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書評 『人新世の「資本論」』、その概要  文科系

2021年03月04日 11時11分54秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 このベストセラー本の内容紹介を3回にわたってやって来たが、最後に標記の通り、全体の概要を粗い箇条書きにしておきたい。

①今までのマルクス解釈は生産力至上主義であった。いわゆる生産力が生産関係を換え、この経済転換が上部構造を変えていくという命題を絶対視して、資本主義生産関係の様々な政経的諸悪現象などを指摘、批判する政党が政権も取ることができて、まともな生産関係も生みだすことができるというように。こういう考え方からは、(現に生産力が発展していた)西欧中心主義や、政治主義という特徴も出てくることになる。

②人類による地球破壊、地球環境問題、これに対するグリーンニューディール政策への期待などにも、世界的な需要拡大という形で生産力至上主義が顕れている。左翼やリベラルの間にさえ、気候ケインズ主義があるのではないか。資本主義のままで地球破壊が止められるというのは、幻想である。いまでも、地球荒廃のしわ寄せが南部に行き、先進国には見えにくくなっているだけだ。

③晩期マルクスは、資本論2、3巻の研究・構想途中で亡くなったが、世界中の農村共同体などの研究を通じて、生産力至上主義から脱皮しつつあった。その考え方によれば、今の「人新世」世界を止められるという意味で求められている方向は、脱成長コミュニズム(コモン、社会的共有財を、資本所有に抗してそれらしく確立し直していくこと)である。これには、五つの柱がある。①使用価値経済への転換、②労働時間の短縮、③画一的な分業の廃止、④生産過程の民主化、⑤エッセンシャルワークの重視。具体的なこれの形は、今世界に広がり、結びつきつつある地産地消の生産消費共同体とその世界的結合、およびそれが作る政治である。

④この典型例は、バルセロナ市。リーマンショックのあおりをまともに受けて失業率25%というスペインの苦境から、労働者協同組合を中心にしてこんな形で復興している。生協、共済、有機農産品グループなど無数の協同組合がこれと結びついて政党を作り、その政党が2016年に市長選挙に勝利した。そして同時に、「人新世」の被害をまともに受けている地球南部(アフリカ、南米など)の77諸都市と世界的連携を取りあっている。これらの諸都市は特に、グローバル企業によって民営化されてしまった水道事業を公営化する運動などに知恵を寄せ合っている。他にも、1993年から中南米に打ち立てられて来た国際農民組織、ヴィア・カンペシーナは全世界約2億人と関わりを持っている。これらの運動は、食糧主権と気候正義を柱としているが、南ア食糧主権運動もその典型の一つだ。飢餓率26%である上に、ポルトガル一国と同じ量のCO2を出すあるエネルギー資源企業を持った国だから、食料輸出が問題になっているのである。

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