OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

蘇るカリフォルニア・コンサートの熱気と新風

2010-12-11 14:05:58 | Soul Jazz

California Concert (CTI = CD)

1970年代前半で一番に勢いがあったジャズレーベルは、CTIであったと思います。

もちろん、同時期にはスティープルチェイス、パブロ、コンコード、ザナドゥ、ミューズ等々の正統派も頑張っていましたが、それらがベテラン勢をメインとした往年の味わいを継承する制作方針だったのに対し、CTIは未だ若手とされていたフレディ・ハバード、ジョージ・ベンソンを筆頭に、ヒューバート・ロウズ、ボブ・ジェームス、ロン・カーター、スタンリー・クラーク、ビリー・コブハム、アイアート等々の新進気鋭、そしてハンク・クロフォードやグロバー・ワシントンといったソウルジャズ派に加え、スタンリー・タレンタインやミルト・ジャクソンあたりの既にスタアとなっていた大物を分け隔てなく共演させるといった、実にコンテンポラリーなサウンド作りが魅力でした。

その源はメインのプロデューサーだったクリード・テイラーの手腕によるところが大きく、それはベツレヘム~ABC~インパルス~ヴァーヴ等々の名門レーベルで研鑽を積み重ねてきた成果として、1967年頃にA&M内部に設立した初期CTIから一貫してきたものです。そして、例えばウェス・モンゴメリーの大ヒットアルバム「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」に結実しているのは、ご存じのとおりでしょう。

ただし、それは所謂イージーリスニングジャズと呼ばれ、ガチコンを求めるイノセントなファンには確かに物足りないものだったのも、また事実です。

その所為でしょうか、クリード・テイラーは1970年、ついに独立し、新たにCTI(Creed Tayior Inc.)を設立し、まさに1970年代のジャズを提供し続けたというわけです。

さて、そこで本日ご紹介は、そのCTIに所属していたスタアプレイヤーが一堂に会した1971年夏の豪華なコンサートから作られたライプ盤ですが、初出は1972年のアナログ盤LP2枚組だったものが、1990年代にCD化された時には当然ながらボーナス音源が追加され、そして今年になってリマスター再発された時には、またまたそれが増えたという、なかなか嬉しい拡張バージョンになっています。

メンバーはフレディ・ハバード(tp)、ヒューバート・ロウズ(fl)、スタンリー・タレンタイン(ts)、ハンク・クロフォード(as)、ジョージ・ベンソン(g)、ジョニー・ハモンド(org,el-p)、ロン・カーター(b)、ビリー・コブハム(ds)、アイアート(per) 等々が入り乱れ♪♪~♪

ちなみに録音データは1971年7月18日のハリウッドとされていますが、これには諸説があるようで、もしかしたら複数の会場で録られた音源が組み合わせられているのかもしれません。

☆Disc-1
01 Impressions
 これは今回のリマスターで新たに加えられた音源で、曲はご存じ、ジョン・コルトレーンが定番にしていた過激モードの人気演目ですから、ツカミをOK♪♪~♪ しかも司会者が参加メンバーを順次紹介しながら演奏がスタートしていくという、なかなかVSOPなスタイルですから、いきなりワクワクさせられますよ。まあ、このあたりは逆なんですけどね、まあ、いいか♪♪~♪
 で、肝心の演奏はコルトレーンとは些か距離がある、グルーヴィなムードが横溢した、ある意味では長閑な雰囲気なんですが、これは同レベールで作られたスタンリー・タレンタインの人気アルバム「シュガー」に収録されたバージョンを踏襲したものでしょう。
 そしてアドリブパートでは、そのスタンリー・タレンタインがタフな男気を存分に発揮したハードボイルドなシリアスブローを披露すれば、ジョージ・ベンソンはハードバップ~モード周辺の展開でありながら、実はソウルジャズも忘れていないという味わいの深さです。う~ん、バックで煽るホーンリフも快適ですねぇ~♪
 すると今度はフレディ・ハバードが大らかで懐の深い表現とでも申しましょうか、例によって緩急自在な音符過多症候群の中に独得のフレディ節を織り交ぜてくれますから、たまりません。
 ただし正直に言えば、小手調べでしょうねぇ。そのあたりの答えは、後からたっぷりと証明されすよ。
 ですから、続くヒューバート・ロウズの全力疾走には好感が持てますし、ジョニー・ハモンドのオルガンからも新しいものを表現せんとする心意気が伝わってきます。
 それと言うまでもありませんが、ロン・カーターにビリー・コブハム、そしてアイアートというリズム隊の根幹が実に心地良いビートを弾き出し、これが如何にも1970年代のモダンジャズを感じさせたものです。あぁ、ロン・カーターのベースソロ!

02 Fire And Rain (A-1)
 これはLPではトップに入っていた演奏で、曲はリアルタイムでジェームス・テイラーが大ヒットさせていたジェントルなメロディをヒューバート・ロウズのフルートが思わせぶり満点にフェイクするという展開になっています。
 そして中盤からのヘヴィなソウルジャズビートによるアドリブパートでは、徐々に熱気が充満していくムードがたまらなく素敵ですよ。もちろんヒューバート・ロウズが聞かせるフレーズは先鋭的ですし、リズム隊の容赦しない怖さか一筋縄ではいかないでしょう。
 当然ながらジョージ・ベンソンもそれに追従しますから、最終盤に至ってバンド全体がフリーに近い表現に走るのも、ムペなるかなです。
 そしてラストテーマの爽やかさは、確信犯的な心地良さに満ちているのでした。

03 Red Clay (A-2~B-1)
 フレディ・ハバードの代名詞とも言うべきオリジナルの名曲名演で、初出当時から人気一番のトラックだったんですが、そのLP収録はA面からB面へと2パートに分かれていたという、思わず???の仕打ちでした。
 ちなみに当時は、この2パートを完璧に繋げてターンテーブルで鳴らせると、ジャズ喫茶のサラ回しとして一人前と認可されていたほどです。
 それが確か初CD化された時には、きっちり繋がっていたとかで話題になった記憶がありす。ただし、それをサイケおやじは持っていなかったので、今回は特に嬉しいというわけなんですが、やっぱり聴いているうちに血が騒ぎますねぇ~~♪
 十八番の熱い思わせぶりをイントロに使うフレディ・ハバードはニクイばかりですし、そこからビリー・コブハムが叩き出すヘヴィなジャズロックビートに煽られ、例のキャッチーなテーマが合奏された瞬間、その場はCTI色に染まってしまいます。
 そしてアドリブ先発のフレディ・ハバードが幾分押さえ気味のスタートからスピード感いっぱいの起伏に富んだフレーズの連発に繋げる展開は、これがウケなかったらジャズの未来は無いと思わせるほどなんですが、それに続くスタンリー・タレンタインが余裕綽々の歌心を全開! もう、最初の一撃から出来過ぎとしか言えませんし、熱血プローを披露する中盤からはビリー・コブハムのドラミングも過激になります。
 さらに、お待たせしましたっ! ジョージ・ベンソンが畢生のギターソロ!
 既に述べたように、アナログ盤時代は、その出だしのところでフェードアウトして、B面に続きが入っていたんですが、やっぱり一気に聴ける喜びは、そのアドリブの凄さ共々に痛快ですねぇ~、本当にっ!
 ですから再び登場するフレディ・ハバードが捨て鉢なハイノートを連発した後、すうぅぅ~っと熱気をクールダウンさせるロン・カーターのベースソロが、これまたニクイばかりだと思います。

