《社説②・01.08》:韓国政治の混迷 内向きの対立が目に余る
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・01.08》:韓国政治の混迷 内向きの対立が目に余る
国内外への影響を顧みぬまま、政治的思惑を優先させる姿勢が目に余る。
戒厳令を出した韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に対する捜査が混乱している。捜査当局が内乱の疑いで逮捕を試みたが、大統領警護庁によって拒絶された。裁判所が発布した令状の執行を巡って国家機関同士がにらみ合う異様な光景だった。
憲法裁判所での弾劾審理も先行きが見通せない。尹氏は弁護人をなかなか選任せず、求められた書類も期限までに提出しなかった。
捜査を妨害し、審理の引き延ばしを図っていると受け取られても仕方がない。戒厳令直後には「法的、政治的な責任問題を避けるつもりはない」と語っていたが、言行不一致と言うほかない。
懸念されるのは、大統領弾劾が政争の具となり、与野党支持者の対立が激化していることだ。尹氏の住む公邸の前では弾劾支持派と反対派が大規模な集会を開き、互いを非難しあった。
攻勢をかける野党は大統領代行となった首相も弾劾訴追し、与党幹部らを内乱宣伝の疑いで刑事告発した。尹氏の罷免で早期の大統領選になることを念頭に置き、「内乱に加担した与党」というレッテルを貼る思惑が見て取れる。
与党は、国会で多数議席を握る野党が強引な策を講じていると非難し、野党の言うがままに審理を急いでいると憲法裁への批判も強めている。尹氏も支持者に宛てた元日のメッセージで徹底抗戦を表明した。
北東アジア情勢は厳しさを増している。与野党が対立を強めるばかりでは、適切な対応を取ることが難しくなる。
北朝鮮は6日に日本海へ向けてミサイルを発射した。米軍拠点のあるグアム攻撃を視野に入れた新型だったことを示唆している。訪韓したブリンケン米国務長官は、ロシアが先進技術を北朝鮮に提供しようとしていると警告した。
米国では同盟の価値に懐疑的なトランプ氏が大統領に就任する。米新政権の下でも日米韓連携を機能させ続けるため、日韓の緊密な協力が必要な局面だ。
外交の足場を固める上で、内政の安定を取り戻すことは欠かせない。韓国の政治指導者には混迷の早期収拾を求めたい。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月08日 02:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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