OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

バーニー・ケッセルのギターは唄う

2009-03-21 11:34:35 | Jazz

Easy Like / Barney Kessel (Contemporary)

バーニー・ケッセルはモダンジャズを代表する白人ギタリストのひとりですが、1960年代はスタジオの仕事がメインでしたし、ジャズの現場に本格復帰したのが1970年代でしたから、やはり全盛期は1950年代に吹き込まれた諸作でしょう。

まあ、「全盛期」をどうとらえるかは十人十色でしょうが、1951年にはオスカー・ビーターソンのトリオにレギュラーとして抜擢されながら、巡業嫌いで潔く辞め、西海岸に定着してからは多くの名演を残し、人気投票でもトップにあった実績は侮れません。それがあったからこそ、スタジオの仕事も途切れることなく続き、1960年代にはハリウッド芸能界で縁の下の力持ちとなったのでしょう。

さて、このアルバムはバーニー・ケッセルにとって、そうした時期の最初の成果を楽しめる名盤で、まずは10インチLPとして1954年頃に発売されたものですが、1956年になって12インチ盤へと拡大再発するにあたり、新録音を加えた経緯があります。

ですから1953年と1956年のセッションが混在しているのですが、流石は音の良いコンテンポラリーだけあって、違和感はほとんど感じられないでしょう。もちろん演奏そのものの味わいが同じというのは進歩が無いというよりも、不滅の完成度として結果オーライということだと思います。

メンバーは1953年のセッションがバーニー・ケッセル(g) 以下、バド・シャンク(as,fl)、アーノルド・ロス(p)、ハリー・ババシン(b)、シェリー・マン(ds) という如何にもの面々♪♪~♪ また追加された1956年のセッションにはバディ・コレット(as,fl)、クロード・ウィリアムソン(p)、レッド・ミッチェル(b) が交代参加しています。

A-1 Easy Like (1956年2月23日録音)
 バーニー・ケッセルのオリジナルで、なかなかリラックスしたモダンジャズのビートが心地よい演奏です。グルーヴィな雰囲気の中にも軽いフィーリングが西海岸派の面目躍如でしょう。
 バディ・コレットは黒人ですが、このフルートの軽妙な味わいは捨て難く、ほどよいファンキー節というクロード・ウィリアムソンも素晴らしいと思います。そしてバーニー・ケッセルのギターが、極力ごまかしを避けようと奮闘するのです。テーマ部分も含めて途中、何箇所かで聞かれる疑似オクターブ奏法みたいな弾き方は、ちょっと真似出来ない名人芸だと思います。

A-2 Tenderly (1953年11月14日録音)
 多くのギタリストが名演を残しているスタンダード曲ですから、バーニー・ケッセルも油断は禁物ながら、シブイ解釈のテーマ演奏はギターの独演会からリズム隊を呼び込んでのメロディフェイクまで、素晴らしい味わいが楽しめます。倍音やチョーキングの使い方もニクイばかりですねぇ~♪ もちろんコード弾きの魔法も流石!

A-3 Lullaby Of Birdland (1953年12月18日録音)
 ジョージ・シアリングが書いた魅惑のメロディがスマートに、そして力強く演じられていますが、ここで聞かれるような、ちょっと浮ついたようなスピード感が曲想にジャストミート! 私は大いに気にいっています。
 と言っても、シェリー・マンとハリー・ババシンが作りだす真正のジャズビートはグイノリの悪魔性が顕在ですから、クロード・ウィリアムソンのピアノからバド・シャンクのフルートへと続く美しき流れ、また淀みないフレーズを積み重ねていくバーニー・ケッセルのアドリブパートは、快感以外の何物でもありません。
 キメまくりのアンサンブルとアドリブの両立が、本当に見事だと思います。

A-4 What Is There To Say ? (1953年12月18日録音)
 これまた私の大好きなスタンダード曲で、ビル・エバンスやレッド・ガーランドが演じたピアノバージョンがあまりにも有名ですが、ギターならば、これっ! でしょうかねぇ~♪
 実際、ここでのバーニー・ケッセルは余計な色気は見せず、とことん素直に素敵なメロディをフェイクしていきます。う~ん、ほとんど出来すぎのアドリブですよ♪♪~♪

A-5 Bernardo (1953年11月14日録音)
 ラテンリズムを上手く使ったバーニー・ケッセルのオリジナルは、バド・シャンクのフルートも楽しい快演です。この軽さ、この浮かれた調子は、まさに西海岸でしょうねぇ~♪
 アドリブパートに入ってからの弾んだ4ビートも実に快適ですし、十八番のリックを出し惜しみしないメンバーのサービス精神の中で、ギターのボディをチャカポコ叩くバーニー・ケッセルが感度良好ですよ。

A-6 Vicky's Dream (1953年11月14日録音)
 一転してクールスタイルのモダンジャズ曲で、猛烈なスピートでクネクネと紆余曲折のテーマアンサンブルが、一糸乱れぬ素晴らしさです。シェリー・マンのシャープなドラミングも絶品♪♪~♪
 そしてバーニー・ケッセルのギターが思いっきりツッコミ鋭いアドリブに徹すれば、バド・シャンクのアルトサックスも青白く燃える炎です。アーノルド・ロスのピアノも精一杯、ビバップしていて好感が持てますよ。

B-1 Salute To Charle Christian (1953年12月18日録音)
 これがアルバムの目玉演奏!
 バーニー・ケッセル自身が大きな影響を受け、尊敬しているというエレキの天才ギタリストだったチャーリー・クリスチャンに捧げたオリジナル曲ですが、テーマメロディはディジー・ガレスピーの「Birk's Works」を焼き直したものですし、アドリブパートで連発されるフレーズは、明らかにチャーリー・クリスチャンの十八番を繋ぎ合わせた稚気がたまりません。
 聞くほどに、思わずニヤリの名演ですよ♪♪~♪

B-2 That's All (1956年2月23日録音)
 これも私が好きでたまらないスタンダード曲ですが、それにしても、このアルバムのプログラムは憎さあまって可愛さ百倍という、逆もまた真なりですね♪♪~♪
 ここではバディ・コレットのフルートを上手く活かし、バニー・ケッセルの素晴らしいコードワークも冴えわたりの傑作トラックに仕上がっています。こういう素直さって、本当は一番難しいのでしょうねぇ、サイケおやじにしても、自惚れからコピーして挫折した前科を深く反省している次第です。 

B-3 I Let A Song Go Out Of My Heart (1953年12月18日録音)
 デューク・エリントンの楽しい有名曲を、ここでは室内楽風味も入れながら、粋に演奏するバンドが流石の名人揃いを証明しています。
 とにかくアンサンブルとアドリブの対比が出来すぎというか、殊更にジャズっぽさを強調するピアノとアルトサックスの思いきりの良さが秀逸ですし、バーニー・ケッセルにしてもリラックスしながら、難しいことをサラリとやってのけるのです。
 なんてことない演奏に聞こえながら、奥はどこまでも深いと思います。

B-4 Just Squeeze Me (1953年11月14日録音)
 これもデューク・エリントン楽団の定番ヒット曲で、オリジナルメロディが持つグルーヴィなムードを白人的に解釈しながら、実はハードバップの味わいも滲む隠れ名演だと思います。
 特にテーマのアンサンブル最終部分の怖い盛り上がりから、バーニー・ケッセルのアドリブに入っていく瞬間のスリルは絶大! 演奏が進むにつれて馬力を発揮していくリズムの存在感も凄いと思います。
 相当にエキセントリック!?

B-5 April In Paris (1956年2月23日録音)
 こちらはカウント・ベイシー楽団でお馴染みという和みのメロディが、ほとんど一人舞台というバーニー・ケッセルのギターで演じられます。あぁ、このハーモニーとコード選びの魔法は流石です。
 そしてリズム隊が入ってからのパートでは、グイノリのグルーヴィなビートを活かしたアドリブが、これまた絶品ですよっ♪

B-6 North Of The Border (1956年2月23日録音)
 そしてオーラスは、またまたラテンビートとビバップの美しき結婚ともいうべき、楽しいオリジナルですが、このあたりのムードこそが、如何にもウエストコーストジャズの真髄かもしれません。
 シェリー・マンとレッド・ミッチェルは唯一無二のコンビネーションで、実に爽快! バーニー・ケッセルのギターはアンサンブルでの大活躍がアドリブパート以上の素晴らしさだと思いますし、とかにくメンバー全員の意思統一が見事!

