【社説①】:政務三役辞任 無責任な人事の帰結だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:政務三役辞任 無責任な人事の帰結だ
改造内閣の発足から2カ月足らず。山田太郎文部科学政務官に続き、柿沢未途(みと)法務副大臣が辞任した。岸田文雄首相が「適材適所」と繰り返してきた政務三役人事の無責任ぶりが極まった。
柿沢氏は4月の東京都江東区長選で当選した木村弥生区長(辞職表明)の陣営に、公職選挙法で禁じられた有料のインターネット広告を出すよう提案したという。法秩序を維持すべき法務省のナンバー2が、選挙の不正に絡む問題で辞任したことは深刻だ。
選挙でのネット利用に関する公選法の規定が複雑だとはいえ、法律をつくる立場の国会議員自身が違法性を認識していなかったとは言い訳にもならない。
柿沢氏が現職副大臣として10月31日の参院予算委員会を欠席したことも看過できない。
憲法は閣僚が国会から説明を求められた場合の出席義務を定め、副大臣もこれに準じる。辞表提出後だったにせよ、予算委からの出席要求に応じなかったのは国民に対する義務を怠ったに等しい。
柿沢氏は衆院議員としての進退を自ら判断すべきだ。政府と与党が国会運営に緊張感を欠いていることも指摘せざるを得ない。
山田氏は週刊文春に報じられた女性との不適切な関係を認めた。金銭の支払いは否定したが、買春を疑われる人物を教育行政の要職に就けたとは驚きだ。首相は起用の際、情報を把握していなかったのか。参院選比例代表に擁立した自民党の責任は極めて重い。
首相は副大臣・政務官に当初、女性を起用しなかったことについて、閣僚や首相補佐官の人選も含めて「適材適所で老壮青、男女のバランスになった」と説明していたが、自民党執行部や各派閥の推薦をそのまま受け入れたに過ぎなかったのだろう。
首相がいくら「任命責任を重く受け止めている」と述べたところで、説得力は感じられない。
首相が指示した減税策には批判が相次ぎ、政務三役人事の無責任さも露呈した。国民は迷走する政権に不信感を抱き、首相の政権運営能力にも疑問を持ち始めているのではないか。首相は自らが置かれた状況を直視すべきだ。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年11月02日 07:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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