【余禄】:和歌山出身の博物学者、南方熊楠は…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:和歌山出身の博物学者、南方熊楠は…
和歌山出身の博物学者、南方熊楠(みなかた・くまぐす)は19世紀末、キューバで日本の軽業師と出会い、親交を結んだ。江戸以来の曲芸や手品は世界的にも水準が高かったそうだ。幕末から明治にかけ、多くの日本人が海外に出てサーカスの巡業に参加した
▲日本初のパスポート(旅券)は1866年、第1号の手品師、隅田川浪五郎(すみだがわ・なみごろう)ら18人の曲芸一座に発給された。技に魅せられた米国人が米外交官を通じて幕府を動かしたらしい
▲翌年には浮世絵にも描かれた江戸のスター曲芸師、早竹虎吉(はやたけ・とらきち)一座が渡米した。アニメやマンガ、J―POPなど今では世界的に人気を集める日本発の大衆文化のはしりだろうか
▲コロナ禍で失われたのはインバウンドだけではない。日本人の海外旅行も激減した。コロナ前に年間450万以上あった旅券の発行数も昨年は136万余。出国数が2000万人の水準に戻るのは容易ではない
▲「そろそろ海外行こう」。大手旅行会社がテレビCMを流している。物価高や円安もあり、それどころではないという人も多いだろう。だが、内向き志向が定着しては活力が出ない
▲「日本人は日本の国境外に帰化し外国人となり果つるもかまわず」。国家の枠を超えて研究を深めた南方の若き日の言葉だ。そこまでの覚悟がなくても海外で見聞を広げることには意義がある。日本人の旅券取得率は17%で欧米よりかなり低い。オンライン申請も可能になった。この3年、海外に縁のなかった若い人たちはとりあえずパスポートを入手してみては。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2023年03月28日 02:06:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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