【社説・11.08】:北朝鮮のロシア派兵 侵略への加担は許されぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.08】:北朝鮮のロシア派兵 侵略への加担は許されぬ
ロシアによるウクライナ侵攻をさらに長引かせかねない事態であり、許し難い。
ロシア西部クルスク州で、北朝鮮が派遣した兵とウクライナ軍が初めて交戦したと、米有力紙が報じた。ウクライナ軍が越境攻撃をしている地域で、北朝鮮兵はロシア軍部隊と戦闘に参加し、死者も出したとしている。
北朝鮮は派兵を否定せず、「国際法上の規範に符合する行動だ」と表明した。今年6月にロシアと締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」に基づく正当な軍事協力だという主張だ。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻は武力で他国の領土を奪おうとする国際法違反だと、国連決議で断じられている。
派兵は侵攻に加担する行為である。日本を含む先進7カ国(G7)の外相らが声明で指摘したように、十分に国際法違反になり得る行為だと、まず自覚すべきだろう。
北朝鮮とロシアの軍事協力がこれ以上深まれば、朝鮮半島情勢にも影響を与えかねない。東アジアの緊張が高まるのは必至で、国際社会を挙げて速やかに対処すべきだ。
ウクライナのゼレンスキー大統領は声明で「世界の不安定化の新たなページを開く」と述べた。2年8カ月と長期に及ぶ紛争が「国際化」しつつあるとの認識だろう。
部隊の参戦はアジアの国まで交戦の当事者となったことを意味する。韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は、ウクライナへの直接の兵器支援を「排除しない」とし、これまでの欧米への武器供与という間接支援からの転換に踏み込んだ。
派兵は1万2千人に上るとされ、北朝鮮の海外派兵は過去最大となる。ただ、ロシア語を使えず、現地の地理に詳しくない北朝鮮兵の戦力は未知数だ。多くの犠牲者が出るのは避けられない。
それでも金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記にとっては見返りが大事なのだろう。北朝鮮は米本土まで届く長距離ミサイルや核弾頭の開発で技術支援を求めたとされる。先月に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)は新型で高度は過去最高、飛行時間も最長だった。7回目の核実験も準備しているもようだ。体制維持のため、米国を意識して軍備増強する路線は変わりそうにない。
ロシアは自軍の死傷者が数十万人に上り、兵員不足に直面している。北朝鮮からこれまでの弾薬に加え、兵力の提供を受けることは、世論の懸念が強い動員にそう踏み切れないプーチン大統領にとって助けになるに違いない。
日米韓を軸に、ロ朝に影響力のある中国を巻き込み、対応策を模索すべきだ。
国際社会の局面も変わった。米国では大統領選に勝ったトランプ前大統領が来年1月、再び就任する。ウクライナ侵攻に対して首脳外交による停戦仲介を公言しており、仮にプーチン氏に譲歩した停戦案を示す事態になれば法の支配は揺らぐ。
尹大統領はトランプ氏との電話協議で、さっそく北朝鮮の派兵を議題にした。日韓は協調の枠組みを維持するよう繰り返し説く必要がある。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月08日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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