《社説②・01.27》:介護事業者の倒産最多 持続可能な仕組み構築を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・01.27》:介護事業者の倒産最多 持続可能な仕組み構築を
高齢化が加速する中、介護サービスの先細りを食い止める対策を急がねばならない。
民間調査機関によると、昨年の介護事業者の倒産は前年から4割以上増え、過去最多の172件に上った。休廃業や解散も最多の612件だった。大半が従業員10人未満の零細業者だ。

コロナ禍で利用控えが進んだ。経営を支えるための国の補助などが終了した上、物価高騰の直撃を受けて立ち行かなくなった。
昨年の介護報酬改定も追い打ちをかけた。訪問介護のサービス単価が引き下げられ、地域の高齢者宅を巡回する小規模の事業者は一層苦しくなった。
人手不足の影響も大きい。2023年度の介護職の求人倍率は4・07倍と高く、訪問介護に限れば14倍を超える。厚生労働省によると、23年10月時点の介護職員数は212万人で、00年の介護保険制度開始以降、初めて減少に転じた。

最大の要因が低賃金だ。介護職員の給与は全産業平均より月額で約7万円低く、格差は縮まらない。介護サービスは公定価格のため、人件費の引き上げ余力には限界がある。
要介護者数がピークを迎える40年には、272万人が必要とされる。このままではケアを受けられない「介護難民」が大量に生まれかねない。介護報酬の引き上げ分を職員の待遇改善に回す仕組み作りが欠かせない。
介護職を目指す外国人材の日本語習得や、ロボットなど先端技術導入への支援も進めるべきだ。
事業者側が経営基盤を強める努力も求められる。
新潟県十日町市と津南町には、11の社会福祉法人が連携する「妻有(つまり)地域包括ケア研究会」がある。8年前から備品購入や職員研修に合同で取り組み、コスト削減を図っている。行政も補助金で支援し、地域の介護提供体制の維持につながっているという。
職員の意欲を高める効果も出ており、10%超だった離職率は大きく下がった。将来の人材育成のため中高生を対象とした出前授業やサマーキャンプも開いている。
事業者の経営安定と担い手の確保が、介護サービスの生命線だ。持続可能性を高めるために、官民が知恵を絞る必要がある。
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