04 Blues West (C-1)
 またまたグルーヴィな4ビートで演じられるハードバップのブルースなんですが、登場するアドリブプレイヤーは各人が創意工夫を凝らした腕の競い合いが楽しい限り♪♪~♪
 それはスタンリー・タレンタインのソウルフルな任侠路線、それを継承しつつも得意の早弾きを交えながらロックフィーリングまでも表出するジョージ・ベンソン、じっくり構えて実は誰よりも熱いフレディ・ハバード、そしてロン・カーターのウォーキングベースと予想外の相性を感じせるヒューバート・ローズのブッ飛びフルート!!!
 いゃ~、もう随所で観客からは本気の拍手と歓声が沸き起こるんですから、その場の雰囲気の良さは羨ましくなるばかりですよ。

05 So What
 これも今回の新規追加トラックなんですが、ド頭に「Impressions」が入っていますから、似たようなモードを使った演奏なんて……。
 という先入観が見事に覆された強烈な熱演が楽しめます♪♪~♪
 その主役は、この当時から急激な上り調子に入ったジョージ・ベンソンで、とにかくお馴染みのテーマから16ビートのバックを従え、徹頭徹尾の全力疾走ですから、ロン・カーターがちょいと居心地悪そうではありますが、ご安心下さい。直後から突入する高速4ビートのドライヴ感は最高の極みですし、それが突如のスピードダウンからグッと重心の低いグルーヴィな展開となり、さらにソウルジャズがど真ん中の雰囲気に戻って行くという、実に危険極まりない進行が繰り返されるんですから、これがオクラ入りだったとは、何なんだっ!?!?
 特に主役のジョージ・ベンソンは得意技の早弾き節からフリーに近いコードワーク、そしてソウルフルなフレーズで巧みな彩りに添えるという名人芸なんですからねぇ~♪ 演奏そのものはリズム隊がメインなので、ちょいと物足りなくはありますが、この密度の濃さは再現不能の名演だと思いますし、この1曲を楽しめただけで、このCDを買って正解と思わせられました。
 まさに白眉の名演!

01 Here's That Rainy Day
 さて、2枚目のディスクの初っ端もアナログ盤には未収録だった演奏で、お馴染みの人気スタンダードメロディをジェントルにフェイクしていくフレディ・ハバードの名演が楽しめます。
 しかもジョージ・ベンソンのバッキングが正統派モダンジャズの王道とも言うべき素晴らしさですし、思いきったスローテンポでも決してダレない演奏の進行は、名手揃いの証でしょう。
 アドリブパート中盤からのグルーヴィなムードも秀逸ですし、ヒューバート・ローズのプログレなフルートも味わい深いと思います。
 また繊細にしてシャープなビリー・コブハムのドラミングも、流石に侮れませんねぇ~♪

02 It's Too Late
 そして始まるのが、これもリアルタイムでヒットしていたキャロル・キングの名曲メロディなんですが、原曲が隠し味的に持っていたジャジーなフィーリングをソウルジャズのフィルターを通して拡大解釈したアレンジと演奏は、全くサイケおやじの好むところ!
 実は、これ、同時期にジョニー・ハモンドがCTIで制作したリーダー盤でも演じられているんですが、些か小粒だったそのセッション参加のメンバーに比べ、やはりオールスタアズは貫録が違います。
 ただし演奏の核心を作り出すビリー・コブハムの強烈なソウルジャズのドラミングは共通していますから、そのズッシリと重く、しかも腰が浮かされる16ビートのウキウキ感は不変ですよ♪♪~♪
 おぉ、出だしは日活ニューアクションのサントラかっ!?
 ジョニー・ハモンドのオルガンが奏でるテーマのイナタイ雰囲気♪♪~♪
 そしてジョージ・ベンソンが大ハッスルのストレッチアウトを演じれば、ジョニー・ハモンドがケレン味たっぷりのウケ狙いですから、ビリー・コブハムが怒りの千手観音スティックを炸裂させるのも、ひとつの「お約束」なんでしょうねぇ~♪
 ソウルジャズの愛好者ならずとも、熱くさせられますよっ!

03 Sugar (B-2)
 これまた嬉しすぎる演目で、ご存じ、スタンリー・タレンタインがCTIを代表する大ヒットリーダー盤のタイトル曲ということで、イントロが流れた瞬間から、客席のざわめきにも熱気が充満しています。
 そして本人はもちろん、参加メンバー全員が大ハッスル!
 グッとハードボイルドなテーマ吹奏から、グルーヴィとしか言いようがないリズム隊の4ビート、さらに任侠テナーの真髄を披露するスタンリー・タレンタインの親分肌が最高ですし、パックメンバーによるリフの煽りも良い感じ♪♪~♪
 ですから続くフレディ・ハバードの絞り出すような魂のトランペットからは、それこそモダンジャズを楽しむ喜びが満点だと思いますし、幾分の地味~なスタートからグイグイと黒っぽいムードを演出し、ついにはダイナミックな展開に持っていくジョージ・ベンソンの確信犯も憎めないでしょう。
 ちなみに途中でアドリブソロ演奏者を紹介するMCでは、「フレディ~、ハバ~~ドッ」という台詞をジャズ喫茶で酔客が一緒に真似するという流行が、当時は局地的にありましたですね。それも懐かしい思い出というわけです。

04 Leaving West (D-1)
 所謂ボサロック調の楽しい演奏で、基本はブルースながら、ソウルジャズの隠し味が効いているのは言わずもがな、ビリー・コブハムのシャープなドラミングとモダンジャズ保守本流というロン・カーターのペースワークの対比が、実はCTIサウンドの秘密の一端を表わしているのかもしれません。
 そしてアドリブパートではスタンリー・タレンタインの分かり易いフレーズの連発が逆にシブイところですし、ジョージ・ベンソンが微妙なオトボケをやっているように感じるのはサイケおやじだけでしょうか? そのあたりが実に楽しいんですねぇ~♪
 演奏は後半に至り、前述したようにビリー・コブハムとロン・カーターの鬩ぎ合いの中にアイアートが乱入するというリズム的な興奮が用意されていて、これが激ヤバっ!?

