これは、僕らの同人誌の月刊冊子249号(12年8月号)に載せた作品。本日直前に掲載したものと合わせてお読みいただければ、面白いと思われる人にはさらに何倍も面白くなるだろうという狙いです。
一日に拙作二つというのはこれからは原則的に避けるつもりですが、「合わせ読み」ということで今回はご容赦を。ただ、午前に他のエントリーがないと、つい出したくなります。ここは昔から、一日3~4本なんてざらでしたから。
【 日本スポーツ史に金字塔
香川真司がイングランド・マンチェスター・ユナイテッドにおけるその初プレーを、開幕戦先発フル出場で成し遂げた。しかも本人の希望してやまなかったトップ下を務め終えるという形で。そのため、わざわざトップ下ポストを設けるよう、このチーム通常の陣形を変えさせてまで。最初のメンバー交代が左MFに代えてファン・ペルシーを入れたのだが、そこにワントップ選手ウエイン・ルーニーを下げてきて、そのトップにファン・ペルシー投入ということだった。こういう選手交代がまた、香川を中心に回されたゲームだったと言ってよい。イングランドリーグを代表する二人の攻撃型選手が香川と合うかどうかを試験される脇役になったわけだ。これは、世界が毎日見張っている五大フットボールクラブに間違いなく入るチームでの出来事だったから、世界のビッグニュースになった。
日本フットボール史で辛うじてこれに匹敵するかというのは中田英寿のローマ優勝だろうが、これよりもはるかに大きなニュースであることはまちがいない。野球史上では「ヤンキース新四番・松井」とかがあるが、フットボールと比べた場合に野球の世界への目は問題にならないほど小さい。ヨーロッパや南米、アフリカでも香川のことは大騒ぎになるだろうが、ヤンキース新四番などはニュースにすらならなかったはずだ。世界の競技人口もチーム数も、フットボールは野球の十倍ではとうてい済まないと思う。
表題『日本スポーツ史に金字塔』についてはいろんな見方もあろうが、こう題した理由は以上のとおり。ただしこの表題は、今この瞬間においてだけのこと。真に歴史的出来事だったと後世ふり返られるかどうかは香川のここ数ヶ月のプレーにかかっている。
そして第二戦八月二十五日には前線四人の先発のうち第一戦と同じ選手は香川だけになった。攻撃の起点・トップ下に香川を置いておいて、全く新たな三選手と、相性をいろいろと試してみたということのようだ。今年の開幕から二ゲーム続きで、計六人の世界に知られた名選手たちが、新参香川との相性を試験された観なのである。
さて、監督は、今年七一歳にして、このチーム二六年目の大監督ファーガソン。彼はこうして、己の晩年最後のチーム改編を、どうも香川真司に賭けているみたいだ。僕にはそうとしか見えない。この開幕二戦に加えて、それまでの練習マッチ六ゲームなどをふり返るとなおさらのことだ。ここまでの香川中心がもし外れたら、今シーズンが、スタートで取り返しが付かなくなる恐れもあるのだから。それとも、この大改造が当たって、マンチェスターユナイテッドが〇八年のようにもう一度世界最強の名を馳せることになると確信できるのだろうか。ファーガソンがそれを狙っていることは確かだろう。マンチェスター・ユナイテッドのスタイルを時代に合わせて変えようとしているのだと思う。
スペイン人がイングランドに来ると、おおむね大活躍できている。イングランドのパスサッカーが下手だということだろう。去年のイングランド優勝監督はイタリア人だが、彼らはイングランドをこう評する。身体機能やスピード、そしてフェアな敢闘精神などは豊かだが、戦術やポジション取りがまだまだ、特に守備の文化が貧弱だと。香川真司がこういうイングランド、チームの弱点を変えてくれる選手だと、ファーガソンは見たのであろう。なんせ、同じような弱点を抱えていたドイツを世界第二位の国へと押し上げたのが、香川がこの二年間輝き続けたドルトムントなのだから。ドルトムントは、これも世界五大チームに入るかというドイツの老舗・バイエルン・ミュンヘンを押しのけてドイツ二連覇をとげた最新型・最新鋭チームなのである。全員攻撃全員守備のパスサッカーから、スピードに乗った集団が流れるようにして得点していくチームである。
結論。名将ファギーは、最晩年にして最後のチーム大改造目指して、香川真司と心中する覚悟なのではないか。あの大ファギーが香川にこれほどに惚れ抜いたって、途方もないことだと、サッカーファンならだれでも思うだろう。
ドルトムントの名手、ある同僚が香川を評した言葉は広く知られている。「まるで天使のようにプレーする」。なんとも上手く表したものだ。おおむね飛ぶように速く、直面の敵を出し抜きたい時などはボールと戯れるようにふわりひらりふんわり、跳びはねるがごとくに。そんなやりかたで、一七二センチ六三キロという童顔優男が、一八五のドイツ大男たちに触れられもせず飛び回る様はまさに「天使」。スポーツの醍醐味のひとつだろう。が、サッカーでのこんなプレーは文字通り至難の技。周囲をよーく見ていて、ボールを上手く受け、ボールを出し、その直前には次に行くべき場を判断しておかねばならぬ。何人もの敵味方の中で全速力で動きながら、全て瞬きの間、一瞬のプレーだ。だからこそ、監督ファーガソンが香川を褒めるこんな言葉も、流石大監督と見えたものだ。
『いいプレーヤーだ。いつも動いていて効率的なサッカーをする。ボールも無駄にしない』『彼は頭が良く、試合を読むことができ、ボール扱いが巧みだ。そして彼は素早く、ボールをキープすることもできる』 】
