【社説①・12.02】:米国の関税強化 ルール破壊は許されぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.02】:米国の関税強化 ルール破壊は許されぬ
米国のトランプ次期大統領が輸入品に対する関税引き上げに当選後初めて言及し、各国政府や市場に波紋が広がっている。
今も高関税の中国輸入品で10%引き上げるほか、来年1月の就任時には大統領令でカナダとメキシコに25%を課すという。
両国経由で中国からの麻薬、不法移民が流入したことを理由とするが関税とは無関係だ。脅しに似た横暴なやり口である。
カナダ、メキシコとも反発するが、一方でトランプ氏と水面下の交渉を始めたという。以前からトランプ氏は日本を含む全ての国に10~20%を課すとも述べており、懸念は増す。
世界一の経済大国が一方的な関税を禁じる世界貿易機関(WTO)のルールを破壊することは許されない。石破茂首相は各国指導者と連携して暴走を食い止める方策を図るべきだ。
自らを「タリフマン(関税の男)」と呼ぶトランプ氏は前回政権でも対外交渉に利用した。
特に対中国では不公正貿易の制裁として2018年に多くの品目に25%の関税を課した。バイデン政権も引き継ぎ、今年9月には電気自動車(EV)に対して税率を100%に上げた。
今回標的となったカナダとメキシコは、米国との間で一定の条件を満たせば関税がゼロとなる協定を結んでいる。
このため両国を通じ中国製の部品を使った自動車などが流入することに、トランプ氏は強い不満を持っていたとされる。
日本の大手メーカーも両国で現地生産を進める。特に人件費の安いメキシコではトヨタ、日産などが完成車工場を抱え対米輸出拠点となっている。対岸の火事ではない。
トランプ氏の狙いは貿易赤字解消や雇用拡大の国内向けアピールともみられ、西側諸国にも強硬姿勢を取りかねない。
ただし言葉通り関税を強化すれば、米国内の輸入品価格に上乗せされ、選挙中自ら攻撃した現政権以上のインフレを招く恐れがある。金利上昇も想定され消費者はローン返済に苦しむ。「米国第一」どころではない。
福島第1原発の処理水放出を理由にした中国向け水産物禁輸で、昨年は米国が日本の最大輸出国となった。今年に入り道内から米国へのホタテなど魚介類輸出は前年比で倍増している。
環太平洋連携協定(TPP)不参加の米国は日本と個別の貿易協定を持つが、枠組みを外れ農産物輸入を迫る恐れもある。
相手の動きに右往左往し個別交渉で屈することなく、通商秩序全体を見据えて欧州などとの多国間協議で対抗してほしい。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月02日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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