【社説①・02.09】:財界セミナー/一極集中の是正に本腰を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.09】:財界セミナー/一極集中の是正に本腰を
関西の企業経営者らが一堂に会して社会や経済の課題を議論する「関西財界セミナー」が、神戸市で開かれた。阪神・淡路大震災から30年に当たる今年は、会場を京都市から20年ぶりに神戸に移し、防災や減災をテーマの一つに据えた。
ハードとソフト両面で実践的な防災・危機管理体制をつくる、首都機能の過度な一極集中を是正する、企業も地域社会の一員として地域の防災力向上に取り組む-。これらは2005年、神戸開催の財界セミナーで採択された「神戸アピール」の一部である。
従業員の安全を守り、事業の継続に努めるのは、災害時における企業の責務だ。対応は地域の復興を左右する。今回のセミナーは、神戸アピールの実現に向けて企業や経済界がどう行動してきたのかが問われた。
大企業を中心に防災対策はかつてより進み、事業継続計画(BCP)の策定や自治体との連携協定が増えた。協定の内容も、支援物資の輸送や大規模停電時の電源確保、要支援者の避難受け入れなど多岐にわたる。
一方、中小企業の対策は不十分と言わざるを得ない。関西経済連合会の調査では、資本金3億円未満の企業の44・8%はBCPが未策定だった。スキルや資金を要する点が壁になっているようだ。実効性のある中小企業の備えを後押しするには、経営者への啓発に加え、業界や経済団体のさらなる支援が求められる。
東京一極集中の是正は必要性が叫ばれながらもほぼ手つかずといえる。分科会では「人材育成が東京偏重だった。リスク分散に加え、働き方改革の観点から関西でも経験が積めるようにした」との報告があった。
しかし、実践事例は少数にとどまった。経済効率から一極集中にメリットを見いだす企業は多い。だが長期的に見れば、地域が衰退し、防災力はおろか、国全体の持続可能性の低下につながりかねない。
今回のセミナーも、地域社会と連携する重要性を確認し合った。関西経済界は率先して、本社や拠点の移転など一極集中の是正に本腰を入れてほしい。防災、減災における地域との「共助」はより強力になるはずだ。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月09日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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