【社説】:②訪日外国人減少 安心できる旅行の環境作ろう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:②訪日外国人減少 安心できる旅行の環境作ろう
台風や地震など自然災害の多い日本へ、外国人旅行者に安心して来てもらう。そのために、官民で知恵を絞りたい。
9月に日本を訪れた外国人旅行者が、5年8か月ぶりにマイナスとなった。
関西空港を一時閉鎖に追い込んだ台風21号や、最大震度7を記録した北海道地震などが響いた。
大切なのは、訪日客の減少を長引かせないことだ。災害発生時の外国人に対する支援充実や、風評被害の払拭(ふっしょく)など、きめ細かい対策が求められる。
政府は2020年に訪日客を4000万人にする目標を掲げる。18年は初めて3000万人を突破するかどうかが注目されており、災害による低迷は痛手である。
客足を戻すには、災害時の教訓を生かすことが欠かせない。
台風21号など一連の災害では、被災状況さえ把握できず、身動きが取れない訪日客が目立った。
北海道地震で困ったことを訪日客に尋ねたところ、大規模停電でスマートフォンを充電できなかったことが上位を占めた。被災時に希望する対応は、スマホの充電ポイントの提供がトップだった。
スマホは今や、情報通信に決済機能を兼ね備えたライフラインである。観光庁は全国の主な観光案内所に、非常用電源の設置費を補助することを決めた。生活の利便性を維持するため、民間事業者も対応を強化してもらいたい。
母国語のマニュアルを配布してほしいとの要望も多かった。
大阪北部地震の後、大阪府は英語と中国語の災害対応パンフレットを作り、空港や主要な駅に置いている。こうした取り組みを全国に広げることが重要だ。
人気の観光地を抱える自治体が地域防災計画を策定する際には、訪日客の存在も考慮すべきだ。公共交通機関や宿泊施設に対し、災害を想定した多言語表示や従業員教育を促す必要がある。
北海道地震では、札幌市の避難所に大勢の外国人が押し寄せ、増設した避難所も次々と満杯になった。全国の観光地にとって、他山の石となるのではないか。
災害時に母国の領事館に駆け込む人も多かったが、情報不足で十分な手助けを受けられない例が相次いだ。政府や自治体が、大使館や領事館と避難態勢について情報交換しておくことが大切だ。
風評被害も払拭したい。今も北海道旅行に二の足を踏む外国人は少なくない。平穏な日常を取り戻した姿を、SNSなどで世界に発信する取り組みも有効だろう。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2018年11月05日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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