が多くの日本人に刷り込まれているのは言わずもがな、そのオープニングテーマが、このシングル盤に収録されているA面曲「行け! タイガーマスク」であり、今に至るも名フレーズ満載の作詞は木谷梨男、そしてスリル&サスペンスが真正面から飛び出して来る作編曲が菊池俊輔でありましたっ!
う~ん、本日久々に針を落とし、じっくり鑑賞しても、我知らず腰が浮くと申しましょうか、この主題歌には本当に血が騒いでしまいますねぇ~~ (^^♪
ちなみに歌っている新田洋は様々な芸名を使い分けて活躍している有名(?)シンガーで、一番に知られているのは森本英世として、昭和48(1973)年頃から、敏いとうとハッピー&ブルーのリードボーカルを務め、その独特の泣き節歌唱は大ヒット曲「星降る街角」等々で存分に聴けますが、その意味で決して忘れてはならないのがA面と同じ制作スタッフが提供したB面収録曲「みなし児のバラード」でしょう。
それは、とにかくミディアムスローで節回される捨鉢な歌の世界を至高のものとする仕上がりで、これぞっ!
日本のアニメから生れ出た傑作歌謡ソウルバラードであり、作編曲における菊池俊輔の抜群の手腕が堪能できると思いますねぇ~~ (^^♪
実は告白すると、学生時代にサイケおやじが入れてもらっていたバンドでウケ狙いではありますが、この「みなし児のバラード」をやろうっ!
という話が纏まり、その時に中古ゲットしたのが、この掲載盤であり、以来……、永久貸与になっているというわけでして (^^;
閑話休題。
ところで、劇伴の仕事では、それなりに使い回しが普通の様で、この「タイガーマスク」のアニメ本篇では「キイハンター」で使われていたメロディやリフが度々流れている事も要注意かもしれません。
もちろん、それがあってこそ、瞬時に「菊池俊輔の世界」が物語を染め上げ、正にドラマチックな展開と構成が伝わって来るのですから、流石と思うばかりです。
ということで、故人の業績については、とてもとても、サイケおやじの稚拙な筆では書き表せるはずもありません。
謹んで、衷心よりご冥福をお祈りいたします。