ここにも良く書評を書いてきて、その書評というのも詳しい内容紹介を何回にも分けてやってきたが、今日は今同時進行で読んでいる何冊かの本のざっとした紹介をしようと思い立った。いずれも優れた興味深い物ばかりが偶然重なった時期のように思えるからだ。
最初に、前置きとして、僕の本の選び方について。結局は書店で現物を見ながら買う場合がほとんどだが、新聞や週刊誌などの書評欄から店頭で探す場合が多い。たくさん買うので、今は新書版がほとんどである。
これらの読み方は、おおむねこんなふうだ。①ざっと目次を見る。②そこの主要点を、前書き、後書きなどと共に読み、執筆の問題意識と結論という輪郭をつかむ。③そこから、その本の価値を推し量り、すぐ精読してここにほぼ全編を内容紹介したいもの、ちょっと先に回してもきちんと読みたい物、今ざっと読み飛ばして終わりにする物などに分ける。なお、買ったけれどほとんど読まないという本は僕の場合ない。既に店頭でざっと目を通して買うからだろう。
さて、まず、以下の紹介本自身の順番だが僕が買い入れた時の古い順に紹介する。上の方の古い本は、上で言うところの「ちょっと先に回してもきちんと読みたい」一通りは読んだものになる。それぞれの紹介内容は、出版社と書名、著者名、印刷(発行ではない。第5刷○月○日とかの・・・)年月日、そして概要紹介というもの。概要紹介はその著作の問題意識程度になるだろう。
①岩波新書「古代国家はいつ成立したか」。都出比呂志大阪大学名誉教授(考古学)。14年11月5日
「弥生社会をどう見るか」「卑弥呼」から始まって、「巨大古墳と古墳の終焉」「律令国家」と続いて、題名の結論で終わる。文献史学に比べて考古学の方がよりリアルな事実の探求というように感ずるとは、以前に述べた通りである。
②中公新書「近現代日本史と歴史学 書き替えられてきた過去」。成田龍一日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。12年3月20日
戦後日本では、日本近現代史の流れのつかみ方について、三つの時期があったこと、つまり2回解釈転換があったと述べて、その内容がまず明かされている。1960年ほどまでの社会経済史ベースの時代から、「民衆」史ベースの時代へ。次いでそこからさらに80年頃に起こった社会史ベースの時代へという変換であると。その上で、明治維新、大日本帝国、アジア・太平洋戦争などなど歴史の重要項目について、三つの時期それぞれでどう解釈変更されたかと、描かれていく。壮大かつ野心的な志と内容と感じたところだ。
③中公新書「日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実」。吉田裕一橋大学院社会学研究科教授。17年12月25日
書名に言う「現実」の中身は、こういうこと。餓死者、餓死以前の栄養失調からの戦病死兵士が圧倒的に多かったと。そして制空権を握られてからの海没者など、戦争末期の死者が特に多かったこと。もう一年早く終わっていたら死なずにすんだ人がどれだけいたかなどと思って読んだものだ。これらが、可能な限り詳しい数字と共に述べられている。
④ちくま新書「日本の転機 米中の狭間でどう生き残るか」。ロナルド・ドーア、ロンドン大学名誉教授・同志社大学名誉文化博士(日本経済、日本社会構造)。12年11月10日
副題の通りの内容である。つまり、米中冷戦が既に始まっているのだが、「では、日本はどうしよう?」と。中国の欠点を挙げ、今にも崩壊するというような日本マスコミほとんどの「アクセス報道」(下記⑤参照)論調とはかなり違う描き方だから、驚くことも多かった。トランプ政権になってからさらに進んだ世界慣行制度無視によるアメリカの権威失墜は、それだけアメリカの困窮ぶりの帰結なのでもあって、世界史を10~20年単位で見た大家のみに可能な貴重な著作と思う。
