OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

グラント・グリーンの無視された傑作

2010-12-05 16:20:50 | Soul Jazz

Carryin' On / Grant Green (Blue Note)

一応、グラント・グリーンはジャズギタリストに分類されるのが一般的でしょうが、ご存じのとおり、そのスタイルはレコーディングキャリアの初期から極めてR&B色が強く、それゆえにハードバップ~ファンキーという流れが加速していた当時のモダンジャズ最前線では、一躍スタアになったのも当然が必然でした。

しかし一方、その所謂コテコテのプレイは、悩んで聴くのが常識とされていた昭和40年代までの我国のジャズ喫茶おいて、ちょいと軽んじられていたのも事実です。

というか、ジャズの王道レーベルだったブルーノートに主要録音がありながら、発表される諸作の快楽性が疎んじられていたという……。

ですからジャズ喫茶で鳴らされるグラント・グリーンのリーダー盤は、「フィーリン・ザ・スピリット」や「アイドル・モーメンツ」あたりが圧倒的に多く、それは演奏内容のシリアスな充実度と参加共演者の正統的な顔ぶれゆえの事でしょう。

このあたりの事情はジミー・スミスやルー・ドナルドソンといった人気者にも同様ではありますが、グラント・グリーンが常に標的(?)にされていたのは、単音弾き中心のギター奏法が、ちょいと聴きにはシンプル過ぎることもあろうかと思われます。

ところがギターを弾かれる皆様ならば納得されているとおり、グラント・グリーンのスタイルを模倣する事は想像を絶する難しさ! ごまかしの出来ないメリハリの効いたフレーズ構成と強靭なピッキングのコンビネーションは、あの天才名手のタル・ファーロウにも劣るものではありません。

さて、そういうグラント・グリーンですから、1960年代後半からは尚更にソウルジャズに邁進したのも充分に肯定出来る流れですし、それがジャズ喫茶で一切合財無視されるのも、当時の雰囲気を体験された皆様ならば、当たり前田のクラッカーだと思います。

例えば本日ご紹介の1枚は、まずジャケットからして到底、モダンジャズのアルバムとは思えないでしょう。

発売されたのは、おそらく1970年代初頭だと思われますから、流行が兆していたニューソウルを意識したのかもしれませんが、それは結局、正統派のジャズ愛好者よりは黒人大衆音楽ファンにアピールする商売方針がミエミエ!?

実はアルバムの裏ジャケットに記載されたデーターによれば、録音は1969年10月3日!? ということは約2年半以上のご無沙汰だったブルーノートでのセッションなんですねぇ。

しかもメンバーがグラント・グリーン(g) 以下、クラレンス・パルマー(el-p)、ウィリアム・ビヴンズ(vib)、ジミー・ルイス(el-b)、レオ・モリス(ds)、クロード・バーティ(ts)、ニール・クリーキー(el-p) という、ジャズ者には馴染みの無い名前ばかりが並んでいますから、時代は変わる!?

というよりも、聴けば納得なんですが、グループとして意志の統一とコンビネーションの良さが極めて密度の高い傑作を誕生させた結果からして、多分、このメンツは当時のグラント・グリーンのレギュラーバンドだったのかもしれませんねぇ~♪

A-1 Ease Back
 グラント・グリーンが自然体で弾き出すイントロに導かれ、ビシバシに跳ねるドラムスと蠢くベース、さらにシンプルなエレピとテナーサックスが奏でるのは、ニューオリンズファンクのミーターズが1969年に放った十八番のヒット曲ですから、このセッションではリアルタイムのカパー物!
 こういう姿勢にも、ここ一発に賭けたグラント・グリーンのヤル気が感じられるんですが、その勢いが裏切られる事の無い演奏は実際、熱いですよっ!
 イナタイ雰囲気の良さは言わずもがな、十八番の三連針飛びフレーズを完全披露するグラント・グリーンを煽るレオ・モリスのドラミングが、これまた埃っぽくて最高♪♪~♪ もちろんエレピ&エレキベースが、如何にも当時風に使われていますから、ほどよい鬱陶しさを撒き散らすクロード・バーティのテナーサックスもイヤミになっていません。

