【佐高信「追悼譜」】:稲盛和夫は京セラ従業員の墓に入ったのだろうか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【佐高信「追悼譜」】:稲盛和夫は京セラ従業員の墓に入ったのだろうか
◆稲盛和夫(2022年8月24日没、享年90)
ジェームズ・ボンドが活躍する映画007シリーズの1作に『007は二度死ぬ』があったが、いわゆる著名人は家族葬的なものと「お別れの会」で「二度死ぬ」ようである。
京セラの創業者の稲盛は「お別れの会」 も京都(11月28日)と東京(12月6日)で2度やる。
京都府八幡市円福寺に「京セラ従業員の墓」がある。死後、希望者が入れるというのだが、稲盛は入らないのだろう。
7年前に北京の中央財経大で日本語科の学生に「経済小説で読む日本」という講義をした。通訳をしてくれた女性講師は日本留学の経険があり、三井物産の北京支店で働いていたことあって、細かいところまで見事な通訳だった。その後の学生の質問が、私の話が彼らに届いていたことをはっきりと証明したからである。
村山富市と私の共著『「村山談話」とは何か』(角川新書)は中国で翻訳されたが、その訳者の陳応和に案内されて北京国際青年研修学院長(当時)の房恩とも会った。
その前に北京の書店に行って、稲盛や松下幸之助、そして三島由紀夫の中国語訳の本が並んでいるのを見てショックを受けた。
数年前、北京大学が竹中平蔵を呼び、それも本になっているという。
私を招いた人たちはそうした動きに抵抗しているのだが、稲盛や松下、そして竹中などに学んではダメだと私は強調した。
日本人は宗教心が薄いといわれるが、オウム真理教以上の企業教という宗教があるのであり、たとえば京セラでは稲盛が”尊師”でマインド・コントロールをする。
稲盛は一度剃髪したが、それならスッパリと会社をやめて、その道に入ればよかった。
松下電器(現パナソニック)ならぬマネシタ電器の幸之助や稲盛がいたから、日本は経済的に成長したのではない。独創的な技術にこだわったホンダの本田宗一郎やソニーの井深大こそ、活力ある経営者の指標なのである。
しかし、残念ながら、経営者の人気アンケートでは、井深や本田より、松下や稲盛がずっと上にランクされる。
瀬戸内寂聴が中坊公平と稲盛を語らって出した。『日本復活』という事がある。
その中で瀬戸内が、3人に共通するのは悪口を言われても、「なに、勝手に言っとけ」と思っていることだと主張しているが、これは稲盛を知らないにも甚だしい。
斎藤貴男は『カルト資本主義』(ちくま文庫)で稲盛を徹底批判した。すると稲盛は斎藤を訴えたのである。
あるコラムで私がこの訴訟を紹介しつつ、稲盛を批判したら、早速、私にも抗議の内容証明便が来た。
悟ったようなポーズで「なに、勝手に言っとけ」という姿勢とは正反対なのである。
私は密かに「京セラ」を「狂セラ」と呼んでいる。(文中敬称略)
1945年山形県酒田市生まれ。「官房長官 菅義偉の陰謀」、「池田大作と宮本顕治 『創共協定』誕生の舞台裏」など著書多数。有料メルマガ「佐高信の筆刀両断」を配信中。
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