ということで、短めの演奏ばかりですが、密度の濃さは天下逸品でしょう。

おそらくはEPやSPとしてジュークボックスでも使われたと推察しておりますが、実際、ここで聞かれる演奏が当時のホールやクラブ、ラウンジで流れてきたら、気分は完全にアメリカングラフティの前夜祭♪♪~♪ 白人が大いに威張りちらしながら、文化をリードしていた強いアメリカって、こういうものだったのかもしれません。

しかし基本のジャズは明らかに黒人色を否定しておらず、それはここでも顕著ですし、バーニー・ケッセル以下のメンバーが、それを強く意識していればこその名演集だと思います。


絶対納得! ディジー・リースの発掘秘宝

2009-03-20 11:45:00 | Jazz

Comin' On / Dizzy Reece (Blue Note = CD)

1999年に世に出た未発表演奏集ですが、数多い名演オクラ入りが発掘されたブルーノートの中でも、個人的には最も感涙した中のひとつです。とにかく内容が吃驚するほどに素晴らしいんですよっ! とてもオクラ入りしていたとは思えません。

それは1960年に行われた2つのセッションが収められています。

☆1960年4月3日録音
 メンバーはディジー・リース(tp,per)、スタンリー・タレンタイン(ts)、ボビー・ティモンズ(p)、ジミー・メリット(b)、アート・ブレイキー(ds) という疑似メッセンジャーズ!
 ちなみにディジー・リースは、ジャマイカから英国経由でアメリカに進出してきた名手で、ブルーノートには3枚のリーダーアルバムと脇役で活躍した幾つかのセッションを残していますが、結論から言えば、この日も絶好調! あの名盤「Star Bright (Blue Note)」に勝るとも劣らない快演を聞かせてくれます。

01 Ye Olde Blues
 いきなり快適なテンポでブルースを吹きまくるスタンリー・タレンタインというスタートから、カッコ良すぎる繋ぎのリフ、痛烈にドライヴして止まらないリズム隊が一丸となった、実にノリノリのハードバップです。
 もちろんディジー・リースは引き締まったスタイルで溌剌としたトランペットを完全披露!
 あぁ、これがブルーノート王道のサウンドでしょうねぇ~~♪ 最高に痛快ですよ。
 それは強烈な存在感を示すリズム隊だけのパートに受け継がれ、剛直大胆なジミー・メリットのベースワークに大技小技のアート・ブレイキー、さらに小気味よくスイングするボビー・ティモンズが、もはや天国行きの直行便! あぁ、何度聴いても興奮します。
 演奏はクライマックスでアート・ブレイキーを要にしたソロチェンジがあり、フロンドの2人も意地を聞かせてくれますが、演奏全体の熱血は唯一無二です。

02 The Case Of The Frightened Lover
 これもディジー・リースのオリジナルという、実に痛快なハードバップです。まずはテーマ合奏からして雰囲気最高! そのまんま、流れるようにアドリブに入っていく作者のトランペットも好調だと思いますし、リズム隊も怖いほどにサポートが冴えています。
 まあ、正直言えば部分的には、ちょっと中だるみも感じられるのですが、それを救うのがスタンリー・タレンタインが直球勝負という大ブロー! そのストレートな感性と骨太な音色は素晴らしい魅力に満ちています。
 ラストテーマのアンサンブルも実に素敵ですよっ♪♪~♪

03 Tenderly
 これは有名スタンダード曲のハードバップ的解釈というか、スローテンポでテーマを吹奏するディジー・リースは、明らかにクリフォード・ブラウンを意識せずにはいられないところでしょう。録音では息継ぎの緊迫感も良い感じです。
 そしてリズム隊を呼び込んでからのアドリブパートでは、自然にグイノリの4ビートが心地良いグルーヴを生み出しますから、ディジー・リースも余裕でモダンスイングっぽいフレーズを積み重ね、絶妙の和みを提供してくれます。
 また続くスタンリー・タレンタインはタフテナー王道の響きが、これまた気持ち良いほどです。この、たっぷりした歌心は本当に素敵ですねぇ~♪ 重量感溢れるリズム隊の存在があるにしろ、けっこうアドリブが止まらなくなった感じでしょうか、これは名演だと思います。
 そしてボビー・ティモンズが、これまた素晴らしく、抑えたゴスペルフィーリングとファンキーな節回し、硬質なスイング感が融合した名人芸です。それを支えるジミー・メリットの太いペース、強いバックピートを叩き出すアート・プレイキーも大好きです。

04 Achmet
 アート・ブレイキーが十八番のアフリカンビート、それに共謀するディジー・リースのコンガが強烈な味わいを作り出すイントロの長いパートから、これまた痛快なテーマのユニゾンが飛びだすあたりは、完全にジャズメッセンジャーズと化しています。
 そしてスタンリー・タレンタインの爽快なアドリブの素晴らしさ! それはスピード溢れるリズム隊の強烈さでもありますが、続くディジー・リースが危うくバランスを失うところまでもが、結果オーライに繋がるのです。
 またボビー・ティモンズが、メッセンジャーズでは散々やりまくった十八番のリックを完全披露! もちろんそれは、このリズム隊なればこそ許されるものでしょうねぇ~♪ 当然ながら、クライマックスはアート・ブレイキーの爆裂ドラムソロ! これしか無いでしょう。

05 The Story Of Love
 これまたラテンビートにエキゾチックなメロディがジャストミートした、キャバレーモードのハードバップ♪♪~♪ テーマアンサンブルの雰囲気の良さ、特に枯れたディジー・リースとムード満点のスタンリー・タレンタインが絶妙のコンビネーションですよ♪♪~♪
 そしてディジー・リースのアドリブが、これまた非常に味わい深く、シブイ歌心とせつないフレーズの妙が冴えまくり♪♪~♪ 本当に落涙寸前に追いこまれますよ。
 するとスタンリー・タレンタインがダークな音色でソフトな情感を歌いあげるという、これまたハードボイルドな男気を披露するのですから、あぁ、これがジャズを聴く喜びです!
 ちなみにリズム隊では意想外の小技を披露するアート・ブレイキーが流石ですし、地道な4ビートウォーキングが心地良いジミー・メリット、そして思わせぶりなスイング感が憎めないボビー・ティモンズという名演が、スバリとモダンジャズ黄金期を証明したと思います。

以上の5曲はジャズメッセンジャーズの作品と言って、全く不思議の無い仕上がりですし、実に充実したセッションだと思います。これがリアルタイムでアルバム化されていたら、間違いなく人気盤になったんでしょうが……。

☆1960年7月17日録音
 メンバーはディジー・リース(tp)、スタンリー・タレンタイン(ts)、Musa Kaleem(ts.fl)、デューク・ジョーダン(p)、サム・ジョーンズ(b)、アル・ヘアウッド(ds) という、こちらも非常に魅力的な面々ですが、中でも Musa Kaleem はアート・ブレイキーが駆け出し時代のリーダー盤としてブルーノートへ吹き込んだ1947年12月のセッションに参加していた隠れ名手です。

06 Sands
 ディジー・リースのオリジナルで、なんとも独特のファンキーな節が素敵な裏名曲だと思います。デューク・ジョーダンの参加ゆえでしょうか、強いビートの中にも心地良い浮遊感が漂う、真正ジャズのリズムが良いですねぇ~♪
 そしてアドリブパートは力感溢れるスタンリー・タレンタイン、ちょいとブッカー・リトルしているディジー・リース、正統派に真っ黒な Musa Kaleem と好演が続き、ついに登場するデューク・ジョーダンがイブシ銀のロンリー節ですよっ♪
 全体的には不思議系のハードバップというところでしょうか……。

07 Comin'
 サム・ジョーンズがギスギスしたペースソロでリードする、実にファンキーなハードバップのブルース大会♪♪~♪ ほとんどテーマのアンサンブルだけでシビレますが、そこへ被ってくるのが Musa Kaleem のブリブリテナーサックスですから、たまりません。
 ミディアムテンポでヘヴィなジャズピートも素晴らしく、続くスタンリー・タレンタインが負けじと任侠精神丸出しの音色を聞かせてくれるとなれば、デューク・ジョーダンが内気な片思いのブルースも、ジンワリと忍び寄ってきますよ。
 そしてディジー・リースの内に秘めた炎が青白く燃えるトランペット♪♪~♪ 決して派手なところはありませんが、そのじっくり構えて味わい深い音色とフレーズの素晴らしさは、アルバムタイトル曲に認定されるのもムベなるかなでしょうね。

08 Coose Dance
 今度はアル・ヘアウッドがブラシで素晴らしいジャズビートを叩き出すという、抜群のイントロからしぶといテーマのアンサンブル、続いてアップテンポの快演となるハードバップです。Musa Kaleem のフルートも良い感じ♪♪~♪
 そしてディジー・リースの正統派トランペット、Musa Kaleem の元祖ベニー・ゴルソンっぽいテナーサックス、スタンリー・タレンタンイの熱血ブロー、さらに十八番の美メロを出しまくるデューク・ジョーダンの泣き節アドリブ♪♪~♪
 これも地味ながら、何度でも聴きたくなる名演じゃないでしょうか。

09 The Things We Did Last Summer
 そしてオーラスは、私の大好きなスタンダード曲♪♪~♪
 せつなくもキラキラしたデューク・ジョーダンのイントロに導かれ、ディジー・リースが、あの夏の思い出という胸キュンメロディを吹いてくれますよ。あぁ、本当に泣けますねぇ~~、このジンワリとした雰囲気とメロディフェイクの上手さは絶品です!
 そしてデューク・ジョーダンが、これまた気分はロンリーの決定的な名演を披露♪♪~♪ まさに私の大好きなフルコースが、せつなく展開されるのでした。

ということで、以上の4曲も素晴らしすぎる名演ばかりですが、惜しむらくはアナログ盤LPの1枚分には時間的に不足しています。おそらくはそのあたりが、未発表の要因だったのでしょうか……。

しかし、それにしても、この2つのセッションはハードバップ愛好者を狂喜乱舞させるでしょう。と言うよりも、全てのモダンジャズファンは聴いて納得の隠れ名演集だと思います。

ブルーノート、恐るべし!

まだまだ倉庫には、お宝が眠っているんじゃないでしょうか? じっくり発掘作業とか、してみたいですねぇ。


素敵なジャズテット、CDで帰る

2009-03-19 14:27:31 | Jazz

Big City Sounds / The Jazztet (Argo)


皆様はレコードを割ってしまったことが御有りですか?

