【社説①】:旭川中2いじめ 命なぜ救えなかったか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:旭川中2いじめ 命なぜ救えなかったか
旭川市の公園で昨年3月、中学2年の女子生徒が凍死して見つかった問題で、旭川市教委の第三者委員会がきのう、6項目のいじめを認定する中間報告を公表した。
加害者7人は、女子生徒にスマートフォンで性的な動画を送らせたり、菓子代を繰り返し払わせたりするなどしたという。
人間の尊厳を奪う行為のあまりのむごたらしさに言葉を失う。
何度もSOSが出されていたのに、なぜ教師ら周囲の大人はいじめを見過ごし、生徒を救えなかったのか。いじめ認定までこれほどの時間を要したのはなぜか。
数々の疑問が尽きない。遺族が深い不信感を抱くのは当然であり、市教委や学校の対応が適切さを欠いたことは疑えまい。8月末までにまとめる最終報告に向け徹底的な検証が必要だ。
生徒の死亡に至るまでの経緯も明らかになっていない。
尊い命が失われた事実を厳粛に受け止め、第三者委は全容解明を急ぐべきだ。併せて、責任の所在も明確にしてもらいたい。
今回いじめと認定されたのは2019年4~6月の事案だ。対面による聞き取りやアンケートに基づき事実を精査したという。
生徒は希望を抱いて入学した直後からいじめを受け続けた。その苦痛や、わが子の命を奪われた遺族の無念さはいかばかりか。
市教委と学校の対応の遅さ、不十分さは驚くばかりだ。いじめの開始から生徒の遺体発見までの約2年間、さまざまな被害を止められず生徒を守れなかった。
黒蕨真一教育長は会見で「いじめの認知に至らなかったことを深く反省」すると陳謝したが、理由については明確にしなかった。
組織の閉鎖性や事なかれ主義が最悪の事態を招いたとの指摘がある。まず問題点を徹底的に洗い出すことが必要だろう。
生徒がいじめの被害を訴えてから3年近く、調査開始から中間報告まで既に約1年経過した。作業を加速させなければならない。
最終報告では、実効性ある再発防止策を示すことも欠かせない。
第三者委の運営や調査手法を巡って、遺族側は聞き取りなどが不十分として不満を抱いている。当事者の心情をどこまで理解できるか今後の姿勢が問われよう。
いじめはいついかなる場所、場面でも発生する可能性がある。学校は子供の言動に目を配りトラブルの芽を摘むことはもちろん、命の大切さや、仲間への思いやりを繰り返し教える必要がある。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月16日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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