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再び、アベノミックス  文科系

2013年01月28日 11時16分55秒 | 国内政治・経済・社会問題
 利子率を低くし社会に金が回るようにして、毎年適度な国家財政支出をも図れば、有効需要が生まれて景気は上向き、失業者は無くなると、それがケインズ理論の骨子だった。アベノミックスは、これと同じことを今改めて大々的にやろうとしているにすぎない。消費税贈で収入が増えることを当てにして大きく借金国家財政出動を図りつつ、さらには日本銀行を強権的に動かしてまで。この20年近く自民党政権が利子もほとんど無いほどに金回りを図り、1000兆円もの国家累積赤字を重ねて国家財政出動を図っても効果がなかった政策をさらに強化して、劇薬にまで高めようという意気込みのようだ。だが、この政策は疑似薬同様であって、短期の慰めに終わるだろうことは、以下の理由から明らかである。

 第一に、1980年ごろのスタグフレーション現象によって、ケインズ主義不況脱却手段はいったん歴史から消え去った理論だったはずだ。当時の世界で緩やかなインフレ下でも、世界にずっと不況が続いたからである。そのころまでに企業の利益率が世界的にどんどん落ちていたということだろう。そこで世界中で行われたのがこんなことだった。国家機能、公的機能をできるだけ民間資本に明け渡すこと。資本に安い労働力を求めて世界をさまよわせること。資金を物作りではなくデリバティブや為替操作に投入する金融業務の方が遙かに儲かるという、そういうやり方。などなどである。日本もこの全てをやってきたが、90年代の日本住宅バブル崩壊以降には特に20年近く名目成長率増さえなかった唯一の先進国と言われている。
 第二に、ケインズの時代はもちろん、日本の90年代と比べてさえ、今の日本、世界にはこんな重大弱点があると思う。中産階級が大量に没落してきたのである。ここを正さずして、世界の有効需要や景気などが上向くわけがないと考える。それどころか、ケインズについて、こういう読み直しをする学者なども現れている。「ケインズが現代世界を観たらこういうだろう。失業者をなくすためにいろいろな方策を考えたのであって、失業者が無数にいる景気などに何の意味があるか」
 それどころか第三に、事態はむしろ逆であって、こういう悪循環があったと言ってよいはずだ。物作りに長期投資して職場を増やしていくよりも、短期金融投資で金を転がすほうがずっと儲かるから、社会の金がそちらに回ったと。26日のNHKBS1「ウイズダム 激論」で得た数字だが、世界の年GDPが63兆ドルであるのに対して、世界のデリバティブ売買は601兆、為替売買は955兆ドルということであった(なお、NHKのこの番組自身は実に下らない物であった。格差、自由貿易、金融規制などを扱っていたのだが、その表層だけに触れて、核心を避けているようにさえ感じたものである)。いくら短期資金移動の繰り返しと言っても、凄すぎる額と分かる。このように短期投資が増えるほど、実物経済や中産階級は凋落するという理屈だろう。銀行が昔のように物への長期投資中心ならば、物作り、職場作りに寄り添って、そことの共存共栄を必死に模索していくはずだ。対するに今は逆に、金融が物作りを破壊してきたとさえ言えるのではないか。ギリシャ、スペインなどはそういうことだろう。社会資本に回す金さえ、その何十年分かを奪い取られてしまったとも言える。

 さしあたり以上三つの理由によって、アベノミックスが今時効力を有するわけがないと言いたい。今は、景気をよくするというよりも、正確には「失業者をなくし、中産階級を増やす」と世界が唱えるべきなのだ。ただしこの道が金転がしに抗する道である以上相手が世界金融資本になるのだから、これへの規制策などは国際的にしか進まないだろう。世界金融資本はアメリカなどを通じてこういう国連の動きを抑えてきたのだから。
コメント (5)
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