【社説・12.14】:【補正予算案通過】熟議で国会の存在示せ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.14】:【補正予算案通過】熟議で国会の存在示せ
少数与党政権はひとまず最初の難関を越した。しかし、「政治とカネ」問題など課題は山積する。真剣に向き合わなければ信頼の回復はおぼつかない。
2024年度補正予算案は衆院を通過し、参院で論戦に入った。近く成立する見通しとなった。
自民、公明両党に加え、日本維新の会と国民民主党などが賛成した。維新と教育無償化の実務者協議開始を申し合わせ、賛成を取り付けた。国民とは所得税が生じる「年収103万円の壁」を巡り、25年からの引き上げで合意して協力を得た。
また、立憲民主党が求めた能登半島地震の被災地復興関連予算の増額に応じた。予算案が修正されるのは28年ぶりで、異例の対応に対立回避の姿勢が見て取れる。
ただ、年収の壁引き上げは国民が主張する178万円を目指すとするが、具体的な方法や幅は決まっていない。ガソリン税に上乗せされている暫定税率の廃止でも一致したものの、その時期は未定だ。
石破茂首相は、熟議の上で多くの党の賛成を得たと強調する。強硬姿勢を崩さない野党に譲歩を迫られたというのが実態だろう。
税制改正が絡み、年収の壁の引き上げは詳細を先送りした。一方で、税収減少による地方財政への影響を懸念する意見が根強い。穴埋めの財源を含めた丁寧な制度設計が求められる。甘い対応では政権への圧力として跳ね返ることになる。
補正予算案の歳入は、約半分を国債発行で賄う。国債に依存する構造が続き、財政悪化に歯止めがかからない状況だ。内閣府は基礎的財政収支(プライマリーバランス)が25年度に黒字化すると試算するが、懐疑的な見方も多い。
基金の積み増しなど緊急性が低い支出が補正予算案に含まれるとして、野党側は削減を主張した。審議時間が限られる補正予算案への巨額計上はこれまでも問題視されてきた。過半数の獲得を狙う与党と政策実現を目指す野党との駆け引きがあるとはいえ、政策の必要性は十分審議が深まったようには見えない。
裏金事件を受けた政治改革関連法案は各党の姿勢が異なる。自民案は使途公開が不要な政策活動費を廃止する一方、使途を非公開にできる方策を示していた。国会に設置する第三者機関の監査で支出の透明性は確保できるとするが、野党の批判は根強い。
第三者機関を国会に設置する内容の法案は公明と国民も共同提出した。立民案は寄付と政治資金パーティー券購入禁止から政治団体を除外し、野党内にも反発がある。
首相は、必要な法整備を含め年内に結論を示す必要があるとする。合意形成には距離があり、修正協議で一致点を見いだせるかが焦点だ。
来年の通常国会は25年度予算案を審議し、参院選も控える。野党が引き続き攻勢を強めるのは必至だ。国会軽視が改まり、議論が深まることは歓迎される。熟議に向けて野党の責任もまた重い。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月14日 05:00:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。