新聞の片隅に載ったニュースから(番外編Ⅳ)
金平茂紀さんのテレビ評 映画「アルマジロ」(2013. 1.12毎日新聞夕刊)
多くの日本人にとっては、そんなことは過去の話でもう関係ないよ、と思われているかもしれないが、アフガニスタンやイラクでの戦闘はまだ終っていない。アフガニスタン駐留の国際治安支援部隊(ISAF)を構成するデンマーク軍に従軍取材して制作されたドキュメンタリー映画「アルマジロ」をみた。近く劇場公開される。
従軍取材という形でこれほどまでに戦争の赤裸々な実相に迫ったドキュメンタリーは見たことがない。敵のタリバン兵を圧倒的な武器で掃討していく戦闘作戦に、ヤヌス・メッツ監督らは最前線の兵士と同じ視線でのぞむためハンディーカメラをもって、まさに兵士のようにshoot=シュート(撮影と射撃は英語では同語である)した。密着していた5人の兵士のヘルメットにもカメラが装着されていた。その臨場感は半端ではない。また非戦闘時に基地内でポルノ映画を見て興奮し、戦争ゲームに熱中する若い兵士たちの日常が淡々と撮られている。デンマークではごく普通の「善良な」市民であったようにみえる。だがその彼らは戦場ではいわば「戦争中毒」に陥っていく。(中略)
実はこのドキュメンタリー、欧米では、フランス、ドイツ、イギリスなど各国のテレビで放送され、特に当事国デンマークにおいては国民的大論争が巻き起こったのだ。わが国デンマークはこの戦争に本当に関与すべきなのかどうか、と。
アメリカではすぐれたテレビ番組におくられる12年度のエミー賞のドキュメンタリー編集部門賞を獲得した。テレビでこのような作品をきちんと紹介できるのに。と思っていたら、何とこの作品、NHK・BS「世界のドキュメンタリー」で11年10月に2夜にわたってすでに放送されていたのだという。ぜひとも地上波でもアンコール放送してほしいものだ。
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今回は毎週末の毎日新聞夕刊に連載されている「週刊テレビ評」から金平茂紀さんのずばり!直言を紹介します。筆者の金平茂紀さんはTBSの土曜日夕方の「報道特集」のキャスターで、現在TBSの執行役員でもあります。
わが国でも、ベトナム戦争当時、日本テレビが「ベトナム海兵大隊戦記」というドキュメンタリーを制作し(制作者は牛島純一氏)、3回に分けて放送する予定がありました。第1回の作品にベトナム解放戦線の兵士と疑った住民の首を切り取り、それをぶら下げて歩く米兵の姿など、戦争の残虐な場面が記録されていたため、当時の橋本官房長官から日本テレビに電話があり、予定されていた第1回の再放送と第2回、第3回の放送が中止されるという事件がありましたが、金平さんは「僕らはこの映画を見終わって、戦場という場において、人間がいかに残酷で非人間的な行為を平気で行えてしまうのかを目の前に突きつけられる。また、軍隊の本質として、自らの残虐行為を隠蔽しようとするかも知ってしまう。」「僕らの国では、国防軍創設とか集団的自衛権行使容認をめざすとか勇ましいことを言い散らす人々が政権についたけれど、そういう人たちにぜひともみてほしい作品である。がんばれNHK。」と結んでいました。
大西 五郎
金平茂紀さんのテレビ評 映画「アルマジロ」(2013. 1.12毎日新聞夕刊)
多くの日本人にとっては、そんなことは過去の話でもう関係ないよ、と思われているかもしれないが、アフガニスタンやイラクでの戦闘はまだ終っていない。アフガニスタン駐留の国際治安支援部隊(ISAF)を構成するデンマーク軍に従軍取材して制作されたドキュメンタリー映画「アルマジロ」をみた。近く劇場公開される。
従軍取材という形でこれほどまでに戦争の赤裸々な実相に迫ったドキュメンタリーは見たことがない。敵のタリバン兵を圧倒的な武器で掃討していく戦闘作戦に、ヤヌス・メッツ監督らは最前線の兵士と同じ視線でのぞむためハンディーカメラをもって、まさに兵士のようにshoot=シュート(撮影と射撃は英語では同語である)した。密着していた5人の兵士のヘルメットにもカメラが装着されていた。その臨場感は半端ではない。また非戦闘時に基地内でポルノ映画を見て興奮し、戦争ゲームに熱中する若い兵士たちの日常が淡々と撮られている。デンマークではごく普通の「善良な」市民であったようにみえる。だがその彼らは戦場ではいわば「戦争中毒」に陥っていく。(中略)
実はこのドキュメンタリー、欧米では、フランス、ドイツ、イギリスなど各国のテレビで放送され、特に当事国デンマークにおいては国民的大論争が巻き起こったのだ。わが国デンマークはこの戦争に本当に関与すべきなのかどうか、と。
アメリカではすぐれたテレビ番組におくられる12年度のエミー賞のドキュメンタリー編集部門賞を獲得した。テレビでこのような作品をきちんと紹介できるのに。と思っていたら、何とこの作品、NHK・BS「世界のドキュメンタリー」で11年10月に2夜にわたってすでに放送されていたのだという。ぜひとも地上波でもアンコール放送してほしいものだ。
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今回は毎週末の毎日新聞夕刊に連載されている「週刊テレビ評」から金平茂紀さんのずばり!直言を紹介します。筆者の金平茂紀さんはTBSの土曜日夕方の「報道特集」のキャスターで、現在TBSの執行役員でもあります。
わが国でも、ベトナム戦争当時、日本テレビが「ベトナム海兵大隊戦記」というドキュメンタリーを制作し(制作者は牛島純一氏)、3回に分けて放送する予定がありました。第1回の作品にベトナム解放戦線の兵士と疑った住民の首を切り取り、それをぶら下げて歩く米兵の姿など、戦争の残虐な場面が記録されていたため、当時の橋本官房長官から日本テレビに電話があり、予定されていた第1回の再放送と第2回、第3回の放送が中止されるという事件がありましたが、金平さんは「僕らはこの映画を見終わって、戦場という場において、人間がいかに残酷で非人間的な行為を平気で行えてしまうのかを目の前に突きつけられる。また、軍隊の本質として、自らの残虐行為を隠蔽しようとするかも知ってしまう。」「僕らの国では、国防軍創設とか集団的自衛権行使容認をめざすとか勇ましいことを言い散らす人々が政権についたけれど、そういう人たちにぜひともみてほしい作品である。がんばれNHK。」と結んでいました。
大西 五郎