名古屋グランパスが8戦無失点、リーグ記録を更新した。2014年の浦和の7戦を抜いたのである。こういう記録は、日本サッカーでは特に重要な意味を持つということを力説してみたい。
「日本サッカーには、守備の文化がない」とは、W杯日本代表初の外国人監督トルシエが残した有名な言葉だ。併せて言えば、守備の文化が低いとは、そういうリーグでは世界的FWも育ちにくいということ。かくして、初めの頃の渡欧日本人選手は攻撃的MFばかりという歴史的事実も存在した。今でこそ吉田、富安のセンターバック、長谷部とその後を継いだような遠藤航がいるが、ここに来てのJ新記録、8戦連続失点0はJとして凄く喜ぶべき歴史的事件だと思う。
ちなみに、グランパス初戦の1失点はオウンゴールだったから、実際は9連続だとは、フィッカデンテ監督も強調していること。かくして、首位川崎と並んで未だ無敗の両チームなのだ。ちなみに、J2の方も新潟と琉球が無敗、いずれも失点が少ない1位と2位だ。というように、これだけ「負けないチーム」が増えてきたというのは、守備の文化がやっとしかも一斉に育ってきたという意味において、日本サッカー文化の歴史的大事件と言えるのではないか。
関連した嬉しいニュースとして、サッカー解説者・水沼貴史がドイツに渡った遠藤航についてこう述べていた。
『私のような日本の古いサッカー人からしたら、遠藤航がドイツリーグの「デュエル勝率ナンバーワン選手」と発表されたなんて、良い意味で「ありえないこと」だ』
ボールを保持した攻勢的パス・サッカーというのも実は、相手ボールを奪う技術、組織が上手くなければ不可能なこと。攻勢的守備とはこうして、サッカーの場合にはそのまま攻勢的攻撃の意味にもなるのである。
名古屋は実はここからが大変な難関の山場。当面の相手が、広島、鳥栖、ガンバ大阪、川崎といずれも強敵揃いである上に、この合間にもアジアチャンピオンズリーグ戦が三つも入ってくる。近年は川崎でさえ苦労してきたこの難関を果たしてどう掻き分けていけるのか。この難関を越えるためにこそ、柿谷と木本をセレッソから、長澤を浦和から、斉藤を川崎から取ったのである。このACLでも、観るに値する「無失点」ゲームを続けてほしいものだ。