【社説・11.26】:日米二正面作戦計画 「戦場化」の流れ止めよう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.26】:日米二正面作戦計画 「戦場化」の流れ止めよう
台湾有事の際、米軍のミサイル部隊を南西諸島とフィリピンに展開し、中国に対抗する二正面の共同作戦計画を、米軍と自衛隊が12月中に策定しようとしていることが分かった。有事には広大なエリアが「戦域化」し、周辺住民が巻き込まれることは必至だ。
国民への説明もなくこのような作戦計画を策定するのは、平和憲法を無視した「軍部」の暴走ではないか。戦場を想定される地域に生きる者として断じて受け入れられない。戦場化の流れを何としても止めなければならない。
関係筋によると、南西諸島には高機動ロケット砲システム「ハイマース」を保有する米海兵隊が展開し、「遠征前方基地作戦(EABO)」に基づき有人島に臨時拠点を設ける。自衛隊は弾薬や燃料の提供など後方支援を担うとみられる。
フィリピンには米陸軍の多領域任務部隊傘下のミサイル部隊を置く。南西諸島とフィリピンを結ぶ「第1列島線」に沿ってミサイル網を設け、2方向から中国艦船などの展開を阻止する狙いだ。
10月下旬から11月初めに実施された「キーン・ソード25」では、沖縄の民間空港3カ所、民間港湾5カ所のほか公道などを自衛隊や米軍が使用した。米軍は石垣島にハイマースを持ち込み、与那国島にオスプレイが飛来した。昨年12月には、米海兵隊の現役幹部が、有事に沖縄の隊員の家族を本国に撤収させるよう提言した論文を雑誌に発表していた。島々を戦場にすることを前提に事が進んでいる。
台湾海峡の緊張が高まっているのは確かだ。台湾の頼清徳総統が中華民国建国記念日の10月10日に「一つの中国」を認めない立場を表明したことに対抗して、中国が台湾を取り囲む形で大規模な演習を行った。南シナ海では、中国が一方的に領有権を主張して基地を置き、フィリピンなどと船舶の接触などを繰り返している。演習の応酬や接触には偶発的な戦闘になる危険がある。各国、各当事者は、戦争を回避するために慎重に行動すべきである。
台湾をどう統一するか、あるいは独立するかは、中国と台湾の問題である。日本は1972年の日中共同声明以来「一つの中国」を理解し、尊重する。本来は事態が平和的に推移するよう見守り、戦争が起きないよう積極的に働きかけるべき立場である。
米国は、中国が武力侵攻する場合、介入する姿勢を示してきた。そこに日本を巻き込もうとしてきた。日本政府は、2014年に集団的自衛権の行使を容認し、22年には敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有も決定した。米中が戦争になれば、在日米軍基地も自衛隊基地も攻撃対象になる状況になってしまった。
南西諸島を戦場にしないために、日本は平和憲法と専守防衛に立ち戻り、戦争準備ではなく、平和外交に精力を注ぐべきである。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月26日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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