【社説・09.10】:兵庫県知事 批判を受け止め進退判断を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・09.10】:兵庫県知事 批判を受け止め進退判断を
違法性の疑いが深まる自らの行いへの批判を真摯(しんし)に受け止め、知事としての進退を判断すべきではないか。
兵庫県の斎藤元彦知事を巡る疑惑告発文書問題で、「与党」として支えてきた日本維新の会がきのう、斎藤氏に対し、辞職するよう申し入れた。
共に知事選で推した最大会派の自民党も辞職を求める方針を決めており、県議会の全会派が退場を求める異例の事態だ。斎藤氏は留まる意向を改めて示したが、厳しい立場に追い込まれている。
問題の焦点は、斎藤氏のパワハラ疑惑などを告発した元県幹部の男性を公益通報の保護対象とせず、懲戒処分とした対応の適否である。男性は処分を受けた後に自死したとみられる。
県議会調査特別委員会(百条委)では、斎藤氏が告発文書の作成者を特定するよう指示し、懲戒処分を急いだとする側近らの証言が相次いだ。
出席した専門家は、公益通報に当たらないとの知事側の判断が拙速とし、通報者への不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法に違反すると断じた。
一方、斎藤氏は「文書は真実相当性がない」と繰り返し、違法性を否定している。
だが、自らも認めた告発者特定の指示自体が、「犯人捜し」を禁じた法の逸脱なのは明らかだろう。しかも会見で、「うそ八百」と非難した告発の内容に事実があることは判明しており、もはや強弁でしかない。
告発をされた知事が下した処分を受け、通報者が自死するという最悪の結果を招いた責任は極めて重大である。県民の不信と県政の混乱を招いていることを自覚すべきだ。
斎藤氏の「パワハラ」については、百条委が実施した県職員アンケートで、見聞きしたとする回答が4割に上った。斎藤氏は一応の反省の弁は述べたものの、「必要な指導だった」と基本的に自らの非を認めていない。ハラスメントの認識や想像力が乏しく、知事の適性に疑問を感じざるをえない。
他にも告発文ではプロ野球阪神とオリックスの優勝パレードを巡る不正な補助金増額の疑惑もあり、看過できない。徹底して全容を明らかにすべきだ。
斎藤県政を生んだ2021年選挙で推薦した自民、維新の責任は免れない。特に維新は問題発覚当初、百条委の設置に反対。党の共同代表を務める吉村洋文大阪府知事も含め、実質的に擁護の姿勢をみせた。
県議会では、斎藤氏が辞職を受け入れない場合、不信任案を提出する構えだ。可決されると、斎藤氏が議会を解散する可能性があるが、全会派が「反斎藤」ならば、改選後も続投の道は見いだせない。
新年度予算の編成や、来年の阪神大震災30年を控える中、これ以上混乱を長引かせるべきではない。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年09月10日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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