なんてお尋ねするまでもなく、レコードは必ず割れてしまうものですよね。私にとっては、そういう悔恨の1枚が本日ご紹介のアルバムです。

内容はアート・ファーマーとベニー・ゴルソンが運営していたジャズテットの人気盤ですから、私も愛聴することが度々ながら、そんなある日、うっかりと手を離れて空中に浮遊したアナログ盤が垂直落下! 見事にフチが欠けてしまいました……。

う~ん、こうも見事に割れるもんですかねぇ……。と、思わず呆れるほどですよ。

しかし捨てる神あればなんとやらで、丁度その頃、我が国では紙ジャケ仕様の復刻CDが出たので、速攻入手という顛末があります。

実は結果論ではありますが、このアルバムの録音はアーゴ特有のゴリゴリした雰囲気よりは、鋭さとソフトなフィーリングが上手く融合した微妙な感じでしたから、例えばベースの音が極端に細いという、なんだか納得し難いものでした。

それがCDでは、どのようにリマスターされているのか、興味深々! いや、これは決して負け惜しみではなく、アナログ盤に事故が無くとも、個人的には偏愛盤ですから、いずれはCDをゲットしていたはずなのです。そして……

録音は1960年9月16&19~20日、メンバーはアート・ファーマー(tp)、トム・マッキントッシュ(tb)、ベニー・ゴルソン(ts)、シダー・ウォルトン(p)、トミー・ウィリアムス(b)、アルバート・ヒース(ds) という名手揃い♪♪~♪ ちなみにジャズテット名義としては4作目になると思います。

A-1 The Cool One
 タイトルどおりにクールなフィーリングがそのまんまというベニー・ゴルソンのオリジナル曲で、その真相はジャズテット結成時のヒット曲「killer Joe」の焼き直しでもあり、またジャズメッセンジャーズで名演を残した「Along Came Betty」の味わいも深い魅力です。
 ニヒルなムードがカッコ良いテーマアンサンブルは、ビシッとしたリズムアレンジとアート・ファーマーのミュート、さらに如何にもベニー・ゴルソンというハーモニーに加え、作者のモゴモゴしたテナーサックのアドリブが新感覚のファンキーど真ん中♪♪~♪
 続くアート・ファーマーとシダー・ウォルトンのアドリブも、短いスペースの中にきっちりとツボを押さえているようです。
 で、気になるCDリマスターの状態は、ステレオミックスで各楽器の分離も良好ですし、低音域が上手く補正されていますので、アナログ盤では本来の生音が小さいのでしょうか、細身だったトミー・ウィリアムスのペースも全面に出ていると感じます。
 演奏そのものは3分ほどですから、フェードアウトで終わってしまうのが残念ですが、それなりに密度の濃い仕上がりになっていますよ。

A-2 Blues On Down
 グルーヴィなムードが横溢したベニー・ゴルソンのオリジナルというファンキー曲ですから、じっくりと4ビートを醸し出していくリズム隊とフロント陣のアドリブが、ハードバップの王道路線!
 ソフト&クールなアート・ファーマー、ブリブリにサブトーンを鳴らすベニー・ゴルソン、冷静さを装うトム・マッキントッシュと続くアドリブの流れは、当たり前の素晴らしさに満ちています。
 しかしトミー・ウィリアムスのベースソロからは、静かな熱気が広がって行くんですねぇ~♪ そしていよいよ登場するシダー・ウォルトンが小気味良いスイング感と絶妙のゴスペルムードで絶品のアドリブ! そこに絡んでくるホーンのリフも、ハッとするほど良い感じですよ。
 さらにラストテーマのアンサンブルに至っては、シビレが止まらないです。これがハード、というよりもソフトパップの真髄かもしれません。

A-3 Hi-Fly
 そのシダー・ウォルトンが会心の名演を披露するのが、このランディ・ウェストンのオリジナル有名曲です。
 独特の哀愁が滲むテーマメロディとマーチビートを活かした力強いアンサンブルも秀逸ですが、完全に主役を任されたシダー・ウォルトンが、キャリア初期を代表する決定的な快演アドリブを聞かせてくれますよ♪♪~♪
 サポートするベースとドラムスのコンビネーションも溌剌として力強く、特にトミー・ウィリアムスは小技が得意なタイプだと思いますから、シダー・ウォルトンの相棒としては最適でしょうねぇ。ここでも地味ながら素晴らしいペースを響かせています。
 ちなみに「響かせて」と書いたのは、紙ジャケット仕様で復刻されたCDに限ってのことで、アナログ盤では残念ながら、そこまではいきません……。ただし全体の纏まりと雰囲気の良さは、アナログ盤ならではの「音」がありますから、決して侮れないのです。

A-4 My Funny Valentine
 ジャズでは定番の有名スタンダード曲を、ここではアート・ファーマーが最高の歌心で、決定的なバージョンに仕上げています。もちろん同じトランペッターとしてはマイルス・デイビスの歴史的な名演もありますから、安易な云々はお叱りを頂戴するわけですが、個人的にはこの演奏が好きでたまらないのです。
 シンミリとほどよいアンサンブルに彩られたアート・ファーマーのメロディフェイクの上手さは筆舌に尽くし難く、さらに全てが「歌」というアドリブの輝きは永遠に不滅だと信じます。
 あぁ、このハートウォームで素直な表現♪♪~♪ 何度聴いても感動しますねぇ~♪ 本当にたまらんですよ♪♪~♪

B-1 Wonder Why
 素敵な泣きのメロディが所謂シブイというスタンダードの隠れ名曲ですが、一聴して、これほどジャズテットに最適の旋律もないでしょう。とにかく穏やかなムードでテーマをリードしていくアート・ファーマーの名人芸と寄り添うベニー・ゴルソンの雰囲気の良さ♪♪~♪ これぞっ、ゴルソンハーモニーの秘密とジャズテットの魅力を認識させられます。
 ミディアムテンポで力強いビートを打ち出してくるリズム隊も素晴らしいサポートですから、ベニー・ゴルソンからアート・ファーマーと続くアドリブパートも、「歌」と「ジャズ魂」の完全融合! 特にアート・ファーマーは、どうしたらこんなフレーズが即興で吹けるのか!? 答えの出ない疑問にシビレるのがサイケおやじです。
 また小粋なタッチも嬉しいシダー・ウォルトン、繊細なペースワークのトミー・ウィリアムスも良いですねぇ~♪
 そしてさらにシビレるのが、ラストテーマへの橋渡しをするソフトファンキーなホーンのリフ、それをビシッと後押しするリズム隊の潔さ! あぁ、最高としか言えませんよっ♪♪~♪

B-2 Con Alma
 ディジー・ガレスピー(tp) やレイ・ブライアント(p) の定番演目というラテン系ビート&メロディがニクイ、これもまた人気曲♪♪~♪ そこへ如何にものアレンジを施し、ジャズテットならではの演奏に仕立てたあたりは、些かの欺瞞も感じられるのですが……。
 しかし、それにしてもゴルソンハーモニーの魅力は絶大ですねぇ。アドリブパートとバンドアンサンブルが同等の比重で表出した快演だと思います。

B-3 Lament
 ジャズ史に残る名人トロンボーン奏者だった J.J.ジョンソンの代表作ですから、同じ楽器プレイヤーであるトム・マッキントッシュに全てを委ねるには、あまりにも意地悪な趣向なんですが……。
 そこはちょっと面白いアレンジで、じっくりとした演奏を聞かせるジャズテットの面目躍如♪♪~♪ シンミリと胸に染み入るメロディを真摯に吹奏するトム・マッキントッシュも、重責を全うするべく、非常に丁寧なトロンボーンを聞かせてくれます。
 まあ、このあたりは物足りないのも確かなんですが、この生真面目なムードはやっぱりモダンジャズ全盛期の証かもしれませんねぇ。個人的には感度良好です。

B-4 Bean Bag
 一転してアップテンポでブッ飛ばしたハードバップど真ん中の演奏で、ちょいとホレス・シルバー調なのが面白いところかもしれません。
 しかし演奏そのものはアドリブ主体の熱いもので、ファーマー&ゴルソンの名コンビが激しく対峙すれば、続くシダー・ウォルトンも負けじと大ハッスル! その全力疾走のアドリブに被ってくるゴルソンハーモニーのジャズ的な興奮度も素晴らしく、さらにアルバート・ヒースのドラムソロがハードバップを極めんと奮闘するのでした。

B-5 Five Spot After Dark
 アルバムの締め括りは、もはや説明不要というベニー・ゴルソンの超有名オリジナル曲ですが、ここではカーティス・フラー(tb) を主役に据えたヒットバージョンよりも、遥かにテンポアップしているのが賛否両論でしょうか。
 あの魅力的なテーマメロディが威勢良く演奏されるのは、確かに違和感を否定出来ません。
 しかしアート・ファーマーのアドリブは見事の一言に尽きますし、ベニー・ゴルソンの踏ん張りも流石だと思います。
 またリズム隊の厳しく、タイトなビート感も素晴らしいですねぇ。
 まあ、このあたりは十人十色の好き嫌いでしょうが、個人的には……。

ということで、実にスッキリとしたモダンジャズが楽しめます。そうしたスマートでソフトな感覚というのが、ジャズテットの魅力だと思うんですよ。しかし決して黒人的なビートは蔑ろにしていないはずで、それはリズム隊の充実でも明らかです。

ジャズは曲か?、それともアドリブか? なんて論争は昔っから続いていますが、ジャズテットこそは、その論争にケリをつけるバンドだったのかもしれません。全体をコンパクトに纏めた演奏密度の濃さと曲そのもののメロディの良さ、それを活かしたアレンジの妙という、なかなか出来そうで出来ない実績があったと思われます。

まあ、そういう分かり易さがジャズは悩んで聴くという風潮の我が国ジャズ喫茶には馴染まず、また硬派なジャズ者からも軽視されがちだったバンドですが、今ではモダンジャズ愛好者には必要十分条件でしょう。

