【ぎろんの森・11.02】:自民1強崩壊の歴史的意味
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ぎろんの森・11.02】:自民1強崩壊の歴史的意味
衆院選で自民、公明の与党が惨敗しました。かろうじて政権にはとどまる見通しですが、少数与党への転落です。
特筆すべきは衆院に1996年、現行の選挙制度が導入されてから初めて、最も議席の多い第1党が連立しても過半数に達しないことです。
与党が参院選で負け、参院で与党少数の「ねじれ国会」はこれまでも度々ありましたが、衆院で少数与党のねじれ国会は極めて異例です。
小選挙区制中心の選挙制度は、議席に反映されない「死に票」が多く、民意を過度に集約すると指摘されてきました。実際、2005年の郵政解散以降、17年の衆院選まで第1党の議席占有率は6割を超えていました。今回の自民党は41%にとどまります。12年以降の「自民1強」時代の終わりにほかなりません。
本紙は10月29日社説で「幅広い合意形成なくして政策を遂行できない状況を、熟議の政治を取り戻す好機に転じるべきだ」と指摘しました。
11日予定の首相指名選挙で仮に石破茂首相が再任しても少数与党として極めて厳しい政権運営を強いられます。
法案などを衆院で通過させるには、自公以外に野党側の協力が欠かせません。前政権までのように、政権中枢の意向を押し通すために、国会多数の「数の力」で法案などを強引に成立させることはできなくなるのです。
特に予算や条約は、衆院議決の優越が憲法に定められていますが、そもそも衆院で可決できなければ、参院に送付することすらできません。
少数与党は、これまでの1強政治の傲慢(ごうまん)な姿勢を改め、野党の訴えにも耳を傾けて、国会や政権を丁寧に運営することが必要になるのです。
こうした選挙結果をもたらしたのは、有権者が裏金事件はもちろん、これまでの自民1強政治に猛省を促したからにほかなりません。
日本に限りませんが、国民を政権中枢の意向に沿う「味方」と沿わない「敵」に分けて、味方は優遇し、敵は徹底的に攻撃する「分断政治」が横行してきました。
本紙は今、自民1強を終わらせ、日本政治を分断政治から脱却させ得る歴史的転換点に立っていると考えます。それを促したのは私たちの民意です。政治は有権者の手で変えることができる。今回衆院選の重い教訓です。 (と)
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ぎろんの森】 2024年11月02日 07:28:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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