05 Straight Life
 オーラスも今回が新規追加のボーナストラックで、しかもフレディ・ハバードのオリジナル人気曲というわけですから、既に歓喜悶絶のサイケおやじを尚更にKOした演奏になっています。
 それは初っ端から激しい対決姿勢を露わにしたフレディ・ハバードとビリー・コブハムの熱血から、かなり荒っぽいテーマアンサンブルとアドリブパートの破天荒な展開が痛快なんですねぇ~♪
 まあ、冷静に聴けばオクラ入りしていたのも当然という仕上がりではありますが、猪突猛進気味のフレディ・ハバードとラフファイトに徹するビリー・コブハム、その間を取り持つ事に腐心するジョージ・ベンソンという構図は、ある意味でジャズの醍醐味を堪能させてくれるんじゃないでしょうか?
 それと冷静なようで、実は過激なリフを演じているロン・カーターの存在も流石だと思いますが、ビリー・コブハムの凄まじい16ビートは!?!? これじゃ、ジョージ・ベンソンがマジギレするのも無理からんですよ。でも、サイケおやじは、そこが大好き♪♪~♪
 ですから事態を収拾出来るのは、やはりスタンリー・タレンタインの親分しかいませんよねぇ。16ビート何するものぞっ! そうした心意気が全てを飲み込む度量の大きさというか、実に豪快なテナーサックスが素晴らしい限りです。
 そして、それがあればこそ、続くジョニー・ハモンド対ビリー・コブハムの熱闘も、また最終盤で繰り広げられるフレディ・ハバードが十八番の乱れ打ちハイノートも、さらにはビリー・コブハムの地獄のドラムソロさえも、見事な大団円となるのでした。

ということで、実はCTI発足40周年記念の再発らしく、最近流行の三面見開き紙ジャケット仕様も嬉しいんですが、ただし、CD本体が内側に収納されている方式なので、ちょっと取り出しずらいのが難点でしょうか。

それとリマスターに関しては、オリジナルのアナログ盤に比べると、スッキリした力強さは感じられるものの、音圧がもう少し高ければなぁ……。

そういう不満が無いわけではありません。

しかし、そんな諸々を考慮しても、内容の素晴らしさは不滅に熱い1970年代ジャズの本領発揮!

既に述べたように、当時のCTIのサウンド作りはソウルジャズやジャズロックのリズムを当然に様に使いながら、例えばロン・カーターという保守本流のベース奏者を起用する等、要所にモダンジャズの本質を決して蔑にしないプロデュースが行われていました。

ですからビリー・コブハムの他にもハービー・メイソンやスティーヴ・ガッド等々の新進ドラマーを積極的に使ったセッションであっても、そこで完成される演奏にはジャズ本来の「4ビート魂」が強く滲み、また同時に温故知新というか、当時はクロスオーバーと呼ばれていたフュージョンの一番良い時期を作り出せたんじゃないでしょうか。

その意味で、このアルバムはソウルジャズに分類するのがサイケおやじの気分ではありますが、立派なモダンジャズとしても異論は無いところです。

そして実際、リアルタイムのジャズ喫茶では忽ちのリクエスト殺到から人気盤の地位を確立したのです。

しかし、こんな理屈なんて、CTIの諸作を聴く事に関しては、全く不必要なんですよねっ! まあ、それを分かっていて御託を並べてしまうサイケおやじは、分かっていなんでしょうか……。

それでも、ここに収められた白熱の名演を数々には、素直に屈服するのでした。

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本日も、すみません……

2010-12-10 14:05:21 | Weblog

PCソフト再インストールのため、お休みします。

明日はなんとか、なる予定なので、よろしくお願い致します。

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病院は何時も混雑

2010-12-09 15:52:29 | Weblog

今日もまた、病院で検査の1日でした。

ゆえに本日の1枚は休載、ご理解願います。

う~ん、なんだかPCも不調気味……。

キーボードの作動にタイムラグが激しいなぁ……。

 

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今日は……

2010-12-08 13:55:55 | Beatles

ジョンの魂 / John Lennon (Apple)

ひたすらに合掌……。

未だに受け入れられないものが、あります。

拭いきれないものも、あります。

だから、ひたすらに合掌……。

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バドカンはデビュー曲がすべてか?

2010-12-07 16:17:14 | Rock

Can't Get Enough / Bad Company (Island / Swan Song)

今にして思えば、1970年代ロックとは、如何に「らしく」やるかが命題であったのでしょう。

ですからスタジオミュージシャンがモテモテだったり、あるいは産業ロックなんていう忌まわしい言葉が使われたり、ついにはそうした間隙を突かれて、パンクなんていう自分にとっては許し難い奴等までもがブレイクする始末……。

しかも現実的には、その「らしく」やるための決定的な方策さえも、煮詰まっていたんですから、それも致し方ないところだったと思うばかりです。

ところが、全く単純明快に、その答えを出してしまったのが、1974年にデビューしたバッド・カンパニーというバンドで、本日ご紹介のシングル曲こそ、象徴的に忘れられない名演です。

もちろん、ご存じのとおり、バッド・カンパニーは単なるポッと出の新人グループではありません。

フリーのポール・ロジャース(vo,g) とサイモン・カーク(ds)、元キング・クリムゾンのボズ・バレル(vo,b)、そしてモット・ザ・フープルに在籍していたミック・ラルフス(vo,g) という4人組ですから、業界の辛酸を知りつくした面々による仕事には、抜かりが無くて当然でしょう。さらに当時は所謂「スーパーグループ」としての存在に、ファンが意識過剰な期待を抱いていたことも否定出来ません。

しかし届けられたデビューシングル曲の「Can't Get Enough」は、まさにフリーの衣鉢を継いだシンプルなビートで演じられる、最高にストレートなハードロック♪♪~♪

その小細工無しの歌と演奏は、サイモン・カークにボズ・バレルという重量級のロックなリズムコンビに支えられ、ミック・ラルフスの書いた単純明快なリフを頼りにグイグイとソウルフルに歌いまくるポール・ロジャース本来の魅力存分に発揮された傑作になっていますから、忽ち世界中で大ヒットしたばかりか、当時のアマチュアバンドでは必須の演目になったほどです。

既に述べたように、この「Can't Get Enough」が流行った頃の洋楽業界は、プログレやニューソウルがLP単位で売れ、またウエストコーストロックとブリティッシュロックが一般的な人気を競るという状況でしたが、やはり基本的にハードロックの人気は根強く、決定的でした。

ただし、その旗頭といも言うべきディープ・パープルやレッド・ツェッペリンに漂い始めたマンネリや凝り過ぎが、クイーンやエアロスミスといった新興勢力人気急上昇の一因であったとすれば、バッド・カンパニーこそが温故知新の最有力だったのです。

そして実際、デビュー盤はシングル&アルバムともに売れまくり、永遠の名作となったのですが、それゆえに以降の作品に感じられる、いまひとつの精彩の無さは否定出来ないと思います。

結局、バッド・カンパニーは、周囲の期待に応えて如何にも「らしく」登場し、その大成功ゆえに、以降は「らしく」演じることに腐心しすぎたのかもしれません。なにしろバンドそのものがメンバーの離散集合に関係なく、名前だけで存続し続けている歴史が、それを証明しているじゃないでしょか?

