【社説②】:欧州で右派台頭 人権・多文化、守らねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:欧州で右派台頭 人権・多文化、守らねば
オランダ下院総選挙で極右「自由党」が第1党になり、連立協議に入った。欧州では同党をはじめ欧州連合(EU)の基本理念や政策、移民に反対する右派勢力の台頭が相次いでいる。
右派の台頭は、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃を巡る欧州の対応にも影を落とす。国際協調に向けて揺らぎ始めた欧州の結束を再び固めなければなるまい。
欧州では政情不安定の中東などからの移民難民が増え続け、EUに不正入域した人は今年約35万5千人と2016年以降で最多。ウクライナからの避難民流入も相次ぐ。各国とも負担を強いられ、市民らの不満も増大している。
オランダではルッテ前首相が12年以上にわたって在任し、EU内でも調整役を務めていたが、難民流入抑制案で連立政権の合意ができず、7月に退陣していた。
こうした状況に、自由党のウィルダース党首は「移民難民の『津波』を終わらせる」などと訴え、勢力を伸ばした。さらにEUからの離脱も主張し、ウクライナへの軍事支援にも否定的だ。
自由党の獲得議席は半数に届かず、連立協議は難航が予想されるが、自由党中心の連立政権が本格稼働すれば、EUの結束に影響することは避けられないだろう。
強硬保守政権が続いていたポーランドでは10月の総選挙でリベラル派勢力が勝利し、政権交代したが、オランダでの自由党伸長は、右派勢力が依然、欧州で勢いを失っていないことを示す。ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢」の支持率が、ショルツ首相の与党社会民主党を大きく上回る。
ウクライナのEU加盟の可否が議題となった今月のEU首脳会議では、反対する強権政権のハンガリーを棄権させ、加盟交渉の開始を決定した。EUの結束が揺らいだ象徴的な出来事でもあった。
EUの基本理念である人権重視や多文化協調を守り、欧州の結束を維持するためにも、ポピュリズム(大衆迎合主義)政権の乱立を許してはなるまい。
EUは今月、入国を厳格化し、加盟国の受け入れ負担を公平にする制度作りで合意し、フランス国民議会(下院)が不法移民規制強化法案を可決するなど各国も対応に乗り出している。移民難民の人権を守りつつ、市民の不満も抑える対策に知恵を絞りたい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年12月27日 07:44:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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