集団的自衛権 元海自トップ「国民の了解取らなくても」 (14.5.27 毎日新聞)
「どこかの党が民意、民意と言っているが、外交・防衛は皆さんに任せたんです」
集団的自衛権の行使容認をめぐり、自民党が26日開いた安全保障法制整備推進本部の会合。古庄幸一・元海上幕僚長は、国民は外交・防衛政策を政権党に全権委任したといわんばかりの理屈を語り、こう踏み込んだ。「国民にいちいち了解を取ると言わなくても問題ない。世論調査にうんぬんされる必要はなし」
自民党の石破茂幹事長は、古庄氏を講師に招いた理由を「オペレーション(運用)するのは現場の自衛官。現場の気持が分かっているのが古庄さんだ」と説明。小泉政権当時の2003~05年、海上自衛隊トップを務めた古庄氏は、政府・自民党が目指す自衛隊の活動範囲の拡大を後押しする発言を続けた。
例えば、米同時多発テロ(01年9月11日)後、海自がインド洋で展開した給油活動。「カナダの船が意気揚々と『油をくれ』と来て、給油が終わったら作戦エリアに帰る。うちの隊員からは(作戦自体に参加せず)何となく後ろめたい、という気持がひしひしと伝わった」と回想した。
04年に発生した中国の原子力潜水艦による領海侵犯事件でも、今の法制度の制約で苦慮したと説明。「一番大事な法整備を急いでほしい」と訴えた。
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海上自衛隊のトップだった古庄氏の「国民にいちいち了解を取る必要はない」という発言は、名古屋高裁での自衛隊のイラク派兵は戦闘行為への参加で憲法に違反するという判決(2008年4月)に対し、航空自衛隊のトップだった田母神俊雄幕僚長(当時)が「そんなの関係ねぇ」と発言したことと共通するものを感じます。
つまり自衛隊の上層部の人たちは「オレたちは国を守るために頑張っているんだ。何が必要かはオレたちが判断する。国民はオレたちのやることにつべこべ言うな。政府はオレたちが動き易いように法を整備してくれ」という気持を持っているようです。これだと、かつての戦争中の軍指導部の思考、行動と変わりがないことを憂えなければなりません。政治が自衛隊の「軍事事情優先」を押し留めなければなりませんが、自民党は安全保障法制整備の会議の講師に国民の意見など聞く必要はないと主張している元自衛隊のトップを招いています。
新聞社や放送局の世論調査で、集団的自衛権の行使に賛成する人より反対する人の方が多く、憲法を改正する手続きを踏まずに政府の解釈変更だけで集団的自衛権を行使できるようにしようとしていることに対しては、さらに多く(50~70%)の反対があります(但し読売新聞の世論調査だけが「限定的な集団的自衛権の行使に賛成」が63%、「全面的に行使賛成」が8%)。
最近のどの新聞の投書欄にも「集団的自衛権テロに逆効果」(23日朝日)「憲法解釈変更は権力の暴走」(25日毎日)「戦禍知らぬ首相を憂う」(27日中日)など集団的自衛権の政府方針に反対する投書が連日寄せられています。だから推進派は国民の声を聞きたくないのでしょう。
大西 五郎
「どこかの党が民意、民意と言っているが、外交・防衛は皆さんに任せたんです」
集団的自衛権の行使容認をめぐり、自民党が26日開いた安全保障法制整備推進本部の会合。古庄幸一・元海上幕僚長は、国民は外交・防衛政策を政権党に全権委任したといわんばかりの理屈を語り、こう踏み込んだ。「国民にいちいち了解を取ると言わなくても問題ない。世論調査にうんぬんされる必要はなし」
自民党の石破茂幹事長は、古庄氏を講師に招いた理由を「オペレーション(運用)するのは現場の自衛官。現場の気持が分かっているのが古庄さんだ」と説明。小泉政権当時の2003~05年、海上自衛隊トップを務めた古庄氏は、政府・自民党が目指す自衛隊の活動範囲の拡大を後押しする発言を続けた。
例えば、米同時多発テロ(01年9月11日)後、海自がインド洋で展開した給油活動。「カナダの船が意気揚々と『油をくれ』と来て、給油が終わったら作戦エリアに帰る。うちの隊員からは(作戦自体に参加せず)何となく後ろめたい、という気持がひしひしと伝わった」と回想した。
04年に発生した中国の原子力潜水艦による領海侵犯事件でも、今の法制度の制約で苦慮したと説明。「一番大事な法整備を急いでほしい」と訴えた。
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海上自衛隊のトップだった古庄氏の「国民にいちいち了解を取る必要はない」という発言は、名古屋高裁での自衛隊のイラク派兵は戦闘行為への参加で憲法に違反するという判決(2008年4月)に対し、航空自衛隊のトップだった田母神俊雄幕僚長(当時)が「そんなの関係ねぇ」と発言したことと共通するものを感じます。
つまり自衛隊の上層部の人たちは「オレたちは国を守るために頑張っているんだ。何が必要かはオレたちが判断する。国民はオレたちのやることにつべこべ言うな。政府はオレたちが動き易いように法を整備してくれ」という気持を持っているようです。これだと、かつての戦争中の軍指導部の思考、行動と変わりがないことを憂えなければなりません。政治が自衛隊の「軍事事情優先」を押し留めなければなりませんが、自民党は安全保障法制整備の会議の講師に国民の意見など聞く必要はないと主張している元自衛隊のトップを招いています。
新聞社や放送局の世論調査で、集団的自衛権の行使に賛成する人より反対する人の方が多く、憲法を改正する手続きを踏まずに政府の解釈変更だけで集団的自衛権を行使できるようにしようとしていることに対しては、さらに多く(50~70%)の反対があります(但し読売新聞の世論調査だけが「限定的な集団的自衛権の行使に賛成」が63%、「全面的に行使賛成」が8%)。
最近のどの新聞の投書欄にも「集団的自衛権テロに逆効果」(23日朝日)「憲法解釈変更は権力の暴走」(25日毎日)「戦禍知らぬ首相を憂う」(27日中日)など集団的自衛権の政府方針に反対する投書が連日寄せられています。だから推進派は国民の声を聞きたくないのでしょう。
大西 五郎