【政局】:高市早苗大臣と岸田総理の「ガチバトル」勃発…「超重要法案」が先送りされてしまった「情けない理由」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政局】:高市早苗大臣と岸田総理の「ガチバトル」勃発…「超重要法案」が先送りされてしまった「情けない理由」
岸田文雄首相と高市早苗経済安全保障担当相の熾烈な権力闘争が、経済安保の強化に向けた議論に影を落としている。米中対立の激化を受け、先端技術の開発や機密情報の保全徹底は待ったなし。にもかかわらず、経済安保分野で日本は大きく出遅れている。
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象徴的なのは、機密情報を欧米並みに厳しく管理するための新制度創設を盛り込んだ、経済安保推進法改正案の今国会への提出が見送りとなったことだ。 その背景には、高市氏の岸田首相に対する挑発的とも言える姿勢や、4月に統一地方選を控える中、世論を分断しかねない法案を先送りしたい官邸側の意向がある。
◆「セキュリティー・クリアランス」とは?
経済安保は、政府が暮らしや経済活動に与える脅威を取り除き、医療品やエネルギー、半導体、食料など日常生活に欠かせない重要物資を安定的に供給することを指す。この概念が定着したきっかけは、新型コロナ感染拡大でマスクがドラッグストアなどの店頭から消えたことだ。
2020年春には中国での感染爆発が影響し、中国製マスクの日本への出荷が急減した。日本は大半を中国に依存していたことが仇となり、多くの日本人はマスクの入手が困難となったため、布マスクなどで当座をしのいだ人も多かった。
さらには、サプライチェーンの混乱で半導体や医療機器の調達も滞った。こうしたことから、日本はこれまでさまざまな物資を輸入に頼っていたが、国内生産への回帰が必要との認識が急速に広がった。
政府は22年、経済安全保障推進法を制定した。重要物資の国内生産や備蓄に取り組む企業を支援することで、サプライチェーン強化につなげるのが狙いだ。半導体や肥料、手術に使う抗菌薬などを「重要物資」に指定し、供給体制の拡充を図っている。
サプライチェーン増強の取り組みが進む一方、政府内で議論が紛糾しているのが、機密情報を取り扱う資格である「セキュリティー・クリアランス(SC)」を創設するかどうかという問題だ。SCを導入すれば、当局が民間人の身辺調査を行うことになり、人権侵害にもつながりかねない。そのため、導入に前のめりな高市氏と、慎重な岸田首相の対立が生じているのである。
◆高市大臣「ツイッターで愚痴」連発
高市氏は昨年8月、自民党政調会長を退任し、経済安保相として入閣した。だが内閣改造直後、自身の入閣を巡り「今も辛い気持ちで一杯です」とツイッターに投稿。政調会長を事実上更迭されたことに対する不満を表明したとみられる。
その後も高市氏の放言は止まらなかった。昨年12月、岸田首相が防衛費増額の財源の一部を増税で賄う方針を掲げたことについては、またしてもツイッターで「総理の真意が理解できません」と不満をあらわにした。企業の賃上げマインドを阻害しかねないとして首相を痛烈に批判した形で、閣内不一致との見方が永田町で広がった。
高市氏は投稿の真意を記者団に問われると「一定の覚悟を持って申し上げています」と強調。首相周辺は「辞表を書いてから言え」と非難し、対立はエスカレートしていった。高市氏はさらに「罷免されるならそれはそれで仕方ありません」とまで述べ、首相との関係は完全にこじれた。
高市氏はSC創設を盛り込んだ経済安保推進法改正案の今国会への提出を目指していた。ただ、岸田内閣の支持率が低空飛行を続ける中、政府与党内では今年4月の統一地方選への悪影響を避けるため「体力を削ぐ難しい法案はやりたくない」(自民党幹部)という空気が漂っていた。そこに高市氏と首相周辺との対立がダメ押しとなり、法案提出が先送りになった格好だ。
◆岸田総理が「SC」を避けたいワケ
そもそもSCとはどういう仕組みなのか。日本では聞き慣れない言葉だが、軍事転用可能な先端技術などの情報にアクセスできる民間人を政府が認定する制度のことだ。
中国などの独裁国家への情報漏洩を防ぐのが狙いで、欧米は導入済みだ。日本にSCがないため、欧米の共同研究に参加できない事例が後を絶たず、国際競争力は低下の一途をたどっている。
資格を付与する際には、政府は対象者の借金の有無、海外渡航歴などの報告を求めることになるとみられる。人権侵害につながる懸念もあり、公明党や政府内の一部にも導入に慎重論がある。
安倍内閣(当時)が13年に特定秘密保護法を導入した際には、「国民が処罰される」との誤解が広がり、支持率が大幅に低下した。政府・与党はSCを推し進めることで、特定秘密保護法のときのような事態に陥ることを警戒している。
ただ、そうは言っても、日本が経済安保分野で「先進国入り」するためにもSC導入は待ったなしの課題だ。
高市氏の粘りもあり、政府はSC創設を検討する有識者会議での議論を始めた。岸田首相は「今後1年程度をめどに、可能な限り速やかに検討作業を進めてください」と高市氏に指示を出した。
丁寧な議論を重ねるのは確かに重要だが、支持率を気にして世論に迎合すれば、制度は骨抜きになる危険性をはらむ。米中対立の狭間で揺れる中、経済安保で日本の優位性を高めることができるか。岸田政権の覚悟が問われる。
元稿:現代ビジネス 主要ニュース 政治 【政局・岸田政権・担当:週刊現代編集部】 2023年03月14日 07:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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