一日に拙作二つというのはこれからは原則的に避けるつもりですが、「合わせ読み」ということで今回はご容赦を。ただ、午前に他のエントリーがないと、つい出したくなります。ここは昔から、一日3~4本なんてざらでしたから。
【 日本スポーツ史に金字塔
香川真司がイングランド・マンチェスター・ユナイテッドにおけるその初プレーを、開幕戦先発フル出場で成し遂げた。しかも本人の希望してやまなかったトップ下を務め終えるという形で。そのため、わざわざトップ下ポストを設けるよう、このチーム通常の陣形を変えさせてまで。最初のメンバー交代が左MFに代えてファン・ペルシーを入れたのだが、そこにワントップ選手ウエイン・ルーニーを下げてきて、そのトップにファン・ペルシー投入ということだった。こういう選手交代がまた、香川を中心に回されたゲームだったと言ってよい。イングランドリーグを代表する二人の攻撃型選手が香川と合うかどうかを試験される脇役になったわけだ。これは、世界が毎日見張っている五大フットボールクラブに間違いなく入るチームでの出来事だったから、世界のビッグニュースになった。
日本フットボール史で辛うじてこれに匹敵するかというのは中田英寿のローマ優勝だろうが、これよりもはるかに大きなニュースであることはまちがいない。野球史上では「ヤンキース新四番・松井」とかがあるが、フットボールと比べた場合に野球の世界への目は問題にならないほど小さい。ヨーロッパや南米、アフリカでも香川のことは大騒ぎになるだろうが、ヤンキース新四番などはニュースにすらならなかったはずだ。世界の競技人口もチーム数も、フットボールは野球の十倍ではとうてい済まないと思う。
表題『日本スポーツ史に金字塔』についてはいろんな見方もあろうが、こう題した理由は以上のとおり。ただしこの表題は、今この瞬間においてだけのこと。真に歴史的出来事だったと後世ふり返られるかどうかは香川のここ数ヶ月のプレーにかかっている。
そして第二戦八月二十五日には前線四人の先発のうち第一戦と同じ選手は香川だけになった。攻撃の起点・トップ下に香川を置いておいて、全く新たな三選手と、相性をいろいろと試してみたということのようだ。今年の開幕から二ゲーム続きで、計六人の世界に知られた名選手たちが、新参香川との相性を試験された観なのである。
さて、監督は、今年七一歳にして、このチーム二六年目の大監督ファーガソン。彼はこうして、己の晩年最後のチーム改編を、どうも香川真司に賭けているみたいだ。僕にはそうとしか見えない。この開幕二戦に加えて、それまでの練習マッチ六ゲームなどをふり返るとなおさらのことだ。ここまでの香川中心がもし外れたら、今シーズンが、スタートで取り返しが付かなくなる恐れもあるのだから。それとも、この大改造が当たって、マンチェスターユナイテッドが〇八年のようにもう一度世界最強の名を馳せることになると確信できるのだろうか。ファーガソンがそれを狙っていることは確かだろう。マンチェスター・ユナイテッドのスタイルを時代に合わせて変えようとしているのだと思う。
スペイン人がイングランドに来ると、おおむね大活躍できている。イングランドのパスサッカーが下手だということだろう。去年のイングランド優勝監督はイタリア人だが、彼らはイングランドをこう評する。身体機能やスピード、そしてフェアな敢闘精神などは豊かだが、戦術やポジション取りがまだまだ、特に守備の文化が貧弱だと。香川真司がこういうイングランド、チームの弱点を変えてくれる選手だと、ファーガソンは見たのであろう。なんせ、同じような弱点を抱えていたドイツを世界第二位の国へと押し上げたのが、香川がこの二年間輝き続けたドルトムントなのだから。ドルトムントは、これも世界五大チームに入るかというドイツの老舗・バイエルン・ミュンヘンを押しのけてドイツ二連覇をとげた最新型・最新鋭チームなのである。全員攻撃全員守備のパスサッカーから、スピードに乗った集団が流れるようにして得点していくチームである。
結論。名将ファギーは、最晩年にして最後のチーム大改造目指して、香川真司と心中する覚悟なのではないか。あの大ファギーが香川にこれほどに惚れ抜いたって、途方もないことだと、サッカーファンならだれでも思うだろう。
ドルトムントの名手、ある同僚が香川を評した言葉は広く知られている。「まるで天使のようにプレーする」。なんとも上手く表したものだ。おおむね飛ぶように速く、直面の敵を出し抜きたい時などはボールと戯れるようにふわりひらりふんわり、跳びはねるがごとくに。そんなやりかたで、一七二センチ六三キロという童顔優男が、一八五のドイツ大男たちに触れられもせず飛び回る様はまさに「天使」。スポーツの醍醐味のひとつだろう。が、サッカーでのこんなプレーは文字通り至難の技。周囲をよーく見ていて、ボールを上手く受け、ボールを出し、その直前には次に行くべき場を判断しておかねばならぬ。何人もの敵味方の中で全速力で動きながら、全て瞬きの間、一瞬のプレーだ。だからこそ、監督ファーガソンが香川を褒めるこんな言葉も、流石大監督と見えたものだ。
『いいプレーヤーだ。いつも動いていて効率的なサッカーをする。ボールも無駄にしない』『彼は頭が良く、試合を読むことができ、ボール扱いが巧みだ。そして彼は素早く、ボールをキープすることもできる』 】