⑤集英社新書「権力と新聞の大問題」。望月衣塑子東京新聞社会部記者、マーティン・ファクラー前ニューヨーク・タイムス東京支局長。18年6月20日
管官房長官記者会見で厳しい質問を浴びせ続けて来たことで名をはせた女性記者を、日本マスメディアの根本的欠陥に通じた同業米記者が励ます内容と言って良い。マスコミ報道には、報道対象関係者の言葉などをそのまま伝える「アクセス報道」と、事件を詳細に調べて記者の見解なども入れる調査報道とがあるが、日本は前者ばかりだから政治家らとも密着しやすく、政権忖度から批判が少なすぎると描かれてあった。
⑥角川新書「日本型組織の病を考える」。村木厚子元厚生労働事務次官。18年8月10日
言わずと知れた冤罪事件の主。取り調べの可視化など一定の検察改革にも繋がった著者の体験を通じて表題のこと、改革方向などを説いた物である。
⑦集英社新書「スノーデン 監視大国日本を語る」。エドワード・スノーデン元米シニア情報局員、国谷裕子キャスター、ジョセフ・ケナタッチ国連人権理事会特別報告者他。18年8月22日
この興味深い著者らの取り合わせに即引かれた本だが、内容は、現代世界の民主主義の生死に関わってくるほどに大きな問題、解決方向を語っている。スノーデンの運命はどうなるのだろうと憂慮していたが、この大悪と戦っている団体、人々がこのように存在するのだと、勇気づけられたものだ。
他に、③の著者、吉田裕の「昭和天皇の終戦史」(岩波新書)も読んでいるが、目配りの広い、天皇に厳しい内容になっていると読んだ。吉田裕は戦後の著名な近現代史家、藤原彰の弟子のようだが、僕が愛読してきた歴史学者である。
なお、上記太字の人物、著作は、このブログの中に既に一部書評などが存在することを示している。その出し方はこうする。右欄外最上部にある「記事を書く」の右にある「検索」空欄に氏名(が該当エントリーに最も上手く行き着ける)を入れて、さらに右のウェブ欄をクリックして「このブログ内で」に替えて、右の天眼鏡印をクリックして検索をかける。すると、エントリー本欄が、その語の当ブログ内関係エントリーに変わりますから、お好きな物をお読み願えます。
最初に、前置きとして、僕の本の選び方について。結局は書店で現物を見ながら買う場合がほとんどだが、新聞や週刊誌などの書評欄から店頭で探す場合が多い。たくさん買うので、今は新書版がほとんどである。
これらの読み方は、おおむねこんなふうだ。①ざっと目次を見る。②そこの主要点を、前書き、後書きなどと共に読み、執筆の問題意識と結論という輪郭をつかむ。③そこから、その本の価値を推し量り、すぐ精読してここにほぼ全編を内容紹介したいもの、ちょっと先に回してもきちんと読みたい物、今ざっと読み飛ばして終わりにする物などに分ける。なお、買ったけれどほとんど読まないという本は僕の場合ない。既に店頭でざっと目を通して買うからだろう。
さて、まず、以下の紹介本自身の順番だが僕が買い入れた時の古い順に紹介する。上の方の古い本は、上で言うところの「ちょっと先に回してもきちんと読みたい」一通りは読んだものになる。それぞれの紹介内容は、出版社と書名、著者名、印刷(発行ではない。第5刷○月○日とかの・・・)年月日、そして概要紹介というもの。概要紹介はその著作の問題意識程度になるだろう。
①岩波新書「古代国家はいつ成立したか」。都出比呂志大阪大学名誉教授(考古学)。14年11月5日
「弥生社会をどう見るか」「卑弥呼」から始まって、「巨大古墳と古墳の終焉」「律令国家」と続いて、題名の結論で終わる。文献史学に比べて考古学の方がよりリアルな事実の探求というように感ずるとは、以前に述べた通りである。
②中公新書「近現代日本史と歴史学 書き替えられてきた過去」。成田龍一日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。12年3月20日
