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随筆 『米中どちらが「世界悪」』   文科系

2021年04月03日 04時23分29秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

 社会悪という言葉があるが、その伝で標題の言葉を使ってみた。米中どちらが世界悪なのだろう。因みに、社会悪とは、広辞苑によればこうあった。
『社会が内包する矛盾から発生する悪弊、貧困、犯罪などの害悪』
 この社会悪定義を世界悪に置き換えていただけば、表題の意味になる。米中どちらが世界の悪弊、貧困、犯罪などに貢献しているか、と。要は、その世界悪の程度の比較。

 先日アラスカで開かれた米中会談で、第二次大戦後では珍しいような応酬、場面が世界の衆目に曝された。ウイグル、香港問題などを挙げて中国をかってない調子で批判した米国に対して、中国もまた初めてと言って良い強硬な姿勢でこれを拒否してみせたのである。中国の対応を平たく言えば、こういうものだった。
「そう語るお前の国に、我々の内政問題を非難するどんな資格があるのか」
 この会談前にアメリカが、日韓豪印その他と会談を持ったりして周到な集団的準備を重ねた上で「それらの声をも背景にしつつ」アラスカ会談に臨んだというのに、この応対なのである。中国がアメリカに対して初めて取ったと言えるほどのこの強硬言動は、さらに突き詰めて言えば、こういうものだというマスコミ解説もあった。
「世界の一国に過ぎないお前の国が、上から目線で何を語っているのか。偉そうに」
 この場面、確かに僕もそう思う。

 20世紀に二つの世界大戦の重大かつ切実な教訓として、人類は「多国間主義」の世界(平和)組織・国連というものを初めて作り上げた。国際間問題なら、そこで論議すべきなのだ。ところが、そこで論議すると負けるからこそ、アメリカがこんな行動に出たのである。自分が国連に代わるような態度を取り続けてきたその調子で。因みに、今国連諸決議の採択などでは、アメリカの方が中国よりも支持が少ないという意味で、嫌われているのである。だから、こんなふうに両国会談で「国連に代わるような顔をして」面と向かった中国批判をやったのである。これは昔ならば、どちらかが「戦争だー!」となった場面なのであろう。が、現在世界では国連によって戦争は悪とされている。

 ちなみに、アメリカが非難したウイグル、香港問題はもちろん、台湾問題でさえ、内政問題とも言える。それに対して、アメリカのアフガニスタン戦争、イラク戦争、イラク国会決議に反した米軍のイラク駐留、シリア(駐留)内戦工作などは、内政問題ではなく戦争行為である。それも現に行われている戦争行為なのだ。国連レベルでは、何百万という膨大な難民を生み出して世界を混乱させたということも含めて、中国よりもアメリカの方が「悪弊、貧困、犯罪など」の世界悪をはるかに大きく作り出して来た。よって、国連で非難の応酬を開始すれば当然、アメリカの対中非難の方がはるかに不利なのだ。だからこそこんな形で行われた対中非難が、「(戦争ばっかりやっている国が)上から目線で、偉そうに!」と対されたら、はてアメリカは一体、今後中国に何ができるというのだろう?

 なお、僕も当然、中国という国は一党独裁(悪)の国と観ている。でも、それもまだ、言わば、内政問題。他国に戦争を何度も仕掛けるほど酷い世界悪だとは言えないはずだ。ちなみに、普通選挙制度はあっても、実質独裁の国なども多く存在している。アメリカ大統領選挙では数千億円とかの膨大な金が飛び交うとあっては、実質金持ち独裁。一党独裁と金持ち独裁と、はてどちらが害悪なのか? ちなみに、金持ち独裁国こそが、今の新自由主義的金融グローバリゼーションを、世界の超格差貧困問題という地球規模の大問題を作り出して来た。  

 

コメント (1)
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