しかし、そんな生意気な事を書いてしまったサイケおやじは、やっぱり「Can't Get Enough」の前には、素直に平伏すしかありません。

また、こういう曲があるからこそ、ロックは楽しいと思うのでした。

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ビートルズ本命盤の輝き

2010-12-06 15:54:10 | Beatles

■Ob-La-Di Ob-La-Da c/w While My Guital Gently Weeps
                       / The Beatles (Apple/ 東芝)

リアルタイムの我国において、ビートルズの人気が頂点に達していたのは、おそらく昭和41(1966)年の来日公演の頃だったと思います。

しかし翌年になって、当時としては難解の極みだった「Strawberry Fields Forever」が出たことにより、何か一般的な人気が冷め始めたように思うのですが、如何なもんでしょう? 少なくともリアルタイムで少年時代のサイケおやじは、ついていけないものを感じていました。

また同じ頃、我国の芸能界はGSブームが爆発し、そこに登場していくる幾多のバンドは明らかにビートルズを筆頭とした「歌えるエレキバンド」を模倣していましたから、つまりは身近なアイドルに浮気してしまった大勢の女性ファンが、ビートルズ熱を冷ましてしまった一因ようです。

ちなみにその頃のラジオでも、やっぱりメインはGS曲で、ビートルズはあまり流れなくなったなぁ……、という感慨もあるのです。

しかし、そんなブームの諸行無常の中で、久々にビートルズが一般的に復活したのが、本日ご紹介のシングル曲「オ・ブラ・デイ・オ・ブラ・ダ」でした。

これは説明不要、ビートルズが1968年晩秋に出した2枚組LP「ザ・ビートルズ」に収録されていたわけですが、その通称「ホワイトアルバム」は我国でも翌年1月に発売されながら、なんと4千円という無慈悲な価格でしたから、中高生あたりには、その全てを自分の物として楽しむ事は不可能に近かったのです。

しかも当然ながらマスコミは、その内容の良さを喧伝していながら、それでもラジオの洋楽番組では特集として、件の新作アルバムから数曲を流すのがやっとという有様でした。

ちなみに当時は未だ国営FM放送でアルバムを丸ごと放送するなんていう、太っ腹な番組は無かったと思いますし、それは確か昭和44(1969)年春頃のスタートだったと記憶しています。

ですから、ますますビートルズの新譜に対する欲求不満は精神衛生からも全く厄介な存在として、これじゃ~、ビートルズの人気が落ちるのも、さもありなん……。

なぁ~んて、不遜な事を悔しい気分で思っていたのですが……。

そんな時期にラジオを中心にヒットし始めたのが、この「オ・ブラ・デイ・オ・ブラ・ダ」という、ウキウキと楽しい名曲でした。

うっ、これはビートルズのっ!?

当時のサイケおやじは、未だ「ホワイトアルバム」を全て聴いたことが無かったにも拘らず、ラジオで数回は接していた、このハッピーな歌が好きになっていましたから、てっきりビートルズかと思ったのですが……。

今日では、それはマーマレイドというイギリスのポップスグループが演じたカパーだろうという推測が当然でしょう。しかしサイケおやじの記憶では、幾つものカパーバージョンが同時多発的に流行っていたように思います。

中でも特に印象深いのが、我国GSの人気バンドだったカーナビーツの日本語バージョンでしたねぇ~♪ それが、デズモンドとモリーを太郎と花子に置き換えた、下段掲載のシングルです♪♪~♪

そして、そんな流行があれば、残るは絶対にビートルズのオリジナルバージョンですから、ついに昭和44(1969)年春、堂々のシングルカットが実現したのです。

しかも、このシングル盤は様々な意味合いから、今日でも話題の1枚なんですよ。

まず世界中で我国が先駆けた独自のシングルカットであることは、嬉しさの極みでしょう。なにしろ問題の「ホワイトアルバム」は高価な2枚組でしたからねぇ。

当然ながら、シングル用マスターなんてものは世界中に存在していませんでしたから、これは日本へ送られていたコピーマスターから制作した所為で、恐らくはリアルタイムで初めてのステレオミックスのシングル盤になっているはずです。

さらに我国では、これが初めての「アップル」レーベル使用の1枚!

そのあたりの事情は「Hey Jude」の項にも書きましたが、まさに記念すべきコレクターズアイテムになっていると思います。

肝心の楽曲そのものについては、仕上がりの楽しさとは裏腹に、今日では当時のビートルズの人間関係の悪さを象徴する1曲と認定されるほどで、実際、イントロから強い印象を残すピアノは、ポールから何回もダメ出しされたジョンが、マジギレしてのヤケッパチで弾いたもんだとか、ジョージやリンゴ、あるいは現場の制作スタップも含めて、ポールの横暴さには辟易していたという証言が山のように残されているんですから、この明るく前向きな歌とは裏腹な事情には、いやはやなんとも……。

また問題児のポールは、この曲の印象的な「オブ・ラ・デイ・オブ・ラ・ダ」というフレーズをジャマイカ人のセッションミュージシャンから盗作(?)したとか、いろんな問題行動もあるようですが、それにしても、これほどリスナーやファンを素直に楽しい気分へと導く歌もないでしょう。

流石はビートルズっ!