戦後日本では、日本近現代史の流れのつかみ方について、三つの時期があったこと、つまり2回解釈転換があったと述べて、その内容がまず明かされている。1960年ほどまでの社会経済史ベースの時代から、「民衆」史ベースの時代へ。次いでそこからさらに80年頃に起こった社会史ベースの時代へという変換であると。その上で、明治維新、大日本帝国、アジア・太平洋戦争などなど歴史の重要項目について、三つの時期それぞれでどう解釈変更されたかと、描かれていく。壮大かつ野心的な志と内容と感じたところだ。
③中公新書「日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実」。吉田裕一橋大学院社会学研究科教授。17年12月25日
書名に言う「現実」の中身は、こういうこと。餓死者、餓死以前の栄養失調からの戦病死兵士が圧倒的に多かったと。そして制空権を握られてからの海没者など、戦争末期の死者が特に多かったこと。もう一年早く終わっていたら死なずにすんだ人がどれだけいたかなどと思って読んだものだ。これらが、可能な限り詳しい数字と共に述べられている。
④ちくま新書「日本の転機 米中の狭間でどう生き残るか」。ロナルド・ドーア、ロンドン大学名誉教授・同志社大学名誉文化博士(日本経済、日本社会構造)。12年11月10日
副題の通りの内容である。つまり、米中冷戦が既に始まっているのだが、「では、日本はどうしよう?」と。中国の欠点を挙げ、今にも崩壊するというような日本マスコミほとんどの「アクセス報道」(下記⑤参照)論調とはかなり違う描き方だから、驚くことも多かった。トランプ政権になってからさらに進んだ世界慣行制度無視によるアメリカの権威失墜は、それだけアメリカの困窮ぶりの帰結なのでもあって、世界史を10~20年単位で見た大家のみに可能な貴重な著作と思う。
⑤集英社新書「権力と新聞の大問題」。望月衣塑子東京新聞社会部記者、マーティン・ファクラー前ニューヨーク・タイムス東京支局長。18年6月20日
管官房長官記者会見で厳しい質問を浴びせ続けて来たことで名をはせた女性記者を、日本マスメディアの根本的欠陥に通じた同業米記者が励ます内容と言って良い。マスコミ報道には、報道対象関係者の言葉などをそのまま伝える「アクセス報道」と、事件を詳細に調べて記者の見解なども入れる調査報道とがあるが、日本は前者ばかりだから政治家らとも密着しやすく、政権忖度から批判が少なすぎると描かれてあった。
⑥角川新書「日本型組織の病を考える」。村木厚子元厚生労働事務次官。18年8月10日
言わずと知れた冤罪事件の主。取り調べの可視化など一定の検察改革にも繋がった著者の体験を通じて表題のこと、改革方向などを説いた物である。
⑦集英社新書「スノーデン 監視大国日本を語る」。エドワード・スノーデン元米シニア情報局員、国谷裕子キャスター、ジョセフ・ケナタッチ国連人権理事会特別報告者他。18年8月22日
この興味深い著者らの取り合わせに即引かれた本だが、内容は、現代世界の民主主義の生死に関わってくるほどに大きな問題、解決方向を語っている。スノーデンの運命はどうなるのだろうと憂慮していたが、この大悪と戦っている団体、人々がこのように存在するのだと、勇気づけられたものだ。
他に、③の著者、吉田裕の「昭和天皇の終戦史」(岩波新書)も読んでいるが、目配りの広い、天皇に厳しい内容になっていると読んだ。吉田裕は戦後の著名な近現代史家、藤原彰の弟子のようだが、僕が愛読してきた歴史学者である。
なお、上記太字の人物、著作は、このブログの中に既に一部書評などが存在することを示している。その出し方はこうする。右欄外最上部にある「記事を書く」の右にある「検索」空欄に氏名(が該当エントリーに最も上手く行き着ける)を入れて、さらに右のウェブ欄をクリックして「このブログ内で」に替えて、右の天眼鏡印をクリックして検索をかける。すると、エントリー本欄が、その語の当ブログ内関係エントリーに変わりますから、お好きな物をお読み願えます。