このアルバムあたりからジャズテットの魅力に惹きこまれるのも、良いですね。アメリカプレスのアナログ盤も、そんなに入手は難しくないはずですが、紙ジャケット仕様のCDも相当にイケると思います。


ダイアルのパーカーは不滅の宝物

2009-03-18 12:41:37 | Jazz

Charlie Parker Vol.2 (Dial)

何時かは欲しいと思っていたチャーリー・パーカーのダイアル盤10インチ、それをついに入手しました。

まあ、これも最近の世界恐慌のおかげですから、手放したコレクター氏の気持ちを思えば身につまされるとはいえ、申し訳なくも気分が良いのも、また正直なところです。

あぁ、サイケおやじって、嫌な奴だなぁ……。

と自己嫌悪しつつも、盤に針を落として聴くオリジナルの良さは格別です。まあ、本当は純粋オリジナルのSPが一番なんですけどねぇ、このLPには一応、オリジナルテイクなるものが集められています。

ちなみに、ここで「一応」とお断りしたのは、ダイアルレーベルのオーナーだったロス・ラッセルは、チャーリー・パーカーの天才性を認め過ぎたがゆえに、SP時代から同じカタログ番号のブツを再プレスした時に、ワザと別テイクを使用したという趣味人間でしたから……。

まあ、それはそれとして、このアルバムには片面ずつ異なるセッションがプログラムされ、しかも全盛期のチャーリー・パーカーが見事な音質で楽しめるという、世界遺産といって過言ではない演奏ばかりです。

A-1 Relaxing at Camarillo
A-2 Cheers
A-3 Carving the Bird
A-4 Stupendous
 まずA面はチャーリー・パーカー・オールスタアズの名義で、メンバーはハワード・マギー(tp)、チャーリー・パーカー(as)、ワーデル・グレイ(ts)、ドド・マーマローサ(p)、バーニー・ケッセル(g)、レッド・カレンダー(b)、ドン・ラモンド(ds) という、当時のLAでは最先端の7人が揃っています。
 ちなみに録音は1947年月26日で、チャーリー・パーカーがハリウッドで行った最後のダイアルセッションですが、実はこのバンドはリアルタイムで実際に活動していたらしく、オーナーのロス・ラッセルが一番作りたかったのが、このセッティングだったと言われています。
 肝心の演目はリラックスしてノビノビとしたブルースの「Relaxing at Camarillo」が、一番有名でしょう。ドド・マーマローサが作りだしたイントロは、後にトミー・フラナガンが同曲を演じる時には必ず、そのまんま使い回すという歴史的なスタンダードフレーズになっているほどですよね。もちろんチャーリー・パーカーは言わずもがな、他のメンバーも素晴らしい好演を連発しています。
 また同じブルースでも「Carving the Bird」は相当に鋭く、エキセントリックな雰囲気が横溢しています。特にバーニー・ケッセルがイントロで弾いてしまう過激なコードは強烈! それに触発されたかのように親分が炸裂させるパーカーフレーズも怖いほどですが、対照的にレスター・ヤングのビバップ的展開というワーデル・グレイが私は大好き♪♪~♪ もちろん他のメンバーの出来も素晴らしく、わずか2分40秒の演奏は物凄い高密度だと思います。あぁ、バーニー・ケッセルのアンプの歪みを活かしたギター!!!
 そのあたりは「Cheers」での均整のとれた纏まりや、「Stupendous」の気持ち良すぎるモダンジャズ風味の強さでも証明されていて、如何にも西海岸という明るい雰囲気が、そこはかとなくセッション全体に波及したかのようです。

B-1 Cool Blues
B-2 Dark Shadows
B-3 Hot Blues
B-4 This is Always

B-5 Bird's Nest
 B面は、あの忌まわしい「ラバーマン騒動」から療養所生活を経て社会復帰した後のセッションということで、心身ともにリフレッシュしたチャーリー・パーカーの姿が記録された歴史の一幕です。
 しかしそれを素直に録りたかったロス・ラッセルの思惑とは逆に、チャーリー・パーカーが申し出たのは、黒人歌手の歌物セッションでした。
 そのメンバーはアール・コールマン(vo)、チャーリー・パーカー(as)、エロル・ガーナー(p)、レッド・カレンダー(b)、ハロルド・ウェスト(ds)という、なかなか面白い組み合わせですが、どうやらアール・コールマンとチャーリー・パーカーは友達だったそうですね。それがどんな関係かは、知る由もありませんが……。
 そこでロス・ラッセルは条件を出し、リズム隊には当時メキメキと人気を集めていたエロル・ガーナーの起用、そして次回のレコーディングには最先端のモダンジャズを録ることを納得させたうえでのセッションだったと言われています。録音が1947年2月19日ですから、ここで条件提示されたのがA面に収録の演奏だと分かりますね。
 そして肝心のレコーディングは、まずアール・コールマンのボーカルで「Dark Shadows」と「This is Always」が録られますが、このアール・コールマンという歌手は、ちょうどビリー・エクスタインの二番煎じっぽい人ながら、独特の哀しい歌い方が個人的には好きです。気分はロンリーな「Dark Shadows」は、もっと聴かれてしかるべきかもしれません。チャーリー・パーカーがキメるイントロや寄り添いのフレーズも、実に味わい深いと思います。
 で、とりあえず2曲を仕上げたところで、ロス・ラッセルはバンドだけのレコーディングを強行し、ここに凄い名演が残されます。それが溌剌として熱いブルースの「Cool Blues」、その別テイクを別曲名にした「Hot Blues」、さらにアグレッシブな「Bird's Nest」という3曲です。
 いゃ~、何度聴いてもチャーリー・パーカーは凄いです! 興奮します!
 またエロル・ガーナーの起用は、今となってはミスマッチと思われるかもしれませんが、これが実にジャストミートなんですねぇ~♪ あの特徴的な後ノリが、チャーリー・パーカーの尖鋭的なスタイルと見事に融合し、残された各曲が最高の化学変化をしてしまったような感さえあります。
 ブルースは殊の他にブルースっぽく、ビバップはさらに過激にブッ飛ばしたこの時期のチャーリー・パーカーは、やはり聴かずに死ぬるかだと思います。

ということで、何れの演奏も今ではCDで簡単に楽しめるわけですが、それでも欲しいダイアル原盤!

もう、これ以上書くと、胸が苦しくなりそうですから、今日はここまでと致します。


ハービー・ハンコックの気持ち良い系

2009-03-17 08:48:01 | Jazz

Speak Like A Child / Herbie Hancock (Blue Note)


昨日はハービー・ハンコックに対して、些か失礼なことを書いてしまいましたが、やっぱりこの人も、基本は気持ち良い系のピアニストじゃないでしょうか。

そのあたりが最も顕著に楽しめのが、本日ご紹介の人気盤でしょう。

録音は1968年3月5&6日、メンバーはハービー・ハンコック(p,arr)、ロン・カーター(b)、ミッキー・ローカー(ds) というピアノトリオをメインに、サド・ジョーンズ(flh)、ピーター・フィリップス(b-tb)、ジェリー・ドジオン(fl) というホーンセクションが彩を添えています。

A-1 Riot
 ハービー・ハンコックのオリジナル曲というよりも、マイルス・デイビスが前年に制作した名盤「Nefertiti (Columbia)」の初演バージョンが歴史的でしょう。しかし、この自作自演バージョンも、それに劣らぬというか、別の魅力に溢れた決定的な名演だと思います。
 それは緊張感漂うトリオのアンサンブルはそのままに、クールに突っ込んだマイルス・デイビスのバージョンよりは、柔らかなホーンのハーモニーが彩るテーマ部分の気持ち良さ♪♪~♪ そして続くハービー・ハンコックの流麗なモード節のジャズ的な快感に他なりません。ミッキー・ローカーのハードで軽いドラミングも良い感じです。
 う~ん、それにしてもイキそうでイカないハービー・ハンコックのアドリブは、いつまでも続くエクスタシー寸前の快楽がありますねぇ~♪ 業を煮やしたように入ってくるホーンセクションのハーモニーも、ギル・エバンスの風味を大衆的にしたような分かり易さが結果オーライだと思います。

A-2 Speak Like A Child
 そしてこれが、ソフトなボサロックの名曲名演♪♪~♪
 クールなハービー・ハンコックのピアノに忍び寄ってくる柔らかなホーンのハーモニーという、このアルバム全体の目論見を象徴する仕上がりだと思います。
 実際、この気持良さはお洒落なメロウフィーリング、あるいは黒人ソウル的な甘さ、さらにモダンジャズだけの粋な風情が最高に楽しめますよ。
 リムショット主体に余計な手出しをしないミッキー・ローカーのドラムス、絶妙の十八番もさり気ないロン・カーターのペースワークも素晴らしいと思います。
 またホーンアレンジは、またまたギル・エバンス流儀の膨らみがニクイところですが、なんかフワフワした女性ボーカルのスキャットが聞こえてきそうな雰囲気さえも感じます。

A-3 First Trip
 一転して軽快な4ビートによる楽しいピアノトリオの典型的な演奏です。その全体の流れをリードするロン・カーターのウォーキングベースも流石ですねぇ~♪ これも作者の強みというところでしょうか。
 ハービー・ハンコックのピアノも、マイルス親分との共演よりは遥かにリラックスしたムードが強く、思えば当時のハービー・ハンコックは長い間、正統派ピアノトリオのアルバムは作っていませんでしたから、このアルバムとこの演奏は、その飢えと渇きを癒してくれましたですね。