既に述べたように、「ホワイトアルバム」を買えなかったサイケおやじは、それゆえに他人から何を言われようと、ど~しても、このシングル盤をゲットしようと固い決意で入手したわけですが、手元にやってきたレコードへ針を落したのは、B面の「マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス / While My Guital Gently Weeps」の方が先でした。

というのも、A面の「オブ・ラ・デイ・オブ・ラ・ダ」は耳に馴染み過ぎるほど好きになっていましたが、もう一方の「マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」はほとんど聴いた事が無く、しかし既に名曲名演という噂を耳にしていましたからねぇ~♪

これも今となっては説明不要だと思いますが、妙にアンニュイな気分にさせられる曲調とジャストミートしたジョージの音程が些か危ういボーカルの歌い回し、さらに素晴らしいアクセントというよりも、同等の主役を演じているエリック・クラプトンのギターソロ♪♪~♪

まさに泣いているギターの気分は、せつなさの極北でした。

ちなみに、ここでの参加ギタリストがエリック・クラプトンであるという真相は、何時の間にか知らされた情報ではありますが、既に当時は神様扱いだったギタリストがビートルズの助っ人を演じるというスーパーセッションには、震えるばかりです。

そしてミエミエの狙いが、ここまでズバッとストレートにキマッていながら、イヤミになっていないのは、万事が控えめだと思われていたジョージの人徳でしょうか。

とにかく「ホワイトアルバム」の収録作品中、ダントツの完成度を極めた名曲名演であることは否定出来ないでしょう。

そしてA面の何も考える必要の無い幸せ気分の歌とは正逆の、まさにB面に収録されるに相応しく、また勿体無い贅沢なシングル盤の構成には万歳三唱♪♪~♪

ということで、やはり「本命盤」とジャケットに堂々の記載があることに嘘偽りはありません。

時代的には永遠の名曲「Hey Jude」に続くシングルヒットとされる我だけの事情ではありますが、実は「オ・ブラ・デイ・オ・ブラ・ダ」の方がさらに世間には馴染んでいたように思います。

最近の暗い年末事情には、こういうノーテンキ直前のハッピーソングが求められるのかもしれませんね。

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グラント・グリーンの無視された傑作

2010-12-05 16:20:50 | Soul Jazz

Carryin' On / Grant Green (Blue Note)

一応、グラント・グリーンはジャズギタリストに分類されるのが一般的でしょうが、ご存じのとおり、そのスタイルはレコーディングキャリアの初期から極めてR&B色が強く、それゆえにハードバップ~ファンキーという流れが加速していた当時のモダンジャズ最前線では、一躍スタアになったのも当然が必然でした。

しかし一方、その所謂コテコテのプレイは、悩んで聴くのが常識とされていた昭和40年代までの我国のジャズ喫茶おいて、ちょいと軽んじられていたのも事実です。

というか、ジャズの王道レーベルだったブルーノートに主要録音がありながら、発表される諸作の快楽性が疎んじられていたという……。

ですからジャズ喫茶で鳴らされるグラント・グリーンのリーダー盤は、「フィーリン・ザ・スピリット」や「アイドル・モーメンツ」あたりが圧倒的に多く、それは演奏内容のシリアスな充実度と参加共演者の正統的な顔ぶれゆえの事でしょう。

このあたりの事情はジミー・スミスやルー・ドナルドソンといった人気者にも同様ではありますが、グラント・グリーンが常に標的(?)にされていたのは、単音弾き中心のギター奏法が、ちょいと聴きにはシンプル過ぎることもあろうかと思われます。

ところがギターを弾かれる皆様ならば納得されているとおり、グラント・グリーンのスタイルを模倣する事は想像を絶する難しさ! ごまかしの出来ないメリハリの効いたフレーズ構成と強靭なピッキングのコンビネーションは、あの天才名手のタル・ファーロウにも劣るものではありません。

さて、そういうグラント・グリーンですから、1960年代後半からは尚更にソウルジャズに邁進したのも充分に肯定出来る流れですし、それがジャズ喫茶で一切合財無視されるのも、当時の雰囲気を体験された皆様ならば、当たり前田のクラッカーだと思います。

例えば本日ご紹介の1枚は、まずジャケットからして到底、モダンジャズのアルバムとは思えないでしょう。

発売されたのは、おそらく1970年代初頭だと思われますから、流行が兆していたニューソウルを意識したのかもしれませんが、それは結局、正統派のジャズ愛好者よりは黒人大衆音楽ファンにアピールする商売方針がミエミエ!?

実はアルバムの裏ジャケットに記載されたデーターによれば、録音は1969年10月3日!? ということは約2年半以上のご無沙汰だったブルーノートでのセッションなんですねぇ。

しかもメンバーがグラント・グリーン(g) 以下、クラレンス・パルマー(el-p)、ウィリアム・ビヴンズ(vib)、ジミー・ルイス(el-b)、レオ・モリス(ds)、クロード・バーティ(ts)、ニール・クリーキー(el-p) という、ジャズ者には馴染みの無い名前ばかりが並んでいますから、時代は変わる!?

というよりも、聴けば納得なんですが、グループとして意志の統一とコンビネーションの良さが極めて密度の高い傑作を誕生させた結果からして、多分、このメンツは当時のグラント・グリーンのレギュラーバンドだったのかもしれませんねぇ~♪

A-1 Ease Back
 グラント・グリーンが自然体で弾き出すイントロに導かれ、ビシバシに跳ねるドラムスと蠢くベース、さらにシンプルなエレピとテナーサックスが奏でるのは、ニューオリンズファンクのミーターズが1969年に放った十八番のヒット曲ですから、このセッションではリアルタイムのカパー物!
 こういう姿勢にも、ここ一発に賭けたグラント・グリーンのヤル気が感じられるんですが、その勢いが裏切られる事の無い演奏は実際、熱いですよっ!
 イナタイ雰囲気の良さは言わずもがな、十八番の三連針飛びフレーズを完全披露するグラント・グリーンを煽るレオ・モリスのドラミングが、これまた埃っぽくて最高♪♪~♪ もちろんエレピ&エレキベースが、如何にも当時風に使われていますから、ほどよい鬱陶しさを撒き散らすクロード・バーティのテナーサックスもイヤミになっていません。

A-2 Hurt So Bad
 これまたリトル・アンソニー&インペリアルズが1965年に放ったメガヒットのインストカパーということで、まずはアレンジがオリジナルバージョンの胸キュンフィーリングを大切にしながらも、実に熱くグルーヴする演奏が最高の極みつき!
 そしてグラント・グリーンが先発するアドリブは歌心満載なんですねぇ~♪ もう、その最初のフレーズからして三日ぐらいは寝ないで考えたんじゃないかっ!? 思わずそんな風に思ってしまうほどの素晴らしさなんですが、その後も決定的な三連フレーズの乱れ打ちや原曲メロディの巧みなフェイクが積み重ねられ、筆舌に尽くし難い高揚感に満たされると思います。
 実は無謀にも、このアドリブをコピーした事のあるサイケおやじは、もちろん完璧には出来るはずもありませんでしたが、弾いていて本音で気持が良くなるんですよ♪♪~♪
 それと浮遊感いっぱいのエレピの伴奏がニクイばかりで、それゆえに力強いドラムスとベースのビートが冴えまくり、テナーサックスのセンスの良いプローを呼び込む展開は、このアルバムの中でも白眉の名演になっています。
 あぁ、何度聴いても、飽きません。

