【社説①・12.15】:韓国大統領弾劾 混乱招いた責任重大だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.15】:韓国大統領弾劾 混乱招いた責任重大だ
韓国の国会は、「非常戒厳」を宣言した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案を可決した。
弾劾案を提出した野党に加え、与党の一部議員も賛成に回り、可決に必要な国会の在籍議員の3分の2を上回った。
世論の反発が尹氏だけでなく与党にも向けられ、造反した議員が相次いだと言える。
韓国憲法で戒厳令は戦時などの非常事態に限定されている。尹氏が国政の停滞を理由に宣言したことは、民主国家のリーダーとしてあってはならない対応だ。国民の怒りは当然である。
尹氏の責任は極めて重い。十分に自覚する必要がある。
尹氏の職務は停止され、韓悳洙(ハンドクス)首相が大統領の職務を代行する。憲法裁判所が180日以内に弾劾の妥当性を判断し、認めれば尹氏は罷免される。
また、司法当局は尹氏について内乱容疑で立件を視野に捜査を進めている。当面、国政の混乱は避けられまい。
韓国は早期に事態を収拾し、安定を取り戻してもらいたい。
与党は7日に行われた1度目の弾劾案採決では、投票をボイコットして廃案に持ち込んだ。
だが、尹氏は12日に出した国民向けの談話で与党が求める早期退陣を拒んだ。さらに非常戒厳は「統治行為だ」と正当化し「弾劾にも捜査にも堂々と立ち向かう」と主張したため、国民の反発がいっそう強まった。
弾劾に賛成する世論は7割を超える。与党は国民の怒りを軽視していたと言うほかない。
軍関係者らの証言では、尹氏は非常戒厳に際して与野党の幹部を拘束し、国会内の議員を引きずり出して弾劾案の解除要求決議を防ぐことを狙っていた。
また軍を中央選挙管理委員会に突入させ、野党が大勝した4月の総選挙が不正だとする疑惑を立証する計画だったという。
政敵を力で排除したり、選挙結果を根拠なく覆そうとしたりすることは民主主義の根幹の否定だ。決して認められない。
尹氏側近の金龍顕(キムヨンヒョン)前国防相や、警察庁長官らが内乱などの疑いで逮捕された。尹氏も内乱の疑いで告発され、出国禁止措置を受けている。
混乱の長期化が懸念される中ではなおさら、野党は党利党略を優先してはならない。
尹氏は日韓関係の改善に尽力し、日米韓で東アジアの安全保障環境の安定に取り組んだ。
米国でトランプ次期大統領が来月就任し、国際情勢は不透明さを増している。こうした時こそ隣国同士の日韓の連携が重要だ。両国政府は信頼関係の維持に努めることが欠かせない。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月15日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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