■嘆きのボイン / 月亭可朝 (テイチク)
世の中、景気が良ければ、何をやっても許される雰囲気が蔓延する事は、所謂昭和元禄を体験された皆様の共通認識でしょうか。
もちろん、そのひとりであるサイケおやじが、今も強く思い出すのが昭和45(1970)年に大ヒットした「嘆きのボイン」という、あまりにも痛切なコミックソング!?
まずは、とにかく掲載のジャケ写をご覧くださいませ!
リアルタイムをご存じない皆様にとっても、このインパクトは絶大だと推察しておりますが、ここでギターと裸の女を抱きすくめているのが、自作自演で快(怪)唱を披露した月亭可朝で、本業は関西の落語家でありながら、結果的に全国区で売れたのは「嘆きのボイン」に因むギター漫談でしょう。
しかも本人の如何にも胡散臭いキャラが、良い味出しまくりなんですねぇ~♪
また、自らが「歌笑曲」とアピールする「あざとさ」も天下一品でしょう。
ボインはぁ~ 赤ちゃんが吸う為にあるんやでぇ~~~
お父ちゃんのもんとちがうんのんやでぇ~~~
ボインと云うのはぁ~ どこの国の言葉ぁ~~
うれし恥ずかしぃ~ 昭和の日本語~~
なぁ~んていう最初の一節だけで、これが既に昭和元禄を象徴していますし、滲み出す絶妙のペーソスが、月亭可朝の何んと申しましょうか、ぶるうすえれいじぃ~な歌い回しで表現されているんですから、当時は子供達が率先して、これを歌っていたんですよっ!
ちなみに「ボイン」とは現代の「巨乳」を指す同義語であり、欲求不満が溜まっている女の胸が膨らむとか、最後のオチの「チチ帰る」には、笑わずにはいられませんねぇ~~♪
まあ、これが堂々の大ウケになったんですから、各方面からの顰蹙も前向きなエネルギーに変換される、そうしたナチュラルな自然エネルギーが世相の中に渦巻いていたんだと思います。
ということで、今だからこそ、特に未聴の皆様であれば、騙されたと思ってお楽しみ下さいませ。
心底、しょ~もないパフォーマンスと呆れるのも良し、噂だけの昭和元禄にあれこれ想像をたくましくするのも一興でしょう。
ということで、実は今年の忘年会のネタとして、サイケおやじはエレキバージョンで、これをやりたいと目論んでおります♪♪~♪ ウケなくとも、呆れられれば、それはそれで場を盛り上げる事になるような気がするんですよっ!
そして最後になりましたが、月亭可朝と言えばギャンブル中毒者という一般認識が強く、本業の落語よりは、関西の芸人という扱いかもしれませんが、友人の落語マニアの説によると、落語の実力も凄いそうで、一応は桂米朝の高弟らしいですよ。
う~ん、そういうものを封印(?)して、底抜けに破天荒な芸道を邁進する月亭可朝の潔さ! 実は当時の本人はギターコードを3~4個ぐらいしか知らずに弾いていたそうですし、ど~でも許されるようなテキトーなスタイルの弾き語り(?)が、確信犯的な面白さを増幅させていたんじゃ~ないでしょうか?
なにか、そういうものに憧れを抱いてしまうサイケおやじであります。