A-3 I Don't Want Nobody To Give Me Nothing
 なんと、今度はジェームス・ブラウンのカパーをやってしまうんですから、悶絶ですっ! そのオリジナルバージョンは確か1969年春にシングル発売されたJB流儀のファンクな歌と演奏なんで、サイケおやじは聴く前からワクワクしていたんですが、それは全く裏切られませんでした。
 ここでのグラント・グリーンとバンドは原曲が放っていた黒い熱気を尚更にダークなインストバージョンに変換することにより、適度なジャズっぽさとファンクなソウルを見事に両立させています。
 何時までもイキそうでイカないエレピも、たまりませんよ♪♪~♪

B-1 Upshot
 B面に入ってようやく出ました、これがグラント・グリーンのオリジナル!
 しかしイントロからのリフは完全に昭和歌謡曲ですよねぇ~♪ ほとんど西田佐知子のヒット曲に、こんなのありませんでしたか?
 まあ、それだけでウキウキさせられるサイケおやじではありますが、ここまで弾みきったリズム&ビートを演じてしまうバンドのグルーヴは強烈至極ですし、アドリブパートにしても熱血のテナーサックスを吹きまくるクロード・バーティは、なかなかの実力者だと知れるでしょう。そしてクラレンス・パルマーのエレピが、これまた日活ニューアクションのサントラ音源の如き白熱のジャズロック!
 いゃ~、本当に血が騒ぎますねぇ~~~♪
 さらにグラント・グリーンのギターがスピードの付いた単音メインのアドリブは当然ながら、濁ったコードワークの使い方も侮れず、こういうところがソウルジャズの真骨頂だと思うばかりです。

B-2 Cease The Bombing
 ここに1曲だけ参加したニール・クリーキーのオリジナルで、作者のエレピを存分に活かしたメロウな曲調と演奏には、タイトルの押しつけがましさ以上のせつせつとした心情が胸に染みる、これまた素敵な世界が堪能出来ます。
 う~ん、聴いているうちに、こんなに気持良くなって、良いんでしょうか……?
 アドリブパートでは、先発のウィリアム・ビヴンズがヴァイブラフォンで虚無的な世界を描いて秀逸ですし、繊細でメロウな歌心を意外なほどに聞かせてくれるグラント・グリーンのギターは、音色そのものも魅力だと思います。
 そして作者のエレピが饒舌に披露するスペーシーでソウルフルな味わいは、全くこの時期でしか表現出来なかったものでしょう。本音でシビれます♪♪~♪

ということで、ジャズ喫茶では完全無視の代表格だと思いますが、聴けば万人が虜になること請け合いの傑作だと思います。特にソウルジャズが大好きな皆様にはマストアイテム!

告白すればサイケおやじは昭和48(1973)年のある日、某中古レコード店の3枚千円セールで員数合わせ的にゲットしたLPだったんですが、ソウルジャズ期のグラント・グリーンの諸作の中では、最高に好きな1枚になっています。

とにかく捨て曲、ひとつも無し!

全篇、最高のソウルジャズが堪能出来る決定的な名盤!

これは断言して、絶対に後悔致しません。

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花の首飾りはプログレかもしれない?

2010-12-04 15:54:57 | 日本のロック

銀河のロマンス c/w 花の首飾り / ザ・タイガース (ポリドール)

GSブームは間違いなく日本のロック全盛期でありましたが、しかし関連バンドが世に出した楽曲は必ずしもロックとは言い難いものが少なからずありました。

それは歌謡フォークであったり、またはそのものズバリの昭和歌謡曲であったり、ブーム終焉期にはムード歌謡コーラスの世界へ堂々と転身したバンドさえありましたからねぇ……。

で、そうした中で常に誤解され続けていたのが、タイガースじゃないでしょうか。

それは飛び抜けたアイドル性と売らんが為のマスコミ戦略が行き過ぎていた結果として、特に野郎どもからは嫉妬され、心ある(?)音楽評論家の先生方からは蔑まれ、当然ながら浮気なファンの気まぐれも影響しているようです。

しかし残された楽曲をリアルタイムよりは後になって聴くほどに、その凄い制作指向にハッとさせられることが多いサイケおやじです。

例えば本日ご紹介のシングル盤は昭和43(1968)年春に発売され、主演映画だった「世界はボクらを待っている(東宝)」の主題歌&挿入歌だったこともあって、タイガースを代表するヒットになったのですが、結果的に「花の首飾り」も「銀河のロマンス」も、決してロックと分類する人は当時も今も極めて少数でしょう。

ちなみに両曲は当時としては珍しく、両A面扱いでの発売でしたから、ヒットチャートには双方等しく登場していましたしが、テレビ出演では「花の首飾り」を歌うことが多かったように記憶しています。

で、まず「銀河のロマンス」は例のシルビ~、マイ、ラァ~ヴ~♪ のキメが覚え易しい、これがベタベタの歌謡フォークで、沢田研二というよりも、まさにジュリーの甘っちょろいボーカルの魅力が全開していますが、なによりもそうした個性を予め想定して作られた楽曲が素晴らしいと思いますねぇ。

これぞっ、作詩:橋本淳、作編曲:すぎやまこういち!!

そして更に素晴らしいのが「花の首飾り」で、なんとリードボーカルを担当するのが加橋かつみ!?! しかし、その透明感に満ちた声質と繊細で力強い表現はジュリーとは異なる新鮮さでしたから、むしろ「銀河のロマンス」よりもウケていたのは当然でした。

しかも、この歌詞は当時の芸能誌で募集されたもので、見事に作詞を採用された菅原房子というアマチュアの女性は19歳だったと評判になりました。もちろんクレジットされているように、なかにし礼というプロの作家がフォローしているんですが、それにしても歌うほどに微妙な翳りの滲む表現は個人的に大好きですし、すぎやまこういちが書いた曲メロが実に良いんですねぇ~~♪

さらに凄いのが、全体を印象づけるバロック調のストリングスとアレンジの妙で、これは単なるクラシックと歌謡曲の融合なんてものじゃなく、「サテンの夜」でお馴染みのムーディ・ブルースのコンセプトを活かしたプログレかもしれませんよっ!?