A-2 Hurt So Bad
 これまたリトル・アンソニー&インペリアルズが1965年に放ったメガヒットのインストカパーということで、まずはアレンジがオリジナルバージョンの胸キュンフィーリングを大切にしながらも、実に熱くグルーヴする演奏が最高の極みつき!
 そしてグラント・グリーンが先発するアドリブは歌心満載なんですねぇ~♪ もう、その最初のフレーズからして三日ぐらいは寝ないで考えたんじゃないかっ!? 思わずそんな風に思ってしまうほどの素晴らしさなんですが、その後も決定的な三連フレーズの乱れ打ちや原曲メロディの巧みなフェイクが積み重ねられ、筆舌に尽くし難い高揚感に満たされると思います。
 実は無謀にも、このアドリブをコピーした事のあるサイケおやじは、もちろん完璧には出来るはずもありませんでしたが、弾いていて本音で気持が良くなるんですよ♪♪~♪
 それと浮遊感いっぱいのエレピの伴奏がニクイばかりで、それゆえに力強いドラムスとベースのビートが冴えまくり、テナーサックスのセンスの良いプローを呼び込む展開は、このアルバムの中でも白眉の名演になっています。
 あぁ、何度聴いても、飽きません。

A-3 I Don't Want Nobody To Give Me Nothing
 なんと、今度はジェームス・ブラウンのカパーをやってしまうんですから、悶絶ですっ! そのオリジナルバージョンは確か1969年春にシングル発売されたJB流儀のファンクな歌と演奏なんで、サイケおやじは聴く前からワクワクしていたんですが、それは全く裏切られませんでした。
 ここでのグラント・グリーンとバンドは原曲が放っていた黒い熱気を尚更にダークなインストバージョンに変換することにより、適度なジャズっぽさとファンクなソウルを見事に両立させています。
 何時までもイキそうでイカないエレピも、たまりませんよ♪♪~♪

B-1 Upshot
 B面に入ってようやく出ました、これがグラント・グリーンのオリジナル!
 しかしイントロからのリフは完全に昭和歌謡曲ですよねぇ~♪ ほとんど西田佐知子のヒット曲に、こんなのありませんでしたか?
 まあ、それだけでウキウキさせられるサイケおやじではありますが、ここまで弾みきったリズム&ビートを演じてしまうバンドのグルーヴは強烈至極ですし、アドリブパートにしても熱血のテナーサックスを吹きまくるクロード・バーティは、なかなかの実力者だと知れるでしょう。そしてクラレンス・パルマーのエレピが、これまた日活ニューアクションのサントラ音源の如き白熱のジャズロック!
 いゃ~、本当に血が騒ぎますねぇ~~~♪
 さらにグラント・グリーンのギターがスピードの付いた単音メインのアドリブは当然ながら、濁ったコードワークの使い方も侮れず、こういうところがソウルジャズの真骨頂だと思うばかりです。

B-2 Cease The Bombing
 ここに1曲だけ参加したニール・クリーキーのオリジナルで、作者のエレピを存分に活かしたメロウな曲調と演奏には、タイトルの押しつけがましさ以上のせつせつとした心情が胸に染みる、これまた素敵な世界が堪能出来ます。
 う~ん、聴いているうちに、こんなに気持良くなって、良いんでしょうか……?
 アドリブパートでは、先発のウィリアム・ビヴンズがヴァイブラフォンで虚無的な世界を描いて秀逸ですし、繊細でメロウな歌心を意外なほどに聞かせてくれるグラント・グリーンのギターは、音色そのものも魅力だと思います。
 そして作者のエレピが饒舌に披露するスペーシーでソウルフルな味わいは、全くこの時期でしか表現出来なかったものでしょう。本音でシビれます♪♪~♪

ということで、ジャズ喫茶では完全無視の代表格だと思いますが、聴けば万人が虜になること請け合いの傑作だと思います。特にソウルジャズが大好きな皆様にはマストアイテム!

告白すればサイケおやじは昭和48(1973)年のある日、某中古レコード店の3枚千円セールで員数合わせ的にゲットしたLPだったんですが、ソウルジャズ期のグラント・グリーンの諸作の中では、最高に好きな1枚になっています。

とにかく捨て曲、ひとつも無し!

全篇、最高のソウルジャズが堪能出来る決定的な名盤!

これは断言して、絶対に後悔致しません。