B-1 Toys
 これもギル・エバンスの影響下にあるホーンのハーモニーを活かした、新主流派ど真ん中のモード曲です。フワフワしたテーマアンサンブルから力強い4ビートのアドリブパートへと展開されるあたりは、ここでもロン・カーターのペースが大きな役割を果たしているようです。
 そしてハービー・ハンコックのピアノがファンキーな味わいも滲ませながら、実に厳しく、同時に和みを優先させた名演アドリブですよっ♪♪~♪ ミッキー・ローカーのドラミングもシンプルにトリオをスイングさせています。

B-2 Gooby To Childhood
 このアルバムの中では一番に深淵ムードの曲で、じっくりとしたスローテンポと重厚なホーンアレンジの妙の中、ハービー・ハンコックが極めて思索的なピアノを聞かせてくれます。
 このあたりは、今にもマイルス・デイビスのトランペットが聞こえてきそうな雰囲気になっていますし、リスナーもそれを期待するのが正直なところだと思います。しかし演奏が進につれ、ハッと気がつくと、完全にハービー・ハンコックのピアノに酔わされているんですねぇ~♪
 ちなみにこのアルバムのジャズ喫茶での定番はA面でしょうが、実はこの演奏ゆえにB面を鳴らす店も少なからずあると言われています。
 このクールでハートウォームなムードは、まさにハービー・ハンコックの真骨頂かもしれません。浮遊感に満ちた気持ち良さは、言わずもがなでしょうね。

B-3 The Sorcerer
 これもマイルス・デイビスの名盤「Sorcerer (Columbia)」で、堂々のアルバムタイトルとされたハービー・ハンコックの代表曲! その自作自演バージョンが鮮やかに楽しめます。とにかくスッキリとメリハリの効いた4ビートの快感と爽やかさえ感じるモード節が、最高です。
 そしてロン・カーターもミッキー・ローカーも、実に楽しそうですから、リーダーも十八番のフレーズを出しまくり♪♪~♪ わかちゃいるけど、やめられませんねっ♪

ということで、これもA面か? あるいはB面か? という論争ネタのアルバムでしょう。それだけ全体が秀逸な仕上がりで、しかも楽しく、心地良いのですから、人気盤になるのもムベなるかな!

ラブリーなジャケットも微笑ましく、それを見開いた内側からレコードを取り出すというアナログ盤ジャケットを実際に手にしてみれば、なおさらに凝ったコンセプトがニクイほどだと思います。これは見てのお楽しみ♪♪~♪

そしてハービー・ハンコックは既に述べたように、正統派ピアノトリオ盤を出していな時期が長かった所為で、ピアニストとしての評価は、このアルバムに集約されていたのが、当時の実情でした。

ホーンが参加した所謂セクステットでありながら、アドリブは完全にピアノ中心というも凄いと思います。ただし、個人的な欲望としては、こういう企画こそ、ハービー・ハンコックのエレピで聴きたかったというのが本音です。

リメイクしてくれませんかねぇ~。


癒し系マリオン・ブラウン

2009-03-16 12:33:20 | Jazz

Vista / Marion Brown (Impules)

黒人アルトサックス奏者のマリオン・ブラウンは、例えばジョン・コルトレーンがデタラメに徹したとしか思えない「Ascdnsion (Impules!)」への参加、あるいはその後の欧州前衛派との共闘等々から、フリージャズの人と思われがちですが、実は美しいアルトサックスの音色が最高の魅力という癒し系かもしれません。

本日ご紹介のアルバムは、フュージョンが全盛期だった1975年に忽然と発表された局地的な人気盤ですが、我が国では前述したような思い込みが強かった所為でしょうか、ほとんど話題にもなりませんでした。

実はサイケおやじにしても、これを最初に聴いたのは、クロスオーバーに力を入れていた某ジャズ喫茶でしたが、それでも発売から1年以上は経過した頃です。

しかし、その内容の気持ち良さ、癒し度の高さに忽ち惹きつけられ、速攻でゲットして以降、愛聴盤となりました。

録音は1975年2月18&19日、メンバーはマリオン・ブラウン(as)、スタンリー・カウエル(p,el-p)、アンソー・デイビス(p,el-p)、ビル・ブレイノン(p,key)、レジー・ワークマン(b)、ジミー・ホップス(ds)、エド・ブラックウエル(ds)、Jose Goico(per)、アレン・マーフィ(vo) 等々が入り乱れですが、その詳しいバンド編成については、原盤裏ジャケットに詳細が明記されています。

A-1 Maimoun
 スタンリー・カウエルのオリジナル曲で、作者本人が静謐なピアノで雰囲気を醸し出し、続いて躍動的なレジー・ワークマンのペースがリードしていく心地良いビートのウネリ♪♪~♪ そして美しく心に染み入ってくるマリオン・ブラウンのアルトサックスが、癒しのメロディを奏でてくれます。また隠し味的なエレピと快楽的なパーカッションも良いですねぇ~♪
 それがアドリブパートではさらに深化して、アンソニー・デイビスのエレピが最高の気持ち良さですよっ! あぁ、このあたりのフィール・ソー・グッドな気分は、ボブ・ジェームスやハービー・ハンコックを凌駕していると思いますねぇ~♪ 何の衒いもないのですよ。
 しかし一転してレジー・ワークマンが主導するベース&打楽器のパートに入ると怖いものが滲んできたりして、やはり侮れません。

A-2 Visions
 そして前曲の怖いパートが自然に静謐なものへと変異転換し、いよいよ始まるのが、このスティーヴィー・ワンダーの名曲という、ちょっと脈絡の無い先入観もあるのですが、実際に聴いてみれば何の違和感もありません。
 アレン・マーフィの入れ込んだ歌唱に寄り添うマリオン・ブラウンのアルトサックスには、所謂スピリッチャルな響きも顕著ですが、イヤミはありません。またアンソニー・デイビスのピアノが、これまた美しいですねぇ~♪
 本当に蓮の花を眺めて癒されるような、素敵な演奏になっています。

A-3 Vista
 という気分をさらに深めてくれるのが、このアルバムタイトル曲です。やはりピアノやエレピで作りだされる静かなイントロから一転、躍動的なパーカッションにリードされていく演奏は、当時のサンタナ風味というのも嬉しく、マリオン・ブラウンのアルトサックスが心静かに情熱を滾らせていくという展開がニクイほどですよ♪♪~♪
 そして作者のアンソニー・デイビスが美メロを出しまくったピアノ、負けじと気持ち良さを提供するスタンリー・カウエルのエレピと続く素敵なアドリブ天国には、おもわず感涙のサイケおやじです。
 縁の下というより、すっかり目立ちまくりというレジー・ワークマンのペースも、幾分のスケールアウトというか音程の危なさが結果オーライでしょう。
 ここまでのLP片面の流れの見事さも素晴らしいかぎりだと思います。

B-1 Moment Of Truth
 B面に入っては、如何にもというアップテンポのクロスオーバー! つまりフュージョンというにはジャズっぽさが優先した演奏だと思います。ラテンのリズムとジャズのビートが上手く融合したノリは、ちょっと渡辺貞夫の味わいもありますが、マリオン・ブラウンは決して妥協することなく、かなり過激なフレーズも披露しています。
 しかしここでもアンソニー・デイビスのエレピが気持ち良すぎますよっ♪♪~♪ 楽しそうに蠢くレジー・ワークマンのペースも流石だと思います。
 あぁ、なんか大野雄二が作るような歌謡曲的なムードもあって、私は好きですねっ♪

B-2 Bismillahi 'Rrahmani' Raahim
 そして一転、またまたピアノやキーボード類が作る爽やかでミステリアスなムードの中を、マリオン・ブラウンのアルトサックスが美しさを演出していきます。この、こみあげくるような、実に神聖なメロディの素直な表現! まさにマリオン・ブラウンの真髄だと思います。
 ちなみに欧州時代のマリオン・ブラウンは環境音楽系のブライアン・イーノとも親交があったそうですから、さもありなん! 決してフリー&デタラメ派ではないのです。
 
B-3 Djinji
 こうして迎える大団円は、このアルバムの中では一番ジャズっぽいというか、厳かなイントロからグイノリのラテン系ジャズビート、さらにネクラな情熱と新主流派的な哀愁がゴッタ煮となった熱演です。
 ただしマリオン・ブラウン自身が、そうした展開に戸惑ったような雰囲気も感じられます。もちろん過激なフレーズも違和感無く出しているんですが、むしろそのあたりがバンド全体を迷い道に連れていくような……。
 ですから、ちょいと勿体ない仕上がりなんですが、アルバム全体の流れの締め括りには、これしか無いんでしょうかねぇ。登場する3人のピアニストが、それぞれに個性を聴かせようと奮闘するあたりはOKですよ。

ということで、聴かず嫌いの代表のようなアルバムかもしれませんね。

しかし虜になると欠かせない魅力の1枚であります! とにかく気持ち良いんですよっ!

