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随筆 「ギター、老いと付き合う」   文科系

2014年11月13日 08時49分10秒 | 文芸作品
 クラシックギターの長い一人弾きから、退職後に先生についてちょうど十一年。一日平均二時間以上は確実に弾いてきたと思う。好きな曲が出てきて励む時期などは日に三~四時間も弾いているし、国内外を問わず旅行は必ずギター持参だ。レッスンを欠かせたくないから。それなのに、七十を越えたこの三年は下手になってきて、気分が落ち込むこともある。
 まず、どれだけ弾き込んだ曲にも、傷が出てきた。法則的な傷なら直しようもあるが、思いがけない傷だから、難しい。隣の弦に触って余分な音が出たり、ある音が急に大きくまたは小さくなったり。もちろん、こういうことへの何百年と確かめられてきた対策を先人たちが残してくれていて、それを毎日レッスン前に励んでいてもなのである。そういう対策、毎日のアルペジオ練習などは、レッスン初めに十五分は必ずやっているだろう。
 次に、長年暗譜を保持してきた曲が、演奏途中で途切れてしまう。ちょうど、電燈が点いたり消えたりするように。ある人の名前が出たり消えたりするのを思い出していただけば、それと同じと理解していただけばよい。なぜそうなるのかは自覚しようもないことだから、対策など浮かばないのである。この「消える」は、お酒を飲んでいると特に酷い。

 七十を少し過ぎてギターから離れる人が僕の周りにぽつぽつ現れてきたが、僕の悩みのようなことが原因になっているに違いない。傷ばかりが目立ち始めれば楽しいわけがない。それどころか、「可愛さ余って憎さ百倍」も生じうる。そんなことからなのだろう。「年齢を超える! ギター技巧維持教本」などという本まで出ていて、早速買ってきた。
 さてこういう傷や「(曲が)消える」と長く、本気で闘ってきたからこそ、初めて理解できたり、苦労して対策できたことも多い。自分にまとめた言葉では、こんな表現になる。「自分の長所が救いになる」と、「傷を増やさずにはおかない技術的基礎上の欠点は、これを直さねばいずれギターが続けられなくなる」。僕の長所は、これ。一つは、ハードに練習しても体を痛めないこと。これは、現役ランナーであるおかげと自覚できた。もう一つは、「消える」があっても、大変苦労して好きな曲の暗譜を一応は維持してきたこと。欠点の方はこれ。左手の小指と右手の薬指の形だった。前者は力が入って大きく動きすぎることで、左手の構え角度が悪いのが原因。右手薬指はやはり右手角度の悪さ、そこからタッチと音が不安定になること。この二つは、今年一年かかって八割ほどまで直せた。そうしたら現金なもので、レッスンが急に楽しくなってきて、またまた日に三時間などということが増えている。ちなみに、この十一月十日などは、これだけの暗譜曲を弾いたと、記録されている。まず、月光、愛のロマンス。タレガのラグリマとアデリダとマリエタとアルハンブラとプレリュード十、十一番とエンディーチャとオレムス。スペイン民謡で小山勝編曲の鳥の歌。バッハのデュアルテ編曲チェロ組曲第一番プレリュードと、サラバンドとドゥーブルと九九八プレリュード。映画ヒマワリの主題歌、ジークフリートベーレント編曲ウェルナーの野ばら、トローバのトリーハ、日本人作曲家のさくら変奏曲、メルツのロマンス、ソルのエチュードОP六の十二番、ポンセのスケルチーノメヒカーノ。以上は、誰かギターを弾く人がこれを読んでいてくれないかなとの願いを込めて、ずらずらと書いてみたことだ。
 初見弾きを筆頭に読譜弾きが苦手な僕には、これらの暗譜維持曲を譜を見ながら弾くのが「消える」対策としても丁度よいようだ。
コメント (2)
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