そのあたりの真相は当時、ほとんど触れられることも、解明されることもありませんでしたが、当時のタイガースが出していた楽曲には、そうしたクラシック歌謡趣味が横溢していて、このシングル盤の前作だった「君だけに愛を」のB面に収録の「落葉の物語」や同年夏に発売される「シー・シー・シー」のB面曲「白夜の騎士」と続く三部作を聴けば、納得する他はありません。

実はタイガースと言えば、リアルタイムでのサイケおやじは、そのライプの現場における荒っぽい演奏から、R&R直球勝負の魅力を感じていたのですが、現実的なシングルヒットから人気を得ていた部分は結局、「モナリザの微笑み」や「花の首飾り」、そして「廃墟の鳩」や「青い鳥」といった軟弱路線でしたから、どっちが本当の姿なのか分からない部分に誤解の一因もあったように思います。

ただし、デビュー曲がやはり「僕のマリー」であったことは重要なポイントでしょう。

そして現在のサイケおやじは、タイガースの演目で口ずさんでしまうのは、何時も「花の首飾り」や「銀河のロマンス」、そして「青い鳥」あたりなんですよねぇ~♪

最後になりましたが、タイガースがそうした路線を成功させたのは、実は素晴らしいコーラス能力があったバンドだからでしょう。実際、4声ハーモニーとか、上手いんですよねぇ~♪

そのあたりをもっと評価されて然るべきだと思うばかりです。

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こんな感じで酒を飲みたい

2010-12-03 15:24:17 | 日本のロック

■ぐでんぐでん / 萩原健一 (Bourbon)

連日のマスコミトップ報道が某歌舞伎役者の暴行被害事件とか、情けない……。

まあ、それだけ今の日本が平和という証なんでしょうが、さて、こうした「酒」関連のトラブルって、事の大小を問わず、日常茶飯事なのが昔っからの実態でしょうね。

しかし表面的な報道しか知り得ない状況だとしても、双方がやってしまった事は許されるものではありませんし、今後は最良の解決策を目指して欲しいもんだと思うばかりです。

ただし、こんな偉そうなことを書いてしまったサイケおやじにしても、実は酒には酔わない体質でありながら、その場の雰囲気に酔ってしまったというか、酒席での喧嘩沙汰は事の大小に関係なく、それなりにやってしまった過去があります。

例えば全く知らぬ事とはいえ、酔って乱れて素人の女の子に悪戯していた中年おやじを罵倒した翌日、その人が仕事関係先の重役だったという現実に直面した時の始末の悪さは、決して若気の至りだけではありませんでした。

結局、格好をつけた挙句のブザマな醜態になるんですよねぇ……。自分が悪くも無いのに、卑屈に頭を下げなければならない事に対し、決して納得していないですからっ!

また、一番に自分が嫌になったのは、やはり酒席で「お前とは腹を割って話が出来ない」と言われた時ですねぇ……。

なにしろ、これは完全に自覚症状があるんですが、酒を飲むほどに頭が冴えてくるというか、客観的に周囲が見えてしまうんです。しかも、そうした態度が自然と周囲に知れてしまうんですから、嫌われて当然なのでしょう。

ですから、そういう場では積極的に「芸」をやったりして、溶け込むような努力をしている事については、以前も何度か書いたとおりです。

さて、そんなこんなから本日のご紹介は、元テンプターズのボーカリストというよりも、すっかり日本を代表する名優になっていた萩原健一が、その本分を発揮した歌手活動の中で、昭和55(1980)年秋に出した酒飲みソングの名唱シングル♪♪~♪

何時もの酒場で友人と会い、ぐでんぐでんになるまで飲み明かすという、そんな男の終りなき日常が、サイケおやじにとっては実に羨ましく歌われています。

もちろん曲調は歌謡ロックがど真ん中!

作詞:康珍化、作曲:鈴木キサブローという当時のヒットメーカーによる狙いは直球勝負ですが、とにかく、グッと心根に迫ってくる萩原健一、というよりもショーケンの魂の歌いっぷりに泣きのギターが絡みつき、さらに意外とも思えるソウルフルなロックビートが背後から煽るという展開は、当時からライプステージのハイライトだった人気曲の秘密でしょう。

ちなみにソロ歌手としてのショーケンの音楽活動は、どうしても俳優業の影に隠れている感も強いんですが、その中で出していたレコードの中には捨て難い名曲名唱が夥しく、そのほとんどが今日でも古びていないはずです。

これはテンプターズ時代の音源にも同じく言えることでしょうが、萩原健一という独得の翳りを自然体で身につけている歌手は、「萩原健一=ショーケン」を演じきっている事に他ならないのかもしれません。

そうした唯一無二の佇まいがあってこそ、どんな曲を歌っても最高の魅力を醸し出すわけですが、もちろんテンプターズ以降の本人は自らが歌う楽曲について、相当に我儘だったんじゃないでしょうか。

ちなみに余談になりますが、昭和60年頃の札幌にあった「チャック・ベリー」という飲み屋のショータイムでは、従業員がショーケンの演目をリアルな物真似的に披露していて、最高でした。実際、サイケおやじは出張する度に訪れては、楽しんでいたものですが、今はどうなっているんだろうなぁ~。

閑話休題。

ということで、この「ぐでんぐでん」は、酒はこうやって飲みたいもんだなぁ~、というサイケおやじの心の1曲です。

そしてショーケン=萩原健一のカッコ良さに憧れる歌でもあります。

おそらくはCD化されているはずですので、宴会シーズンの今こそ、お楽しみ下さいませ。

また同時期に制作されたライプ盤も、泣けるほど最高なんで、よろしくです。

件の歌舞伎役者も、このあたりを歌ったら如何なもんでしょう。

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ビートルズのブート金字塔

2010-12-02 15:23:14 | Beatles

■Ultra Rare Trax 2010 Remaster Vol.1 (TSP / IMP)


ビートルズの海賊盤史上、最もインパクトが強かったブツの中でも、1988年に初出した「ウルトラ・レア・トラックス Vol.1 (掲載ジャケ・下)」は特に大きな衝撃でした。

それはスタジオ録音のアウトテイク集で、しかもCD優先の発売であった事から、正規盤と遜色の無い優良な音質で、これまで聴いたことの無かったビートルズが楽しめたのです。

これは当時、西ドイツにあったとされる The Swing'in Pig = TSP という、ブートでは名門の業者が出した自信作として、その内容の良さもありましたから、忽ち世界中で評判を呼び、売れまくったのは記憶に新しいところです。

なにしろマニアックな音楽雑誌ばかりではなく、欧米では一般新聞の特集記事になるほどの騒ぎでしたし、ブートでありながら普通のレコードショップで堂々と販売されるという実態は、ひとつの事件でもありました。

それは我国でも同様で、ブート屋はもちろんのこと、大手輸入盤屋でも正規盤と同じコーナーで売っていたんですよねぇ~♪

そして同社は続けて「Vol.2」から「Vol.6」まで、シリーズ化してビートルズのアウトテイクを出し、これに他の業者がコピー物を含めて参入したことから、一時は低迷していたブート業界が息を吹き返し、さらに本家のEMIが例の「アンソロジー」シリーズを出す契機になった事実は否定出来ません。

ちなみにソースとなった流出音源の出所は、どう考えてもEMI本社のテープ保管庫しかありえないという結論から、犯人探しとして各方面の関係者が取り沙汰されましたが、未だに真相は不明です。

しかし、こういう違法行為も、実は後の歴史の中では結果オーライというか、それによってファンが喜び、またビートルズ側がレコード会社も含めて、新しい金脈を自らの手で運営管理出来るようになったのですから、世の中は一寸先は闇とばかりは言えないでしょう。

