昨日の続きです。残りはあと1回。明日投稿します。
まもるさんの投稿に「けやきさん」が重要なコメントをしています。僕も河村個人については、けやきさんとほぼ同様の見解を持っています。人格的にも彼を嫌いですし。特に従軍慰安婦問題での意見広告賛同者というのがず-っと気にくいませんでした。
ただね、政治って、最大の悪のためにはいくらでも合従連衡や妥協をしなけりゃならないものではないでしょうか。そう固く信じています。そうでなければ巨悪に勝てず、結果的に「負け犬の遠吠え」を繰り返すだけにしかなりません。そういう「己らの弱さ」を直視してこそ、屈辱的な妥協も前を向いて出来るものなのではないでしょうか。
まさに以上のことを、3回に分けて紹介しているこの「政治論文」が最も強く教えてくれているのではないでしょうか。
【 7、小沢秘書の逮捕・起訴は国策捜査である
では、国民の検察批判が今後、盛んになるかどうか、その可能性を検討してみよう。第一は今回の小沢秘書の逮捕劇の真相はどこにあるのかということである。
今回の小沢秘書の逮捕・起訴という検察の捜査は、政治資金規正法によるこれまでの捜査の常識を覆す”異常なもの”であることが検察OBらの発言でも明確になっている。政治資金規正法による立件は「裏献金」、すなわち献金隠しが通常であり、政治団体の寄付であろうが企業献金であろうが、政治団体からの寄付の出所が企業であるかどうかを寄付を受領する政治家が認識していたかどうか(今回の検察が主張する容疑)も含めて、政治資金収支報告書に記載のある「表献金」は立件してこなかったのである。だから、これまでの検察の立件基準からすれば、小沢への西松からの献金は問題にならなかった。立件対象献金額も3500万円と、従来の目安1億円からはほど遠い。
「表献金」まで立件すると、捜査の公平性(法の下の平等)という要請からすれば、政権側にある有力政治家(二階だけに限らない)を軒並み立件しなければならず、また、自民党の資金管理団体「国民政治協会」に流れる経団連会員企業の献金29億円(07年度)の中にある”ひも付き献金”(特定の政治家あての献金)も”迂回献金”、虚偽記載として捜査・立件しなければならないことになる。
そういうわけで、検察の物理的な捜査能力ばかりでなく、自民党全体が大混乱に陥るという政治判断などにより、「表献金」は立件しないという政治資金規正法の運用を検察はおこなってきたのである。この従来の運用を東京地検特捜部はみずから踏み破っている。
また、立件の時期が問題で、衆議院選間近で政権交代が現実味を帯びてきている時期に、政治的影響があまりにも大きくなることが確実に予想できる時期に行っている。この時期の選択も検察の捜査の政治的中立性という社会的要請を踏み破っている。
検察の三重のルール破り、すなわち、政治資金規正法による立件・運用ルール、捜査の公平性というルール、政治的中立性というルールを検察みずからが踏み破っているという”異常”捜査が今回の特徴なのであって、この異常捜査を政権交代を妨害する政治的ねらいをもった”国策捜査”と言わずに一体何と呼ぶのか。
東京地検特捜部の「青年将校化」というような議論も奇をてらった”木を見て森を見ない”話であって、国策捜査説の一変種にすぎない。
8、今回の国策捜査はわかりやすい
今回の小沢秘書の逮捕劇の真相は”国策捜査”ということにある。したがって、この逮捕劇は麻生政権が仕組んだ政治犯罪とみるべきなのである。検察もまた国家権力機構の一部であり、政権交代という現実性を前に、政権からの独立という検察の正義の拠り所を放棄したものなのである。
検察が国策捜査で野党第一党の党首の政治生命を絶ち、政権交代を妨害できるということになると議会制民主主義は成り立たず、腐敗した万年与党が出現することになる。かくも重大な民主主義の危機なのであるから、国策捜査批判は国民の間で盛んになる有力な根拠をもっている。
しかも、検察の異常捜査ぶりは、説明すれば国民誰もが理解できるわかりやすさがある。その意味では政権交代派が効果的な工夫を凝らす”知恵”と熱意さえあれば、政権の危機を促進する材料に転換することも十分可能である。
9、政権交代論はすでに国民の多数派である
検察批判を盛んにできるかどうかを測る第二のものさしは、国民の間にある政権交代論の強さの程度である。「共同通信」の2月の世論調査では55.3%が政権交代に賛成であったことをみると、この現象は戦後政治史の一大画期とみるべきものである。すでに述べたが、この数字は自・公支持者以外の8割の国民の声と読み替えるべきなのだ。
国民の政治意識の内部では、すでに政権交代が行われており半世紀にわたる自民党政治の終焉が生じているからである。政権交代派は自信を持っていい。それほどの事態であるからこそ、政権側の常道ともいうべき禁じ手=国策捜査という反動的暴挙も誘発されたのである。
10、政権交代論の経済的背景(1)
この55.3%の政権交代支持率の経済的背景をさぐると次のようになる。
