【筆洗】:新年の干支(えと)の辰(たつ)。巨大で力強いイメージがある…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:新年の干支(えと)の辰(たつ)。巨大で力強いイメージがある…
新年の干支(えと)の辰(たつ)。巨大で力強いイメージがあるが、宮沢賢治の物語(『手紙一』)に出てくる竜は穏やかで慈悲深い。こんな話である
■手紙 一 | 青空朗読 (aozoraroudoku.jp)
▼よほど悪事を重ねてきたのだろうか。1匹の竜がもう悪いことをしない、誰も悩ませないと誓った。竜の誓いは固い。ある日、竜が寝ていると猟師がやって来て、自分の美しい皮をはぎとろうとした
▼猟師を殺してはかわいそうだと竜は痛みをこらえ、されるがままになった。すっかり皮を失った竜に今度は虫がたかる。竜は黙って虫に自分を食べさせ、とうとう死ぬ。この竜が天上でお釈迦(しゃか)様に生まれ変わったのだという
▼悪事を働かず、力があっても、誰かのために身をささげる。心優しい竜に政治の理想を重ねたくなるが、辰年はどういうわけか政治とカネをめぐる大事件が目立つそうだ。政治疑獄のロッキード事件(1976年)、リクルート事件(88年)。昨年末からの自民党のパーティー裏金事件は今年どんな展開を見せるか
▼自民党は事件を受け、政治改革に向けた「政治刷新本部(仮称)」を設置するという。お飾りではなく、過ちを繰り返さぬ仕組みをどんなにつらくともつくらねばなるまい。見習うべきはあの竜だろう
▼「逆鱗(げきりん)」とは竜のあごの下に生えた逆さ向きのウロコ。これを触られると竜は激怒する。党の体質改善を急ぎたい。自民党はとうに国民の逆鱗に触れている。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】 2024年01月07日 07:17:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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