と、力説すればするほど滑稽になるとは思いますが、こんな癒し系も「あり」ということです。

ちなみに制作発売レーベルは「Impules」ですが、ジャケットでのレベールロゴからは往年の「!」が消えています。そのあたりも意味深かもしれませんね。


レッド・ガーランドとレス・スパン

2009-03-15 11:35:16 | Jazz

Solar / Red Garland (Jazzland)

モダンジャズ全盛期に多くのレコーディングを残したレッド・ガーランドは、やはり圧倒的にピアノトリオ物、あるいは管入りの正統派ハードバップ作品ばかりが人気盤とされていますが、本日ご紹介のアルバムは珍しくもギターを加えたカルテットセッションが楽しめます。

実際、レッド・ガーランドが他に残したギターとの本格的な演奏は、ケニー・バレルと共演した数曲ぐらいじゃないでしょうか。

で、ここに抜擢されたのがレス・スパンという、一般的には知名度が低いと思われる黒人ギタリストですが、この人はディジー・ガレスピーのバンドレギュラーとなった1958年頃から頭角を現し、フルートも上手いという隠れ名手のひとりでした。また誰よりも早い段階から、ウェス・モンゴメリーが広めたオクターヴ奏法を堂々の後追いで使ったギタリストでもあります。

そして録音は1962年1月30日、メンバーはレッド・ガーランド(p)、レス・スパン(g,fl)、サム・ジョーンズ(b)、フランク・ガント(ds) とされていますが、セッションの日付については諸説あるようです。

A-1 Sophisticated Swing
 かなり古いスタンダード曲を、ここではギターとピアノのユニゾンを活かしたアレンジで聞かせてくれますが、リラックスしたテンポゆえにラウンジ系の雰囲気が強くなり、それゆえにレッド・ガーランドを意識しすぎると違和感もあるでしょう。
 実際、ピアノトリオにギターが入ったことで、楽器の倍音が音量よりも強く音の厚みを作っているようですから、ピアノトリオ演奏で顕著だったレッド・ガーランドの魅力である、シンプルな歌心の妙が微妙に変化しているのかもしれません。
 しかしジャズ的なキモは決して失われておらず、先発でアドリブに入るサム・ジョーンズのギスギスしたペースの音色とハードなフレーズ展開、また続くレス・スパンの「ウェスもどき」は、ソロと伴奏の両方で、私にはジャストミート♪♪~♪
 肝心のレッド・ガーランドもアドリブパートでは何時もの調子を取り戻したというか、リラックスしてコロコロと転がる、あの「ガーランド節」を完全披露していますし、フランク・ガントのドラミングもブラシをメインに職人芸に徹していると思います。

A-2 Solar
 マイルス・デイビスのオリジナル曲を、同クインテットの人気バージョンとなっていた「Dear Old Stockholm」から、要のアレンジを拝借して聞かせてくれます。
 しかし結論から言うと、これは狙ってハズした雰囲気が強く、メンバー各人はそれなりに熱演ですが、う~ん……。サム・ジョーンズの頑張りが一番という感じでしょうか。
 これをあえてアルバムタイトルに持ってきた意図は、レッド・ガーランドの「らしく」無い姿勢を新しいとすることかもしれませんね……。このあたりは賛否両論が必定だと思います。

A-3 Where Are You ?
 これも一般的にはフランク・シナトラの歌として知られる隠れ名曲♪♪~♪ そしてここではレス・スパンのフルートをメインにした正統派の解釈が素敵です。
 特にレッド・ガーランドは十八番のブロックコード弾きに加え、シンプルな歌心に満ちた短音フレーズが冴えまくりですよ。スローなテンポでもダレない表現は流石だと思います。
 またレス・スパンの美しい音色のフルートも特筆物でしょう。けっこう過激なフレーズも出していますが、あくまでも和み優先の姿勢は高得点♪♪~♪
 レッド・ガーランドが何時もの調子を取り戻した感も強いアルバムの流れには、欠かせない名演です。

A-4 Marie's Delight
 レッド・ガーランドの快調な歌心が存分に楽しめるオリジナル曲で、とにかく転がりまくったピアノが実に最高です。アップテンポで軽快なグルーヴを提供するドラムスとベース、その隙間を埋めていくギターの骨太な響きも、たまりません。
 短い演奏ですが、本当に楽しくなりますよ。

B-1 This Can't Be Love
 B面に入っては、それまでの鬱憤を晴らすかのような、まさに狂ったようにスイングするバンドの勢いが圧巻の名演です。
 とにかくビシバシのリズム的な興奮、アップテンポの痛快なノリ、そしてアドリブの爽快感! これがハードバップとモダンジャズの最高の瞬間かもしれません♪♪~♪ 特に後半のソロチェンジが素晴らしすぎますよっ♪♪~♪
 このアルバムの中では一番、「らしい」演奏じゃないでしょうか。
 
B-2 The Very Thought Of You
 そしてこれまたレッド・ガーランドの得意曲が、レス・スパンの美しいフルートも存分に活かしながら、実にリラックスして演じられます。あぁ、このピアノのソフトでキラキラしたタッチは永遠に不滅でしょうねぇ~♪ これぞっ、レッド・ガーランドだと思います。
 また緩やかにして如何にもジャズっぽいスローなテンポの見事さ♪♪~♪ これもまた、レッド・ガーランドのトリオだけにある、素晴らしい魅力でしょう。
 さらにレス・スパンの魅惑のフルート♪♪~♪
 アルバムの中でも屈指の名演として、聴かずに死ぬるか! ですよ。

B-3 Blues For 'News
 レッド・ガーランドがお得意のブルースは、アップテンポの典型的なハードバップですから、手慣れたフレーズやアドリブの構成がマンネリと言われればそのとおりなんですが、ここではレス・スパンのギターが、ほどよいスパイスになっています。
 このあたりは演奏時間の短さが勿体無い気もするほどですよ。タイトに纏まった快演だと思います。

B-4 I Just Can't See For Looking
 ナット・キング・コールの当たり曲を、全くその味わいで演じるレッド・ガーランドのニクイ遊び心♪♪~♪ もちろんこれはギター入りのセッションを想定した選曲だと思いますが、実際、ここでのリラックスして快適な仕上がりには、思わずニヤリです。
 レッド・ガーランドの歌心と粘っこさ、ビートの芯を外さないベースとドラムス、そしてギターのしぶとい感じが、まさに一体となって作り出すモダンジャズの桃源郷が、ここに楽しめます。

ということで、最初は違和感も強いアルバムですが、聴く度に味わいが深まる隠れ名盤じゃないでしょうか? 個人的にはB面を多く聴くのですが、A面の異質な雰囲気も捨て難いと思っています。

また共演したレス・スパンのギタリストとしての特質は、既に述べたようにウェス・モンゴメリーっぽい部分も含めて、主にギターとアンプだけの関係で音を作るという、極みつきの正統派♪♪~♪ ですから素直な倍音や歪みにイヤミがないんでしょうねぇ、私は大好きです。

ちなみにレス・スパンには、局地的な幻の名盤というリーダー作「Gemini (Jazzland)」があり、これも欲しくて精進を重ねていますが、なかなか……。まあCDや再発プレスは出ておりますが、個人的には妥協出来ない我儘が、その魅力の証明とご理解願います。

春の日の休日には、こんなアルバムも良いですね。


デクスター・ゴードンの熱血自然体

2009-03-14 09:18:39 | Jazz

The Montmartre Collection Vol.1 / Dexter Gordon (Black Liom)

ジャズとビールは生が良い!

なんて言われますが、確かに生演奏の現場の熱気、それを封じ込めたライブ盤の魅力は、同じ瞬間芸だとしても、スタジオレコーディングとは一味違った魅力があると思います。

ただし、それをあまりにも意識過剰に演じた作品となればイヤミも強くなるわけで、如何に日常的な熱演を記録出来るかが、プロデューサーの腕ということからもしれません。

その意味で本日ご紹介のアルバムは、まさに全盛期のデクスター・ゴードンが極めて自然体を披露した熱演ライブ盤でしょう。

録音は1967年7月20日、コペンハーゲンのクラブ「モンマルトル」でのライブセッションで、メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、ケニー・ドリュー(p)、ニールス・ペデルセン(b)、アルバート・ヒース(ds) というお馴染みの面々です。

ちなみにこの時のレコーディングは一応、LP3枚に分散収録されながら、その発売には様々な形態があるらしく、収録曲目がダブったような変則2枚組とか、カタログ番号やジャケットが同じなのに収録曲が異なった欧州各国盤、あるいは我が国だけで発売された「Vol.3」とか、本当にマニア泣かせの名演集!

まあ、それだけ残された各曲が、いずれ劣らぬ快演ということなんでしょうが、それもカルテットの充実を的確にとらえたプロデューサーのアラン・ベイツが企画の冴えだと思います。

A-1 Sonnymoon For Two
 ソニー・ロリンズがオリジナルという強烈なリフのブルースですが、かつては自分の影響下にあった作者に敢然と挑戦するデクスター・ゴードンの意気込みが、まずは素晴らしい快演を生み出したと感じます。
 現場でのチューニングの様子から、いきなりツッコミ激しいリズム隊のイントロ! そして自然体でありながら、実に熱っぽくテーマリフをリードするデクスター・ゴードンの心意気! あぁ、ここだけで早くも血が騒ぎます。
 そしてガンガンに突進するアドリブパートでは、テナーサックスの硬質な音色とギスギスしながら淀みない強烈なフレーズの積み重ねが実に激しく、バックで煽りまくるリズム隊さえも置き去りの瞬間が、どうにもとまらない興奮となるのです。
 ちなみにデクスター・ゴードンの特徴としては、ちょいと遅れ気味の出だしからケツはきっちり合っているという独特のアドリブフレーズが連続され、つまり時空があるところで凝縮されたような感覚ですから、自然に演奏密度も高くなるんじゃないでしょうか? このあたりは、あくまでも聴いて感じるものでしょうが、理屈っほいサイケおやじは、そんな事まで考えてしまうほど、ここでの演奏は濃密だとご理解願います。
 またリズム隊の熱血は言わずもがなの強烈さで、十八番というハードバップのブルース大会を演じるケニー・ドリューは、途中で痛快なストライド奏法も駆使するほどに激していますし、若気の至りも好ましいニールス・ペデルセンのペースワークは、その強靭なアドリブも含めて、モダンジャズの真髄に迫っているようです。
 さらにアルバート・ヒースのドラミングが、幾分繊細な味わいも含めて最高にハードバップしています。ニールス・ペデルセンがペースソロを演じている背後でサワサワと聞かせるブラシも良いですねぇ~~♪ 決して派手じゃないところがニクイのです。
 そして演奏は終盤から大団円にかけて、デクスター・ゴードンの再登場からドラムスとのソロチェンジという定番コースながら、その熱気と勢いは本物のハードバップです。

