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随筆 日本スポーツ史に金字塔   文科系

2013年02月02日 12時54分23秒 | 文芸作品
 これは、僕らの同人誌の月刊冊子249号(12年8月号)に載せた作品。本日直前に掲載したものと合わせてお読みいただければ、面白いと思われる人にはさらに何倍も面白くなるだろうという狙いです。
 一日に拙作二つというのはこれからは原則的に避けるつもりですが、「合わせ読み」ということで今回はご容赦を。ただ、午前に他のエントリーがないと、つい出したくなります。ここは昔から、一日3~4本なんてざらでしたから。

【 日本スポーツ史に金字塔

 香川真司がイングランド・マンチェスター・ユナイテッドにおけるその初プレーを、開幕戦先発フル出場で成し遂げた。しかも本人の希望してやまなかったトップ下を務め終えるという形で。そのため、わざわざトップ下ポストを設けるよう、このチーム通常の陣形を変えさせてまで。最初のメンバー交代が左MFに代えてファン・ペルシーを入れたのだが、そこにワントップ選手ウエイン・ルーニーを下げてきて、そのトップにファン・ペルシー投入ということだった。こういう選手交代がまた、香川を中心に回されたゲームだったと言ってよい。イングランドリーグを代表する二人の攻撃型選手が香川と合うかどうかを試験される脇役になったわけだ。これは、世界が毎日見張っている五大フットボールクラブに間違いなく入るチームでの出来事だったから、世界のビッグニュースになった。
 日本フットボール史で辛うじてこれに匹敵するかというのは中田英寿のローマ優勝だろうが、これよりもはるかに大きなニュースであることはまちがいない。野球史上では「ヤンキース新四番・松井」とかがあるが、フットボールと比べた場合に野球の世界への目は問題にならないほど小さい。ヨーロッパや南米、アフリカでも香川のことは大騒ぎになるだろうが、ヤンキース新四番などはニュースにすらならなかったはずだ。世界の競技人口もチーム数も、フットボールは野球の十倍ではとうてい済まないと思う。
 表題『日本スポーツ史に金字塔』についてはいろんな見方もあろうが、こう題した理由は以上のとおり。ただしこの表題は、今この瞬間においてだけのこと。真に歴史的出来事だったと後世ふり返られるかどうかは香川のここ数ヶ月のプレーにかかっている。
 そして第二戦八月二十五日には前線四人の先発のうち第一戦と同じ選手は香川だけになった。攻撃の起点・トップ下に香川を置いておいて、全く新たな三選手と、相性をいろいろと試してみたということのようだ。今年の開幕から二ゲーム続きで、計六人の世界に知られた名選手たちが、新参香川との相性を試験された観なのである。

 さて、監督は、今年七一歳にして、このチーム二六年目の大監督ファーガソン。彼はこうして、己の晩年最後のチーム改編を、どうも香川真司に賭けているみたいだ。僕にはそうとしか見えない。この開幕二戦に加えて、それまでの練習マッチ六ゲームなどをふり返るとなおさらのことだ。ここまでの香川中心がもし外れたら、今シーズンが、スタートで取り返しが付かなくなる恐れもあるのだから。それとも、この大改造が当たって、マンチェスターユナイテッドが〇八年のようにもう一度世界最強の名を馳せることになると確信できるのだろうか。ファーガソンがそれを狙っていることは確かだろう。マンチェスター・ユナイテッドのスタイルを時代に合わせて変えようとしているのだと思う。
 スペイン人がイングランドに来ると、おおむね大活躍できている。イングランドのパスサッカーが下手だということだろう。去年のイングランド優勝監督はイタリア人だが、彼らはイングランドをこう評する。身体機能やスピード、そしてフェアな敢闘精神などは豊かだが、戦術やポジション取りがまだまだ、特に守備の文化が貧弱だと。香川真司がこういうイングランド、チームの弱点を変えてくれる選手だと、ファーガソンは見たのであろう。なんせ、同じような弱点を抱えていたドイツを世界第二位の国へと押し上げたのが、香川がこの二年間輝き続けたドルトムントなのだから。ドルトムントは、これも世界五大チームに入るかというドイツの老舗・バイエルン・ミュンヘンを押しのけてドイツ二連覇をとげた最新型・最新鋭チームなのである。全員攻撃全員守備のパスサッカーから、スピードに乗った集団が流れるようにして得点していくチームである。

 結論。名将ファギーは、最晩年にして最後のチーム大改造目指して、香川真司と心中する覚悟なのではないか。あの大ファギーが香川にこれほどに惚れ抜いたって、途方もないことだと、サッカーファンならだれでも思うだろう。 
 ドルトムントの名手、ある同僚が香川を評した言葉は広く知られている。「まるで天使のようにプレーする」。なんとも上手く表したものだ。おおむね飛ぶように速く、直面の敵を出し抜きたい時などはボールと戯れるようにふわりひらりふんわり、跳びはねるがごとくに。そんなやりかたで、一七二センチ六三キロという童顔優男が、一八五のドイツ大男たちに触れられもせず飛び回る様はまさに「天使」。スポーツの醍醐味のひとつだろう。が、サッカーでのこんなプレーは文字通り至難の技。周囲をよーく見ていて、ボールを上手く受け、ボールを出し、その直前には次に行くべき場を判断しておかねばならぬ。何人もの敵味方の中で全速力で動きながら、全て瞬きの間、一瞬のプレーだ。だからこそ、監督ファーガソンが香川を褒めるこんな言葉も、流石大監督と見えたものだ。
『いいプレーヤーだ。いつも動いていて効率的なサッカーをする。ボールも無駄にしない』『彼は頭が良く、試合を読むことができ、ボール扱いが巧みだ。そして彼は素早く、ボールをキープすることもできる』 】
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ザックジャパン(69) 香川真司、チームを新しい次元へ!(2) 文科系

