【中山知子の取材備忘録・01.26】:石破首相リベンジへ…大相撲初場所で内閣総理大臣杯授与に動く 「自分の見せ方」どう演出?
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・01.26】:石破首相リベンジへ…大相撲初場所で内閣総理大臣杯授与に動く 「自分の見せ方」どう演出?
「えーー」「それだけ?」「裏金は脱税ですから」「遅い!」。
石破茂首相が、昨年10月の就任後、初めて臨んだ1月24日、通常国会召集日の施政方針演説。40分あまりの演説を本会議場で取材したが、冒頭のようなやじが節目節目でとんだ。あからさまに激しい内容はなかったけれど、最初から最後まで絶妙のタイミングでとび続けた。
こうした野党のやじに、かつての政権では自民党席から反発するように「逆ヤジ」で対抗することもあったが、今回「援護射撃」は、まるでなし。何より、石破首相が語った内容に拍手が起きた場面は数えるほどで、しかも弱々しいパラパラ程度。石破首相の立場をあらためて実感した。
「自分の言葉」が売りだったはずの石破首相は、やじに反応する時を含めて時折、顔を上げることもあったが、大半の時間は原稿に目を落として読んでいた。一体、どれくらいの国民が共感を覚えるのだろうと思う「楽しい日本」を目指すという、石破首相肝いりのキャッチフレーズも多く登場したが、原稿棒読みでちっとも楽しそうではない姿に、この肝いり場面ですら自民党席の拍手はほぼなかった。代わりに野党席から「何言ってるの?」と、やじがとんだ。
衆院本会議の後、取材に応じた立憲民主党の野田佳彦代表が「暗い顔をして(楽しい日本と)語られても、メッセージが伝わってこない。言葉自体が空回りし、熱伝導のない演説だった」と感想を述べたが、たぶん、多くの人が感じたことだったのではないだろうかと感じる。
「楽しい日本」をただ言葉として「読む」のではなく、説得力をもって「語る」という技が、首相には欠けていたような気がする。これはよく耳にすることだが、石破首相は「自分の見せ方」があまりにもヘタすぎやしないか、という指摘にも、だからこそなんとなくうなずいてしまう。
そんな石破首相も、「見せ方」を意識し始めたのではないかと感じる動きが出ていた。今日1月26日、大相撲初場所の千秋楽が行われる国技館を訪れ、優勝力士に内閣総理大臣杯を手渡すことが発表された。これは、昨年11月の九州場所での「失態」(自民党関係者)のリベンジではないか、と見る向きがある。
というのも、石破政権発足後、初めての場所だった九州場所の千秋楽に政府の代表者がだれも出席せず、日本相撲協会の八角理事長が「代理授与」するまさかの対応に。相撲ファンも多い永田町ではちょっとした話題になった。事前に出席依頼を受けていたが、よく授与に登場する官房副長官の姿もなかった。
この場所で初優勝したのは、大関琴桜(27=佐渡ケ嶽)。先代師匠で祖父の元横綱琴桜とは、石破首相は鳥取の同郷ということもあり「事前に調べたら分かることだったはず」と、おかんむりの声も聞いた。さすがに首相は、琴桜に電話をかけて初優勝をお祝いしたそうだが、間の悪さは否めなかった。林芳正官房長官の定例会見でも質問が寄せられ、林長官は関係者の日程の都合がつかなかったとして「今後は日程の都合が付く限り、政府関係者が出席をする」と釈明した。
九州場所千秋楽の後、当コラムで、石破首相の「失点回復」は来年の初場所で実現するだろうか、と書いた。初場所は1年で3度しかない国技館開催の1つ。27日に衆議院の代表質問を控える石破首相も、授与に行けるチャンスがめぐってきた。NHKで生中継されることもあり、首相の国技館登場は「人気取り」の側面もあるとかつて聞いたが、支持率が高くない首相でも、施政方針演説の本会議場のように場内からやじが乱れ飛ぶようなことは、経験上、なかった。石破首相があまり得意ではない「自分の見せ方」という観点からすると、よほどの緊急事態が起きない限りは、大きな見せ場が到来する。
ただ、国技館での「見せ場」はほんの一瞬。翌27日からは国会で、「楽しい日本」などについて、野党に総ツッコミを受ける可能性もある。ほんの一瞬だが大事な見せ場で、首相はどんな立ち回りを見せるのだろう。【中山知子】
◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】 2025年01月26日 11:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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