A-2 For All We Know
 一転してシンミリ系のバラード演奏は、歌詞を知らない歌物は吹かないとされるデクスター・ゴードンが、全くそのとおりと思わせるハードボイルドな男気を聞かせてくれます。う~ん、このメロディフェイクには、本当に泣けてきますねぇ~♪
 テナーサックスの素直な鳴りの良さも特筆物で、これぞ全盛期の証明だと思います。
 ケニー・ドリューのホロ苦いようなピアノも素晴らしく、後年の甘々も良いと思いますが、こういうシブイ表現も捨て難いんじゃないでしょうか。

B-1 Devilette
 B面に入っては新しい感覚も聞かせようということでしょうか、ラテンビートを使ったモードっぽい部分とグルーヴィな4ビートのパートが交錯した、熱い演奏になっています。それはニールス・ペデルセンという若手の俊英が入っていればこそでしょうねぇ。最初から最後まで、演奏を確実にリードしているようですから、デクスター・ゴードンも安心して好きなように吹いている感じです。
 実際、ここでのリズム隊はなかなかにヘヴィな雰囲気が好ましく、さらにデクスター・ゴードンのハードな表現がジャストミート! この野太いテナーサックスの魅力は、同じようなモードを演じても、ジョン・コルトレーンのような煮詰まった表現からは遠く離れて、その度量の大きさに感銘してしまいます。
 ミディアムテンポで強烈なウネリを作り出すリズム隊では、アルバート・ヒースの的確なドラミングが流石だと思いますし、既に述べたようなニールス・ペデルセンの活躍に加えてケニー・ドリューが相変わらずの安定感♪♪~♪
 まあ、正直に言えば、それゆえにリズム隊だけのパートが幾分、軽くなる感じもするのですが、結果オーライということで、私は嫌いではありません。、

B-2 Doxy
 これまたソニー・ロリンズが書いた有名オリジナルですが、原曲に顕著なオトボケよりは
、むしろ実直にメロディをなぞっていくデクスター・ゴードンの生真面目さが、それゆえに可笑しさを誘うようです。バタバタしたアルバート・ヒースのドラミングも良い感じ♪♪~♪
 そしてアドリブパートに入ってからの一途なテナーサックスの鳴り響きは、もう最高ですよっ! ユーモア溢れる歌心、任侠な音色とグルーヴィなノリ、これほど自在にハードバップを演じることが出来るミュージシャンは稀でしょうねぇ~。本当に薬籠中の名演だと思います。
 またケニー・ドリューの弾みきったピアノが、これまた楽しいかぎり♪♪~♪

ということで、これは1970年代前半のジャズ喫茶では定番の中の人気盤! もちろん残りの演奏も全てが同等の仕上がりですから、アルバム3枚は全てゲットして間違いないコレクションだと思います。確かCD化もされているはずですよ。

そしてこれに勢いづいたデクスター・ゴードンは、この後の1970年代にはケニー・ドリューとのコンビで円熟期とも言える秀作盤を多数残していきますが、思えばこの2人は1950年代から相性は抜群でしたねぇ。あの大名盤「Daddy Plays The Horn (Bethlehem)」の味わいが、見事にこのアルバムで深化拡大しているといって過言ではないと思います。


ナット・アダレイの「もどき」の名盤

2009-03-13 12:29:41 | Jazz

Naturally! / Nat Adderley (Jazzland)

歌は世につれ、とか言われますが、ジャズのアルバムにだって様々な思い出がついてきて当然ですよね。

例えば私にとって、本日ご紹介の1枚であれば、例によってガールフレンドにバカにされ、不貞腐れて入ったジャズ喫茶で鳴っていたなぁ、とか……。

で、主役のナット・アダレイはご存じ、キャノンボール兄貴に連れられてニューヨークにやってきた弟ということで、いっしょにバンドをやっていても、それほど一般的に認められていたとは言えないでしょう。なにしろキャノンボール・アダレイが偉大な存在ですからねぇ。

しかし作曲能力は兄貴以上に素晴らしく、例えば大ヒットした「Work Song」を筆頭に名曲をいろいろと書いていますし、トランペット&コルネット奏者としても決して侮れない実力者だと思います。

そしてこのアルバムは、そうした魅力にスポットをあてたワンホーンの快演盤!

もちろんナット・アダレイが主役ですが、リズム隊がこれまた強力で、1961年6月20日に録音されたA面にはジョー・ザビヌル(p)、サム・ジョーンズ(b)、ルイス・ヘイズ(ds) という、当時のキャノンボール・アダレイのバンドレギュラーが勢ぞろい! 所謂ボス抜きセッションというわけです。

また同年7月19日に録音されたB面には、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、マイルス・デイビス所縁の面々が起用されていますから、既にゾクゾクされると思います。

A-1 Naturally
 ビンビンビンと唸るサム・ジョーンズのペース、疑似ジャズロックというルイス・ヘイズのドラムス、ビル・エバンス色が強いジョー・ザビヌルというリズム隊が巧みに導くイントロからして快適なジャズムードが横溢し、そこに聞こえてくるラッパの雰囲気はマイルス・デイビス? いえいえ、これがナット・アダレイなのです。
 幾分の綱渡がスリルにも繋がるという、全く得な資質がニクイほどではありますが、その作曲能力を証明するかのようなアドリブフレーズのシンプルさが持ち味でしょうか。決して難しいフレーズは吹かずとも、素敵なハードバップの魅力がいっぱいです。
 また既に述べたようにエバンス派モロ出しのジョー・ザビヌルが、途中からファンキーな色合いを強めていくあたりも最高♪♪~♪
 当然ながらドラムスとベースはハードエッジな4ビートを忘れていません。

A-2 Seventh Son
 ジョー・ザビヌルが書いたクールで熱いモード曲! ダークなファンキー魂が滲むテーマアンサンブルから全篇を通してグイノリのウォーキングベースを響かせるサム・ジョーンズが、見事にバンドをリードしているようです。
 そしてナット・アダレイがミュートでジワジワと盛り上げていけば、気分はすっかりマイルス・デイビスというか、実にたまりませんねぇ~♪
 するとジョー・ザビヌルが何時の間にかウイントン・ケリーへと寝返ったような最高のアドリブを聞かせてくれるんですよっ! あぁ、思わずニヤリのクサイ芝居が自然体なんでしょうねぇ~♪ 賛否両論も関係ねぇ~~♪
 またサム・ジョーンズのエグイ音色による強烈なペースソロだって、これは正統派の自己主張ですから、続く終盤にかけてのバンドの熱気は完全に本物だと思います。

A-3 Love Letter
 有名な歌物スタンダード曲のスローな演奏ということで、ミュートを聞かせるナット・アダレイは尚更にマイルス・デイビスっぽくなっています。
 ただし巨匠のようなクールな繊細さはそれほど滲まず、むしろシミジミとした情感を何の衒いもなく表現したところに好感が持てます。
 このあたりを物足りないと思うのは確かですが、まあ、これはこれで……♪

A-4 This Man's Dream
 キャノンボール兄貴のバンドレギュラーだったドラマーのスペックス・ライトが書いたオリジナルのファンキー曲だけあって、ここでも豪快にグルーヴしまくったハードバップが楽しめますが、そのキモはもちろん、ハードエッジなリズム隊の活躍です。
 サム・ジョーンズの豪胆な4ビートウォーキング、メリハリの効いたルイス・ヘイズのドラミング、そしてツボを押さえたジョー・ザビヌルのピアノ! あぁ、これがモダンジャズの王道だと痛感させられますねぇ~♪
 そしてナット・アダレイの飾らないアドリブには、シンプルなフレーズの積み重ねが高得点! なんだかキャノンポール兄貴が登場しそうな雰囲気も濃厚ですが、それを言ったらお終いということで、ご理解願います。

B-1 Chloe
 B面に入ってはケリー、チェンバース&フィリー・ジョーというマイルス直系のリズム隊が共演ということで、ますますその味わいが深くなっていきます。
 まずは古い歌物スタンダードを如何にものイントロからミュートで演じるナット・アダレイの、その心酔しきった表現が面映ゆいほどですよ。ミディアムテンポで力強いサポートに徹するリズム隊も、それは百も承知なんでしょうねぇ~♪ ウイントン・ケリーのアドリブに続いてナット・アダレイが登場してくれば、もはやそこにはマイルス的世界の桃源郷が現出♪♪~♪
 実は告白すると、冒頭に書いた不貞腐れの私が聴いたのがこれでしたから、冷静さ幾分失っていたとはいえ、てっきりマイルス・デイビスの演奏だと思いこんでしまったほどです。
 この手のスタイルは、例えばダスコ・ゴイコビッチあたりにも顕著ですが、やはりこのリズム隊があればこそという本物度数の高さが、実に素敵です♪♪~♪ ポール・チェンバースのペースソロもリバーサイド系の録音でハードに楽しめますよ。