2013年02月02日 03時33分47秒 | スポーツ
 昨日は久しぶりに、アクセスは300人を、閲覧も1500回を超えたので、気をよくして続きを書く。

 中日新聞記事から昨日の話題をとった香川のゲーム自身を、今夕観た。これらの優れた記事にも匂っていたとおりで、確かにマンチェスターユナイテッドに香川が入ってから初の出来だと観た。監督ファーガソンの新構想の中で初めてと言って良いほどに香川が生きて、踊っていた。

 まず、4-4-2と言える布陣で、メンバーはこうだ。ファンペルシーと、少し下目にルーニー。左右サイドに香川とウェルベック。ボランチと言うよりもセンタープレイヤーという感じで、キャリックとアンデルソン。センタープレイヤーというのは、前と後ろを繋ぐという役割に、攻撃性を加味するという感じだろう。特に走力と、シュート力なども要求される。サイドバックは左はエブラだが、本日の右はフィル・ジョーンズという布陣だった。得点経過は、こう。2分に敵1点、7分に流れの中から香川のスルーパスにルーニーが得点して追いつき、26分には敵ゴール前で右ー左ー右と揺さぶってまたもルーニーの得点。2対1の勝利だった。ここで香川はと言えば、1得点目をアシストし、後半の後半に交代というもの。

 さて、香川は誰とどう連係できたのか。誰よりも、ルーニーと、頻繁かつ見事に使い使われていた。何よりもまず、すぐに同点に追いついた1得点目が、美しいものだった。敵ゴール前で香川が、自分にボールが届く直前にルーニーが全力疾走で右からゴール正面に抜け出しつつあるのを認めていて、3人の敵DFに囲まれるようにして走っているルーニーに、意外にも浮き球のショートパス。二人とも疾走しながらの、すべてがなんとぴったりあった技どうしだったことか!今期ファーガソンの理想とする得点そのものだ。また、香川加入直後にル-ニーが発したこんな観察、感想を想い出したものだ。
「この香川の加入、スタイルって、これで僕の得点もかなり増えそうだ!」

 なお、この時の敵3ディフェンダーで香川とルーニーとのラインを切っていたのは、細かい足の技術もある吉田麻也だった。だからスルーパスではなく、彼の肩越しとも言える浮き球パスだったのだろう。小さくジャンプした吉田がヘッドで逃れようとしたが、空しかったということだ。なお、このゲームの吉田も出色の出来だったと、ここで付け加えておきたい。吉田のチームもまた、若い彼の成長と平行するように日々強くなっている。これはイングランドで今評判の噂である。その吉田の、ゲーム後も汗をしたたらせながらの第一声が、こうだったかな。
「とにかく疲れた! 香川があの中で毎日練習してるって、本当に凄いことだよ」

 ルーニーとの阿吽の呼吸は、この得点前後などにも何回も観られた。4分には、香川の抜け出しにルーニーのパス。これも得点寸前、入るシュート寸前という際どいものだった。10分には、ファンペルシーからルーニーを経て、香川へ。そのシュートが辛うじて左ポスト内側に弾かれている。30分には、ルーニーから香川、ファンペルシーと繋がって、ファンペルシーのきわどいシュート。マンチェスターのシュートのほとんどに香川が絡んでいたと言っても良いようなゲームだった。因みに、選手の出来を現す「新聞得点」において、2得点したルーニーと同評価が香川に与えられていたのがその証拠である。攻撃的選手では得点ばかりを評価しているような日本のサッカー雑誌などでは、あり得ないことだと読んだものだ。

 最後になるが、ダニー・ウェルベックのことにちょっと触れる。本日前半は右サイド、後半には香川と左右を入れ替わった攻撃手なのだが、香川と同じように使い続けられてはいても、彼とは対照的な選手である。速さを生かした強引なドリブルやシュートが特徴。敵に当たられてもびくともしない頑丈な体! パスによるチーム作りを狙っているチーム新構想で監督が彼に何を期待しているのかなと考えると、構想の他の一端も見えてくるような気がするのである。最近は確かに変わってきた。最初はまず、見違えるように守備もするようになった。そのために前後にも走り回るようになったから、走力も十分なのだろう。そして最近はようやく、強引なドリブル突破を減らして、パスも出すようになった。同じような有望株クレバリーやアンデルソンには、パスも、良いパスのための広く正確な視野もまだまだ劣るのだろう。これが、今後注目したい香川の若手相棒候補3選手なのである。
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