【ぎろんの森・04.20】:「人間とは何か」考え続けて
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ぎろんの森・04.20】:「人間とは何か」考え続けて
読者から重い問い掛けが本社に届きました。
東京新聞は17日社説「死刑執行の通知 人間らしい最期の時を」=写真=で「当日の通知では執行までに残された時間は限られる」「国際的には非人道的な扱いとみなされる。この運用は見直されるべきだ」と指摘したところ、読者から「次は『人間はどういう存在なのか。人間は何か』ということを真正面から取り上げる社説が読みたい」との要望をいただいたのです。
人間とは何か。自分自身、学生時代から新聞記者、そして社説を書く論説委員の仕事を通じて40年以上考え続けてきましたが、いまだに答えは出ていません。
人類誕生以来、哲学者をはじめとする数多くの先達が挑んできた設問ですから、すぐに答えを見つけられないのは当然とも言えます。
そういえば吉田拓郎さんの歌詞に「人間なんて ラララ ラララララ」とありましたね…。少し脱線しました。
手っ取り早く、碩学(せきがく)に尋ねてみると、17世紀のフランスの思想家、パスカルの名言に「人間は考える葦(あし)である」があります。人間は自然の中では弱い存在だが、考えることができるという強さも持つ、という意味だそうです。
やはり自分で突き詰めて考えることが、人間らしさ、人間の営みなのでしょう。今はやりの生成AI(人工知能)も利便性向上の一方で、人間自身が考えたり書いたりすることの意味を問いかけているような気がします。
ところで安倍晋三政権当時の2015年、文部科学省が国立大学法人に、教員養成系と人文社会系の学部・大学院の廃止や見直しを求める通知を出したことがあります。
人間とは何か、を追求したり、その人間を教育する人材を育てる学問を、国は無用と考えているのでしょうか。人間とは何かなんて突き詰める必要はない、と言っているように聞こえてなりません。
「人間とは何か」を真正面から取り上げる社説を書き上げるにはまだ年月がかかりそうです。その日まで、読者の皆さんとともに考え続けたいと思っています。 (と)
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ぎろんの森】 2024年04月20日 07:08:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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