B-2 Images
 そしてこれがほとんど「So What」と「Impressions」の中間的モード曲! ポール・チェンバースが唯我独尊の4ビートウォーキングならば、フィリー・ジョーのリムショットにビシッとキメるスネアの気持良さ♪♪~♪ さらにウイントン・ケリーの颯爽としてスカッとするピアノが聞こえてくれば、当たりは完全に疑似カインド・オブ・ブルーですよっ♪♪~♪ 実際、前述した曲と同じモードを使っているんでしょうねぇ~、サイケおやじにすれば、もうシビレが止まらんほどですよ。あぁ、クールな熱気が素晴らしい!
 肝心のナット・アダレイも完全に「もどき」の世界から脱しようとすればするほど、本家に近づいてしまうという、最高に好ましい結果を聞かせてくれますが、やっぱりリズム隊の直伝グルーヴがあればこそでしょうねっ♪♪~♪

B-3 Oleo
 さらに、これまたやってくれるという演目は、もちろんモダンジャズ期のマイルス・デイビスが十八番にしていた聖典曲! フィリー・ジョーのドラムスを要としたテーマのアンサンブルから白熱のアドリブまで、ナット・アダレイがミュートで突進するアップテンポの演奏です。
 あぁ、このリズム隊の爽快感! 完全に「分かっている」んでしょうねぇ~♪ 各人のパートの熱演は、所謂お約束と言えばそのとおりなんですが、これこそヒッチコックの提唱する「全て分かっている楽しみ」だと思います。

B-4 Scotch And Water
 ジョー・ザビヌルが書いた、キャノンボールのバンドでは定番の演目ですが、それを「マイルスもどき」で演じるきれるのは、まさにこのリズム隊の至芸♪♪~♪ ナット・アダレイが本当に嬉々としてミュートを吹き鳴らせば、ウイントン・ケリーのピアノはスイングしまくって止まりません。
 ハードバップの一番美味しいところを提供するドラムスとベースのコンビネーションも絶妙にして細心ですから、もっと聴いていたいという贅沢が残るのでした。

ということで、これそこ「もどき」の名演集!

しかしナット・アダレイ自身に決して個性や実力が無いというわけではありません。本来の資質を意図的にモロ出しにした企画セッションだったのでしょう。他のリーダー盤や兄貴との共演盤等々と比較しても、それは明らかでしょう。そして、それゆえのノビノビとした感じが、アルバム全体を聴き易いものにしているのかもしれません。

マイルス・デイビス好きの皆様には激オススメ! もちろん全てのジャズ者がニヤリとするに違いないアルバムだと思います。


イリノイ・ジャケーのムード

2009-03-12 13:19:57 | Jazz

Swing's The Thing / Illinois Jacquet (Verve)

異論はあると思いますが、全ての音楽は、その場の雰囲気を決定づける力を持っているとすれば、ジャズも例外ではありません。

レコード盤に針を下した瞬間から広がっていくグルーヴィな雰囲気♪♪~♪ あるいは気分はロンリーな胸キュンのムード、そして血沸き肉踊るヤル気の充満!

このあたりは何もジャズだけではありませんが、やっぱりインスト主体のジャズは良いんですよ~♪ これは独断と偏見!

ということで、本日ご紹介の1枚は、最高にジャズっぽくて下世話な空間演出には欠かせないアルバムだと思います。

その主役のイリノイ・ジャケーは、何と言ってもJATPとかのジャムセッションで激しく咆哮する大ブローが有名でしょう。そのヒステリックで下品な音使いと馬力満点に突進していくテナーサックスは、黒人ジャズのひとつの側面を極端に表現したものかもしれません。

それゆえに限られたファンだけに愛聴されるミュージシャンという感じが我が国では支配的でしょうねぇ……。実際、私もこのアルバムを聴く前までは、そう思いこんでいました。

ところがイリノイ・ジャケーは確かにR&B系のヒット曲もありますが、もうひとつの本質として、抑えた感情の表現が実に素晴らしく、それは歌物のスローな解釈や絶妙のタメとモタレのスイング感が抜群! それがここでは存分に楽しめます。

録音は1956年10月16日、メンバーはイリノイ・ジャケー(ts)、ロイ・エルドリッジ(tp)、ジミー・ジョーンズ(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、ジョー・ジョーンズ(ds) という、最高にジャストミートした面々♪♪~♪

A-1 Las Vegas Blues
 レイ・ブラウンとハーブ・エリスが作る思わせぶりなイントロから、グッとタメが効いたテーマリフ、そしてミディアムテンポの快楽的なジャズビート! もう、これで決まりですよねぇ~♪
 実際、この気持ち良いグルーヴは最高です。
 そしてイリノイ・ジャケーのハードボイルドにスイングするテナーサックスは、レスター・ヤングの専売特許的なフレーズまでもが素晴らしいノリで使われたりする、ちょいと意外な感じもするんですが、実はこれこそがイリノイ・ジャケーの本質なんでしょうねぇ~♪ そこに魅せられている私は、シビレがとまらないほど、たまらん世界ですよっ!
 ソフトでダークなテナーサックスそのものの音色にもグッときます。
 さらにロイ・エルドリッジのミュートトランペットが、これまた最高の極みつき! ゆるゆると出てきて思わせぶりを演じつつ、次第に熱いブルースを奏でいく物語展開は流石としか言えません。寄り添うハーブ・エリスも上手すぎます。
 それとリズム隊が地味ながら、やっばり強い印象を残します。特にジミー・ジョーンズの歌伴型のピアノが絶妙ですよ♪♪~♪ 全くこの人の起用がここまで正解だと納得させられますねぇ~♪

A-2 Harlem Nocturne
 我が国では往年のフロアショウやストリップ等々、その定番使用だったムードテナー曲ですから、ここでのイリノイ・ジャケーの、全くそれもんの吹奏には気恥ずかしさを覚えるほどです。
 う~ん、それにしても、このテナーサックスのサブトーン、豊な音量とふくよかの表現は激ヤバとしか……。
 そしてロイ・エルドリッジのミュートトランペットが出る頃には、ハーレムど真ん中のムードが横溢するのです。昔っぽいリズム隊のワザのキレも楽しいところでしょうか。
 まあ、このあたりをどう楽しむかで、世代がわかったりしますかねぇ~。

A-3 Can't We Be Friends
 これも和みの歌物スタンダードということで、ジミー・ジョーンズが十八番のイントロから抜群のメロディフェイクでテーマをリードしていきますが、続くロイ・エルドリッジのトランペットが醸し出すムードの良さ! これがジャズだと思いますねぇ~♪
 そしてハーブ・エリスが控え目ながらもキラリと光るアドリブを演じた後、いよいよ登場するイリノイ・ジャケーがリラックスしたスイング感のお手本を示します。あぁ、このたっぷりとした音量のテナーサックス! 歌心に満ちたソフトな感情表現も素晴らしいかぎりですし、こういう人がド派手なブロー大会をやるなんて、ちょっと心外でしょうね。

B-1 Achtung
 と思っていたらB面は強烈なアップテンポでドライヴしまくった演奏から始まります。
 もちろんアドリブの先発はイリノイ・ジャケーですが、あのヒステリックな叫びは出さない真っ向勝負! これが実に正統派モダンスイングというか、意識的にタテノリ感を強めるリズム隊と共謀して熱気と興奮を誘います。
 そして当然ながら、こういう展開ならばロイ・エルドリッジの火の出るようなトランペットは欠かせませんねっ! バックのリフやリズム隊のキメも鮮やかに潜り抜けながらの大熱演ですし、クライマックスのテナー対トランペットのパートでは、ベテランの仮面を脱ぎ捨てたような潔さが最高です。
 なにしろイリノイ・ジャケーが煽られてしまうんですから!!

B-2 Have You Met Miss Jones ?
 またまた有名スタンダードを和みのスイング♪♪~♪、テーマのフェイクからアドリブへと繋げていくイリノイ・ジャケーは、まさに薬籠中の名演でしょうねぇ~♪ ミディアムテンポのジャズビートも、例えばハードバップあたりとは決定的に異なるグルーヴになっていますが、別のフィーリングで黒さは顕在! というか、こっちが本物なんでしょうねぇ~。
 その意味でロイ・エルドリッジの些か纏まりのないアドリブさえも、結果オーライの雰囲気優先だと思います。

B-3 Lullaby Of The Leaves
 私の世代ではエレキインストのベンチャーズの得意演目として有名な曲ですから、ここでも一緒にメロディを口ずさみながら、身体は自然に4ビートという、なかなかにせつない演奏です。
 しかしジョー・ジョーンズのドラミングはスイング派どっぶりながら、レイ・ブラウンが絶妙にモダンな味付けがニクイところかもしれません。
 肝心のアドリブパートではグッと抑えたイリノイ・ジャケーに対し、ド派手なロイ・エルドリッジというあたりが意味深でしょうか。後半が特に熱いですね。

ということで、ブリブリの吹きまくりを期待するとバスレるんですが、ジャズの一番良い雰囲気を求めてはジャストミートの仕上がりだと思います。特にA面ド頭のムードは決定的じゃないでしょうか。

それはリズム隊の匠の技も聞き逃せないところです。このレーベルの、この手のセッションでは、メンツからしてピアノにはオスカー・ピーターソンが当たり前のところを、あえてジミー・ジョーンズの起用が大正解だったと思います。本当にシブイ歌伴同様の小技にはゾクゾクする瞬間もあるほどですよ。ジャズは「インスト」でも「歌」なのですねぇ♪♪~♪

またロイ・エルドリッジのハッスルぶりも高得点! 抑え気味のリーダーに代って幾分のスタンドブレイさえ演じる物分かりの良さがニクイほどです。

グイノリのジャケットとは、ちょいと異なる和みのスイングというか、サイケおやじはこういうのも好きということで、ご理解願います。