現在世界政治で最も影響力のあるトランプという男は、いったいどういう人間か。そのことを最もよく示していると思われる例を二つばかりあげてみたい。その人間のすべてを白日の下に曝してしまう言動というものがあるのであって、以下は正にそういう例と言える。
一つは、大統領に就任して最初に行った大きすぎる外交的大事件、エルサレムをイスラエルの首都とあえて認定してみせた政治行為である。
周知のように、エルサレムはイスラム教徒の聖地でもある。だからこそここをイスラエルが武力でもって不法占領しても、イスラム教徒の聖地であるということ自身もそこへのイスラム教徒の巡礼などもイスラエルは認めてきたものだ。それを大統領になってすぐに敢えて、ユダヤ教徒であるイスラエルの首都と認定してみせるという行為は一体どう表現したらよいものだろう。ただでさえイスラムと険悪な関係になってきたアメリカが、その宗教の表看板に真っ黒な泥を塗りつけたも同じ行為になる。これはどう表現したらよいか、イスラム教徒という人間の根底を敢えて改めて嘲笑って見せたのと同じことであって、つまりこういうことだ。相手を自分と同じような人間だと見ていない事を示す行為であると。つまり、彼には人としてのリスペクトがない人間たちが存在するわけである。これは要するに、民主主義の感覚そのものが欠如した人間といういうことではないか。
次いでこの事。これは大統領になる以前の彼の公式な場での発言であるが、こんなことを語っている。「金さえあれば、女にどんなことでもさせられる」
たぐいまれな不動産王なのだそうだが、金で人の顔をひっぱたいてきた人物ということがよく分かる言葉だ。これは世界の一角の真実には違いなかろうが、彼がそういう一角の住人であり続けてきて、自らそう振る舞ってきたということを恥ずかし気もなく述べているわけだ。
大変な人間がアメリカ大統領になったものである。ロシアゲート事件絡みもあって、あと3年続けられるのかどうかだが、米国大統領の地位をこの上なく引き下げてしまった人物と言えることは確かだろう。