【社説・11.15】:【独居の高齢者】:孤立防ぐ安心の社会を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.15】:【独居の高齢者】:孤立防ぐ安心の社会を
世帯の単身化が止まらない。国立社会保障・人口問題研究所が都道府県別世帯数の将来推計を発表した。2050年には、全世帯に占める1人暮らしの割合が27都道府県で40%を超える。
とりわけ深刻なのは65歳以上の高齢者が1人で暮らす割合だ。地方を中心に32道府県で全世帯の20%を上回る。最も高いのが高知の27・0%で、徳島25・3%、愛媛24・9%と続き、四国の高さが目立つ。
未婚の人が増え、少子高齢化で同居する家族の人数も減ることが背景にある。
誰もが1人暮らしになる可能性がある。安心して暮らせる仕組みづくりが急がれる。
1人暮らしの高齢者は、配偶者や子どもと同居している人と比べて孤立しやすい。認知機能や体力の低下が進めば、家事や行政手続きなど日常生活で困りごとが増える。孤独死につながる恐れも高まりかねない。暮らしを支える見守り活動の重要性が高まっている。
見守り活動を担うのは主に地域の民生委員らボランティアだ。頼れる人が近くにいない住民にとっては、同じ目線で話せる身近な相談相手であり、存在そのものが安心感につながる。
しかし課題もある。担い手の確保が難しいことだ。
厚生労働省によると、22年度末時点で民生委員は約1万3千人が欠員になっている。高齢期も働く人が増えたことや担い手の高齢化が進んだことが大きな理由だ。
民生委員は見守りが必要な高齢者らを訪ね、必要に応じて行政や福祉サービスに橋渡しする。そのほか交流サロンの開催や配食サービス、災害時要支援者の把握など役割は幅広い。やりがいを感じる一方で、地域課題が複雑化し負担が増している面もある。
政府は今年9月に高齢化対策の中長期指針「高齢社会対策大綱」を改定し、多様な選定方法を導入して担い手確保を目指す方針を示している。高知県内では民間企業などとの見守り協定の締結も進む。官民一体となり、地域社会の見守り力を高めたい。
人手を補うために情報通信技術(ICT)を使った新たなサービスも各地で広がっている。カメラ中継やメールでの安否確認など遠隔で見守ることができる。
中山間地域では過疎高齢化が深刻で、緊急時の対応が困難な場合がある。仁淀川町では3年前に独居高齢者の「孤独焼死」が起きた。近年は高齢者を狙った事件も相次ぐ。さまざまな手段で対策を進めたい。
一方で社会保障制度の充実も急務だ。しかし、制度を支える現役世代は減り、介護職などサービスの担い手は不足している。医療や介護の体制維持が難しくなっている。
国は、高齢者が住み慣れた地域で医療や介護を一体的に受けられる「地域包括ケアシステム」の推進を掲げる。取り残される人を出さない手だてを講じていく必要がある。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月15日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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