【政界地獄耳・01.30】:潜伏50年…闘争は勝利したのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・01.30】:潜伏50年…闘争は勝利したのか
★「ウチダ・ヒロシ」の名前で神奈川県鎌倉市の病院に末期がんで入院していた男が、連続企業爆破事件で重要指名手配されている「東アジア反日武装戦線」のメンバー桐島聡を名乗り、警視庁公安部が本人確認を進めていたが29日朝に死亡した。同県藤沢市内の工務店に長年勤め、給料は現金で受け取っていたという。多くの人が交番や駅の掲示板などで桐島の指名手配写真を目にしたことだろうが、50年前の事件で写真はその前のものとすれば、面影があるとは思えない。保険証や免許証など身分を示すものがないことから、長い潜伏期間も注意深く社会に溶け込んでいたのだろう。
★若い人にはピンとこないだろうが、東アジア反日武装戦線のグループ「狼」「大地の牙」「さそり」、爆弾製造法やゲリラ戦の教本として地下出版された「腹腹時計」など、懐かしい言葉がメディアに躍った。腹腹時計には面白い記述がある。左翼的ないきがりを一切捨てる。家族との関係をことさら断つ必要はない。「合法的左翼」は口も尻も軽いので信用できないから関係をもつな。こうして一般社会にまぎれたのだろうが、1974年8月から75年5月にかけ三井物産や帝人、大成建設、鹿島建設(現鹿島)、間組(現ハザマ)などアジア進出企業を標的にし、三菱重工爆破事件など12件もの連続企業爆破事件を起こしたこととどう結びつくのかが理解しがたい。
★都市の雑踏にまぎれて捲土(けんど)重来を誓っていたのか。当時はパソコンもなく、腹腹時計は和文タイプで作られた。今は至る所にある監視カメラやNシステム、基礎情報がある人物の追跡は可能だが、50年の潜伏は単独だったのか、組織的支援があったのか。公安部の担当者たちは捜査官人生の多くを桐島追跡に割いてきたことだろう。だが一番変わったのは、アジア諸国は大きく飛躍し、わが国は停滞から衰退へ弧を描いたことだ。それで思いは成就したのだろうか。(K)※敬称略
◆政界地獄耳
政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】 2024年01月30日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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