【社説】:地方議員へのセクハラ 根絶できる仕組み整えよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:地方議員へのセクハラ 根絶できる仕組み整えよ
政治団体・大阪維新の会がおととい笹川理(おさむ)大阪府議を最も重い除名処分にした。2015年のハラスメント行為について綱紀委員会で本人らから聴取し、パワハラやストーカー行為、セクハラを認定した。深刻な人権侵害であり、当然だろう。
当時、府議2期目だった笹川氏は、維新で1期目だった女性の大阪市議に、LINE(ライン)で威圧的なメッセージを何度も送ったり、深夜に事務所前に車を止めて待ったりした。
さらに先月の週刊文春の報道では、性的な関係を迫るメッセージまで送ったとされる。笹川氏は「記憶にない」とするが、市議は「事実だ」と言う。
維新の一連の対応は十分だったと言えるだろうか。
というのも8年前に市議から申告を受けていたからだ。幹事長だった松井一郎前大阪市長は笹川氏を厳重注意にしながら、つきまといの具体的言動を精査しなかった。報道で発覚した今回も当初、事実関係を調べずに再び厳重注意にとどめていた。
笹川氏は4月の統一地方選の府議選で4選し、府議団代表に就任した。ハラスメントの発覚を受け、代表を辞任する事態に追い込まれた。維新が被害の申告を受けていながら、トップに選んだこと自体が問題だろう。
後手に回った対応を見ると、被害を深刻に受け止めたとは思えない。厳正に対処するよう社会は変化しつつあるが、ずれを感じる。猛省を求めたい。
維新は所属全議員を対象に、維新の議員らからパワハラやセクハラ被害を受けたことがないか調査し、公表する方針を示した。統一選で躍進し国政で野党第1党を目指す日本維新の会の母体でもある。再発防止の責任の重さを自覚すべきだろう。
何よりハラスメントは被害者個人による回避や解決は難しいとの認識が必要だ。市議は笹川氏と選挙区が重なり「1期目でことを大きくしたくなかった」「トラブルが出ると活動しにくくなる」と考えたと当時を振り返る。弱い立場につけ込まれ、防げなかった実態が浮かぶ。
だからこそ政党が根絶させる仕組みを整える必要がある。相談窓口を常に設け、被害や疑惑があれば速やかに調査する。厳正に処分し、公表することで「許さない」との姿勢を示す。この繰り返しが大事だ。
ハラスメント被害は何も、大阪に限った話ではない。
中国5県の地方議会でも、中国新聞社が女性議員を対象に2021年に実施したアンケートで、回答者の4割強が被害に遭ったとした。ハラスメントを受けた相手は所属議会の議員が最も多かった。全国では、地方議員の女性の6割近くが被害を経験し、男性の倍近くだったとの内閣府の調査がある。はびこっていると言っていい。
2年前に政治分野の男女共同参画推進法が改正され、自治体にもセクハラ防止対策が義務付けられた。福岡県議会と大阪府議会は、根絶を目指す条例を成立させている。しかし、独自の防止対策を実施する都道府県議会は約3割と少ない。議会が圧倒的な男性社会であることが影響していないか。
ハラスメントは政治家を志す女性の大きな障壁だ。それを崩して女性議員を増やすため、議会自ら研修や相談窓口設置などの対策を急がねばならない。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年06月05日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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