【社説②】:プーチン氏出馬 侵略で政権維持図る
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:プーチン氏出馬 侵略で政権維持図る
ロシアのプーチン大統領が来年3月の大統領選に出馬する意向を表明した。ウクライナ侵略を正当化し権力維持を図ることは到底容認できない。無益な侵略戦争に即刻幕を引くよう重ねて要求する。
見え透いた芝居のような出馬表明だった。侵攻に加わる軍人の叙勲式の後、戦死者の遺族が出馬を口々に求めたのに応えて、プーチン氏は「いろいろ迷ったが、今は決断の時だ。私は立候補する」と述べた。
戦争は軍も支持し、続投は国民も望んでいるという演出をしたのは、抑え込んでいる国内の厭戦(えんせん)気分が気になるからでもあろう。
プーチン氏は年末恒例の記者会見では、侵略の目的をウクライナの「非ナチ化」と「中立化」だとあらためて指摘し「ロシアの目的が達成されれば平和が訪れる」と述べた。制圧するまで戦争を続ける意思表示である。
ただし戦況は膠着(こうちゃく)状態が続き、出口が見えない。ロシア、ウクライナどちらにとっても泥沼だ。
プーチン氏自身が言い出した2020年の憲法改正で大統領任期の条項を改め、プーチン氏の通算5期目の出馬が可能になった。4期23年に及ぶプーチン独裁体制の下で政敵排除が進み、侵略以来、言論締め付けも一層強化された。公正な選挙は望めまい。政権は結果を「圧勝」に仕立てるだろう。
一方的に併合したウクライナ東・南部4州でも投票は行われる予定だ。支配を既成事実化するためだが、占領地域での投票は国際法に違反する。
現在71歳のプーチン氏はロシア人男性の平均寿命の68歳(19年・世界保健機関)を超えている。改憲で任期は最長で2期12年になった。プーチン氏がこれを全うすれば36年まで政権の座にとどまれる。そうなればプーチン氏は83歳になる。事実上の終身大統領だ。
独裁の長期化がもたらした社会の閉塞(へいそく)感は、続投で一層強くなる。いつかは爆発する。行き詰まりを打開する展望をプーチン氏は持っているのだろうか。独裁延命が自己目的化しているようにしか見えない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年12月20日 08:17:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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