さて、その大ヒットブート「ウルトラ・レア・トラックス」が、ついにというか、恒例のリマスターによって再発されたのが本日ご紹介で、実は1988年に出た最初のシリーズの元ネタとなった6本のマスターリール等を再検証したのでしょうか、そのあたりの事情も含めて、本当に価値のある音源だけを3枚のCDに纏め、ボックスセットにした中から、とりあえず最初の「Vol.1 (掲載ジャケ・上)」を取り上げる事に致します。

 01 I Saw Her Standing There (take 2 / 1963年2月11日録音 / stereo)
 02 One After 909 (take 2 / 1963年3月5日録音 / stereo)
 03 She's A Woman (take 2 / 1964年10月8日録音 / stereo)
 04 I'm Looking Through You (take 1 / 1965年10月24日録音 / stereo)
 05 If You've Got Trouble (1965年2月28日録音 / stereo)
 06 How Do You Do It (1962年9月4日録音 / mono)
 07 Penny Lane (1966年12月29日録音 / mono)
 08 Strawberry Fields Forever (1966年11月28日録音 / stereo)
 09 From Me To You (1963年3月5日録音 /stereo)
 10 Besame Mouho (1962年6月6日録音 /mono)
 11 The Fool On The Hill (1967年9月6日録音 /stereo)
 12 Paperback Writer (1966年4月14日録音 /stereo)

以上の12曲が、初出の「ウルトラ・レア・トラックス Vol.1」に収録されていたものですが、今日のCDの状況を鑑みれば、明らかに収録の曲数が少ないと思う他はありません。

しかし実は、この時には当然ながらというか、アナログ盤も同時発売された事情がありますから、これはこれで商売上の方針として認めざるを得ないでしょうし、リアルタイムでは、既に述べたように内容の衝撃的な素晴らしさから、サイケおやじも含めた大勢のファンは、充分に満足だったんですよっ!

で、肝心の演目については、「Besame Mouho」「How Do You Do It」が後に出た公式盤「アンソロジー 1」に収録されたバージョンと同じですが、音質的には、このリマスターブートの方が迫力のある仕上がりなんですねぇ~♪

ちなみに、その点は初出当時からも言われていたことで、リアルタイムで世に出たばかりの公式盤CDよりもブートの方が高音質という事実には、本当に驚かされたものです。

その意味では「If You've Got Trouble」もテイクそのものは公式盤「アンソロジー 2」に収録された音源と概ねは同一なんですが、こちらではステレオミックスそのものが異なり、極めてモノラルに近いミックスから音圧の高い仕上がりにリマスターされ、これが強烈にR&Rな印象になっています。

そして残りのトラックは、未だに公式バージョンが出ておらず、つまりは珍しくも素晴らしい「お宝」ばかりというところに、このブートの真の価値があるのです。もちろんステレオ&モノラルのミックスが異なっていることも要注意でしょう。

例えば明らかに失敗テイクの「I Saw Her Standing There」にしても、ノリの良さは公式完成テイクよりも素晴らしいほどですし、意想外に粘っこい仕上がりになっている「One After 909」や完成直前のラフな感じが結果オーライの「From Me To You」、さらに試行錯誤も好ましい「She's A Woman」や「I'm Looking Through You」で滲むスタジオでの緊張と緩和の雰囲気良さは、ファンならずとも、思わずニヤリの楽しみだと思います。

そのあたりを個人的に一番楽しめたのが、これぞライプ感覚の「Paperback Writer」で、リードボーカル&コーラスの生々しさが、ドライブする例のエレキベースにビシバシのドラムス共々、ほとんど隠れ名演ですよ。しかも部分的に妙なテープ編集のミスが散見されるという、マニア泣かせの結果オーライ♪♪~♪

しかし、これがサイケデリック期ど真ん中の曲になると、決して一筋縄ではいきません、

「Penny Lane」や「Strawberry Fields Forever」は、ほとんど出来上がっているとはいえ、モノラル&ステレオのミックスが公式バージョンとは完全に異なる部分が多々ありますし、なによりもダビングされたパートや編集作業、そしてミックスダウンそのものの迷い道が面白く聴けると思います。

ですから、ほとんどポールのピアノによる弾き語りで演じられる「The Fool On The Hill」の力強く、シンプルな味わいが愛おしいですねぇ~♪ これだから、ブートはやめられないのです。

 13 I Saw Her Standing There (take 2 / 1963年2月11日録音 / stereo)
 14 There's A Place (take 3)
 15 There's A Place (take 4)
 16 How Do You Do It (1962年9月4日録音 / mono)
 17 Leave My Kitten Alone
 18 One After 909
(take 2 / 1963年3月5日録音 / stereo)
 19 Misery (take 1)

上記の収録トラックは、今回のリマスター再発のボーナスというか、この「ウルトラ・レア・トラックス」が存在するネタばらしという側面からの援護射撃!? 「Reel #1」とジャケットにクレジットされた事から、これが流出したオリジナルソースの最初の1巻をそのまんま、今回リマスターして収めたという趣旨になっています。

ですから、「I Saw Her Standing There」や「How Do You Do It」、さらに「One After 909」がダブり収録なんですが……。

しかし「There's A Place」の2テイク、「Leave My Kitten Alone」、そして「Misery」は続篇となった同シリーズ「Vol.2」に収録され、またまた世界中のファンを歓喜驚愕させる流出バージョンですから、そのリマスター盤も入手してしまえば、これもまたダブリとなるわけですが、まあ、いいか!?▼? とりあず、その元ネタの源流を楽しむという意味では、それなりの意義があろうかと思います。

ということで、繰り返しますが、今も昔も貴重で楽しいブートです。

ちなみに今回のリマスター再発盤は既に述べたとおり、特製の箱に収納された3枚組のセット(下段掲載)がメインで、その3枚目にはオリジナルの「ウルトラ・レア・トラックス」に必ずしも使われなかった音源も入っているのが、巧みなミソかもしれません。

というのも、既に述べたように、このシリーズが大ヒットしてしまった所為により、同業他社が似たような企画のブツを相次いで世に出し、それに伴っての音源流出の更なる増加はまだしも、意図的に業者がフェイクした音源やテレビ&ラジオ出演時のソースまでもが、再利用されるという水増し商品が出回るという始末でした。

ですから元祖「ウルトラ・レア・トラックス」のシリーズにしても、実質的には「Vol.3」あたりまでが本当に価値のあるブツだと、サイケおやじは思っています。

このあたりについては追々、拙ブログで書いていく所存ですが、今回の再発リマスター盤は箱組セットの他にバラ売りもありますので、まずはここからビートルズのブートに入門されるのも素敵な出来事になろうかと思う次第です。

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