【社説】:宮城・福島で震度6強 被災地支援と復旧急げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:宮城・福島で震度6強 被災地支援と復旧急げ
3・11から11年を迎えて記憶を新たにしてから、わずか5日だった。「またか」と身震いした人も多いのではないか。
16日深夜、宮城県と福島県で最大震度6強を観測したマグニチュード(M)7・4の地震である。注意報が発令された津波は小さかったが、広範囲な揺れで多くの死傷者が出た。家屋倒壊や公共施設の破損、大規模な停電や断水などライフラインへの影響も相次いだ。さらなる地震発生のほか、天候の悪化による二次被害も懸念される。
政府や自治体は、被災者支援が後手に回った過去の災害の教訓を生かすべきだ。両県に災害派遣された自衛隊の力も生かして被害の全容を早急に把握し、医療ケアや生活物資の提供などニーズに沿った支援に全力を挙げてほしい。コロナ禍はまだ収束していない。感染症対策への目配りも必要だろう。
目を引いたのが東北新幹線の被害の大きさだ。下り列車が福島―白石蔵王間で脱線した。幸いけが人は出なかったが、新幹線の営業運転中の脱線は2004年の新潟県中越地震以来だ。レールのゆがみや柱、橋脚などの破損も確認された。
中枢都市の仙台を挟む区間は運休が続く。補修工事が長期化すれば、地域経済への打撃は避けられまい。JR東日本は脱線事故の検証とともに、グループ各社の力を借りるなどして復旧を急いでもらいたい。
また工場、農地といった産業基盤の被害の全容も判明してこよう。状況によっては、政府は激甚災害への指定をためらうべきではない。
もう一つ懸念されたのが原発への影響だ。とりわけ廃炉作業が続く東京電力福島第1原発では使用済み核燃料プールにつながるタンクの水位が低下したため冷却を一時停止した。処理水などを保管するタンク85基の位置もずれていたという。
東電側は安全性は保たれていると説明する。ただ東日本大震災で損傷を受けたまま廃炉を進める第1原発に、巨大地震へのもろさはないのだろうか。地震直後から未明にかけた情報発信も十分だったとは思えない。
福島の動向は、チェルノブイリと並んで世界的な関心事だ。経済産業省は公式ツイッターなどによるタイムリーな発信をするよう東電を指導した。重い教訓としてもらいたい。
気になるのが、ある意味で虚を突かれたこの地震のメカニズムだ。日本列島の下に沈み込む太平洋プレートの内部深くが震源であり、東日本大震災とは別のタイプという。ほぼ同じ場所では昨年2月にM7・3の地震が起き、今回の揺れの2分前にもM6・1とやや小さい地震が発生している。こうした地震の連続は何を物語るのか。
少なくとも列島周辺に潜む地震リスクをあらためて浮き彫りにした、とはいえよう。
瀬戸内海に津波襲来が予想される南海トラフ巨大地震のことも頭をよぎる。この1月に大分県と宮崎県で震度5強を観測した地震は巨大地震の想定震源域には入っていたが、直接の関連があるとは認められなかった。しかし油断は許されない。
中国地方では数多くの活断層のリスクも背負う。いつ、どこで地震に遭うかは分からない。身の回りの防災対策を常に点検し、備えておきたい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年03月18日 06:46:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます