【社説・09.20】:斎藤知事不信任/身を引く決断するときだ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・09.20】:斎藤知事不信任/身を引く決断するときだ
兵庫県の元西播磨県民局長が斎藤元彦知事らを文書で告発した問題で、県議会の全議員86人が提出した知事の不信任決議案が可決された。
不信任の理由として議会側は「県政に深刻な停滞と混乱をもたらした政治的責任」などを挙げた。特定の政策ではなく、言動や資質に不信任を突きつけるのは極めて異例だ。
知事は10日以内に辞職・失職か議会解散かの判断を迫られるが、「結果は重く受け止める。県にとって何が大事か考えたい」と明言を避けた。解散を選んでも、改選後の議会で不信任決議案が再提出され、出席議員の過半数が賛成すれば失職する。
議会を解散し信を問う大義が乏しく、県民の理解は得られまい。知事は全会一致での決議を真摯(しんし)に受け止め、身を引く決断をするべきだ。
問題の発端は、元県民局長の男性が3月、知事のパワハラや企業からの贈答品受領など7項目の疑惑を告発した文書を匿名で作成し、報道機関などに配布したことだ。これに対し知事は会見で文書を「うそ八百」「事実無根」などと非難した。男性は4月、同様の内容を県の公益通報窓口にも通報した。
しかし県は内部公益通報に基づく調査結果を待たずに内部調査のみで文書を「誹謗(ひぼう)中傷」と認定し、男性を懲戒処分にした。調査の中立性を疑問視する声が噴出し、県議会は調査特別委員会(百条委員会)を設置した。男性は百条委での証言を前に死亡した。自死とみられる。
知事の責任の核心は文書を公益通報として扱わなかった対応にある。公益通報者保護法は告発を理由とした不利益な扱いを禁じる。だが知事らは文書が公益通報に当たるかを検討しないまま通報者の特定を急ぎ、調査、処分へと失態を重ねた。
男性の文書配布について、知事は「真実相当性がなく、外部公益通報には当たらない」と繰り返し、処分の正当性を主張してきた。一方で百条委の証人尋問では職員に大声を出したり、深夜や休日に会議用アプリのチャットで職員らを叱責(しっせき)したりしたことは認め、反省の弁を述べた。ただ委員の質問に「道義的責任が何か分からない」と答えるなど、一連の対応や言動には知事としての適性に疑問を抱かざるを得ない。
知事は県議会各会派などの辞職要求にも「改革を進めたい」と続投に強い意欲を示してきた。今、そうした姿勢がどれだけ県民の支持を得られるだろう。
総務省によると、知事不信任案の可決は全国5例目で、議会を解散したケースはない。県議選になれば16億円の費用がかかるという。知事は県民生活への影響と県政の停滞をこれ以上長引かせてはならない。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年09月20日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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