①、バブル崩壊後の1994年以降の低金利政策で失われた庶民の預貯金の利子の損失197兆円(1993年利子率基準、福井日銀総裁(当時)の参議院・財政金融委員会発言、2007年3月22日)、この損失分のほとんどが借り入れ主体となる企業の利子負担の軽減分となる。
②、1989年以来の消費税総額が213兆円、法人3税の減税総額182兆円(ともに「赤旗」2009年2月15日付)となっている。
③、小泉政権成立以降の2002年から2007年までの定額減税の廃止等による庶民増税額約50兆円(「赤旗」2009年2月20日付)となっている。
④、厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」(平成18年)によれば、一世帯平均の年間所得金額は1996年の661万円から2005年には563万円と約100万円の減収となっている。減少率は実に14.8%になる。同「毎月勤労統計調査」では、従業員5人以上の事業所の賃金は2001年の26万3882円から07年の24万9755円となっており、減少率5.4%である。正規労働者層でも賃金の減少が進んでいる。
他方で、労働生産性については、財団法人・日本生産性本部の調査(「労働生産性の国際比較」2007年版)では、実質労働生産性の伸び率が2001年~2005年平均で1.8%と先進7カ国中の第2位になっている。この間、仕事の能率は上がったが賃金は増えておらず、労働分配率も下がり続けていることになる。
11、政権交代論の経済的背景(2)
⑤、国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、給与所得が年間200万円以下が1032万人(2007年度)、総務省の労働力調査(2008年10~12月期)をみると「非正規労働者」数が1796万人で全労働者に占める割合は34.6%となっている。
非正規労働者の人数と割合をここ20年の期間で見ると、1990年の817万人(非正規)/3452万人(正規)=19.1%、1995年の1001万人/3779万人=20.9%、2000年の1273万人/3630万人=25.9%、2005年の1591万人/3333万人=32.3%、2008年の1796万人/3390万人=34.6%となっている。
1990年頃までは20%前後で安定して非正規労働者の割合がバブル崩壊後に増え始め、2000年以降に急増し10年足らずで10%近くも増加している。④で述べた一世帯平均の所得が14.6%も落ち込んでいる理由のひとつは、世帯に低賃金の非正規労働者を抱える世帯比率が増えているからである。
⑥、ゼロ金利─円安─輸入品価格上昇という経済関係で庶民が失った所得は膨大であり、逆に円安で大企業の輸出品は低価格に抑えられて輸出競争力が増すことになった。輸出主導型の経済構造がいつまでも変わらないどころか、逆に強化されて世界恐慌という事態が波及する中で、先進国中、日本のGDPは最も落ち込みが激しくなっている。
長期にわたるゼロ金利政策は、海外のヘッジ・ファンドなどが利用するところとなり、いわゆる「キャリートレード」として日本の国富がアメリカに流れることになり、ハイリスク・ハイリターンの投資に回されサブプライム・ローンや株式市場、原油相場等に投じられ、アメリカの株バブルや住宅バブルの大きな要因となったことはよく知られている。今ではそれらの崩壊によって金融恐慌、世界恐慌として日本にも逆流し、自動車産業の急減産が始まり、すそ野にある中小部品工業は仕事を失い「派遣切り」が横行、失業率の増加、新卒採用の抑制と、不況に突入する事態になっている。
12、政権交代は今でも実現可能である
これらの経済指標をみると、バブル期の経済への打撃から回復するために、自民党政府はGDP(約500兆円)に匹敵するほどの巨費を庶民の懐からむしり取り、なおかつ非正規という雇用形態を急増させて賃金を抑え、そうしてその巨費を大企業の復活政策に投入したのである。
この極端な大企業偏重の金融・財政・経済政策のために、庶民生活は全体として苦境に陥りつつあることが政権交代論が多数派となった経済的背景である。それにくわえて、医療制度や介護制度などの社会福祉制度の財源カットで制度を荒廃させ、社会のセーフティ・ネットを破壊したこと、また、年金記録の乱脈管理や政府要人のスキャンダル等、政府と官僚の、総じて国家機構全体の腐敗が国民の目にさらされたことが政権交代論をさらに押し上げているのである。
今では大企業と国家機構の周辺で生活する者以外は、皆、自民党政治の被害者なのであって、その被害はあまねく日本全土に広がっている。かくて、政権交代論は小沢秘書の逮捕・起訴程度の”でっち上げ”では覆し得ないほどの堅固さを持っていると見て良いであろう。
小沢秘書の逮捕程度で政権と官僚の巨悪事を帳消しにすることはできない。1対100の取引をする馬鹿はjcpの不破や志位ら執行部以外にはいないであろう。】
(明日の最終回に続く)