新聞の片隅に載ったニュースから(75)
「体罰否定なら教育はできぬ」伊吹衆院議長岐阜で講演(2013. 2.10 中日新聞)
伊吹文明衆院議長(75)は九日、岐阜市内で開かれた自民党県連の政冶塾で「体罰を全く否定して教育なんかはできない」と述べ、スポーツ指導や教育現場での体罰を一部容認した。
政治家を目指す塾生ら二十三人の前で講演した後、女子柔道の暴力問題をめぐる質問にこたえた。
「この頃は少しそんなこと(体罰)をやると、父親、母親が学校に怒鳴りこんでくるというが、父母がどの程度の愛情を子に持っているか」と、保護者の対応も批判した。
さらに、英国のエリートを育てる私立校では教師がむちを持っていると説明。日本では「何のために体罰を加えるのかという原点がしっかりしていないから問題になる。立派な人間、選手になってほしいという愛情を持って体罰を加えているのかが判然としない人が多すぎる」と語った。
井吹氏は二〇〇六年九月から〇七年九月まで安倍内閣で文部科学相を務めた。衆院議長就任に伴い自民党の会派を離れ無所属となっている。
□□――――――――――――――――――――――――――――――――――――――□□
元文部科学大臣の体罰容認論ですが、「立派な人間、選手になってほしいという愛情を持って体罰を加えるなら、それは必要だ」という考えのようです。
女子柔道オリンピック代表選手に対する体罰とパワハラが選手たちからの告発によって問題になって辞任した園田隆二元監督は辞任の記者会見で「選手を立派に育てたいという気持ちから(の体罰)だった」と体罰を加えたことや言葉で選手をなじった理由を述べましたが、「一方的な愛情(思い込み)だったようだ」とも反省の弁を語りました。だとすると、伊吹氏の論法だと「許される体罰」ということになります。
桜宮高校で起きた体罰による自殺問題がきっかけで高校に対する調査が行われ、広い範囲で体罰が行われていることが分かりました。高校のスポーツクラブの監督やコーチは大学体育会出身者が多いのですが、自分が体育会時代に受けた“愛のムチ”と称する体罰を加えて指導するという観念が植え付けられているのではないでしょうか。大学の体育会こそ調査する必要があります。
元読売巨人軍投手の桑田真澄氏が「私は高校野球部で体罰を受けたことはない」(つまり体罰なくても選手は成長する)と語り、「体罰はむしろ選手を萎縮させる効果があり、絶対に行うべきではない」と、自らの経験から語っています。
それともう一つ伊吹講演で問題なのは、衆議院議長が自民党県連の政冶塾の講師を務めたことです。衆参両院の議長は各会派から中立の立場が要請されます。ですからこれまで歴代の衆参両院議長は会派を離脱して無所属になりました。その中立であるべき衆議院議長が特定政党が主催する政冶塾、当然自民党から国会議員なり地方議員になることを目指す者たちの養成塾の講師を引き受けることは、議長の中立性に反する行為ということになるのではないでしょうか。
大西 五郎
「体罰否定なら教育はできぬ」伊吹衆院議長岐阜で講演(2013. 2.10 中日新聞)
伊吹文明衆院議長(75)は九日、岐阜市内で開かれた自民党県連の政冶塾で「体罰を全く否定して教育なんかはできない」と述べ、スポーツ指導や教育現場での体罰を一部容認した。
政治家を目指す塾生ら二十三人の前で講演した後、女子柔道の暴力問題をめぐる質問にこたえた。
「この頃は少しそんなこと(体罰)をやると、父親、母親が学校に怒鳴りこんでくるというが、父母がどの程度の愛情を子に持っているか」と、保護者の対応も批判した。
さらに、英国のエリートを育てる私立校では教師がむちを持っていると説明。日本では「何のために体罰を加えるのかという原点がしっかりしていないから問題になる。立派な人間、選手になってほしいという愛情を持って体罰を加えているのかが判然としない人が多すぎる」と語った。
井吹氏は二〇〇六年九月から〇七年九月まで安倍内閣で文部科学相を務めた。衆院議長就任に伴い自民党の会派を離れ無所属となっている。
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元文部科学大臣の体罰容認論ですが、「立派な人間、選手になってほしいという愛情を持って体罰を加えるなら、それは必要だ」という考えのようです。
女子柔道オリンピック代表選手に対する体罰とパワハラが選手たちからの告発によって問題になって辞任した園田隆二元監督は辞任の記者会見で「選手を立派に育てたいという気持ちから(の体罰)だった」と体罰を加えたことや言葉で選手をなじった理由を述べましたが、「一方的な愛情(思い込み)だったようだ」とも反省の弁を語りました。だとすると、伊吹氏の論法だと「許される体罰」ということになります。
桜宮高校で起きた体罰による自殺問題がきっかけで高校に対する調査が行われ、広い範囲で体罰が行われていることが分かりました。高校のスポーツクラブの監督やコーチは大学体育会出身者が多いのですが、自分が体育会時代に受けた“愛のムチ”と称する体罰を加えて指導するという観念が植え付けられているのではないでしょうか。大学の体育会こそ調査する必要があります。
元読売巨人軍投手の桑田真澄氏が「私は高校野球部で体罰を受けたことはない」(つまり体罰なくても選手は成長する)と語り、「体罰はむしろ選手を萎縮させる効果があり、絶対に行うべきではない」と、自らの経験から語っています。
それともう一つ伊吹講演で問題なのは、衆議院議長が自民党県連の政冶塾の講師を務めたことです。衆参両院の議長は各会派から中立の立場が要請されます。ですからこれまで歴代の衆参両院議長は会派を離脱して無所属になりました。その中立であるべき衆議院議長が特定政党が主催する政冶塾、当然自民党から国会議員なり地方議員になることを目指す者たちの養成塾の講師を引き受けることは、議長の中立性に反する行為ということになるのではないでしょうか。
大西 五郎