【社説①・02.11】:兵庫県予算案/効果の検証が欠かせない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.11】:兵庫県予算案/効果の検証が欠かせない
兵庫県が2025年度の当初予算案を発表した。昨年11月の知事選で再選した斎藤元彦知事の2期目初めての予算編成は、引き続き若者や子育て世帯への支援を最重点に据え、人口減に歯止めをかけ、地域活性化につなげることを目指す。財政状況が一段と厳しさを増す中、難題克服へ施策の実効性が一層問われる。
斎藤知事は会見で「災害に強く、新たな躍動が広がる兵庫」に向けた予算と強調した。
一般会計は2兆3582億円で24年度から192億円増となった。特別会計と公営企業会計を合わせた総額は4兆5150億円と同2132億円増となる。
県の外郭団体「ひょうご農林機構」による分収造林事業は実質破綻状態にある。企業庁が産業用地などを造成・分譲する地域整備事業も多額の借金を抱える。これらの債務処理に1214億円分の県債管理基金を取り崩し、予算規模が膨らんだ。
県税収入は24年度を819億円上回る9982億円を計上、4年連続で過去最高を更新した。好調な企業業績に伴う法人税や賃上げによる個人関係税の伸びを見込んだ。
一方、発生から30年が過ぎても阪神・淡路大震災は県財政に影を落とす。県によると、税収増もあり28年度までの収支不足は計160億円と改善される。ただ長期金利の上昇が見込まれ、収支不足は28年度以降も続く。財政の健全度を測る指標「実質公債費比率」は18%を超え、26年度から県債発行に国の許可が必要となる。財政構造が硬直化する中、施策の優先順位をどう考えるのか。
そんな中で予算案には、知事が注力する若者向けの施策が並ぶ。
24年の人口移動報告で、兵庫の転出超過は7287人と全都道府県で3番目に多かった。特に若年層の流出抑制を念頭に、県立大学の県民無償化は予算を大幅に増額し、対象学年を2年生以上に広げる。全学年の完全無償化は26年度となる。ただし対象者は県内の高校卒業生の2%に満たず、不公平との批判は根強い。県は財源確保へ基金を創設し、5年ごとに事業評価を実施する。
県立高校の設備改善や、県内中小企業などに就職する学生への奨学金返済支援、子育て支援も継続する。県内での暮らしやすさ、働きやすさをアピールする施策がちりばめられてはいるが、目新しさは乏しい。政策効果の検証を怠らず、県民に分かりやすく伝えることが肝要だ。
このほか4月開幕の大阪・関西万博関連事業に多額の予算を計上し、凍結されていた県庁舎の建て替え計画にも本格着手する。県議会の予算審議では県民の多様な声を反映させ、議論を深めてもらいたい。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月11日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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