『エリザベート』の思い出(4)
また本を思いきります
ルドルフ
(2012年『オモシィ・マグ』創刊号より)
ルドルフの強さが次第に崩れていく様を描き、最終的には希望が残るような演技にしたい-古川雄大さん
「-ルドルフ役をどう演じたいとイメージしていますか?
ルドルフは自分の中に孤独を抱えている人物だと思いますね。そして、ハプスブルク家を救うために自分でいろいろとトライしていくところがある人だから、本来は精神的にも強いものを持っていたと思うんです。でも、その強さが次第に崩れていく様子を描き出したい。そして、最終的には希望が残るような演技にしたいですね。
-希望ですか?
ルドルフが亡くなった後、ルドルフが思い描いていたように時代は変わっていったところもある。ルドルフもただ無為に亡くなったわけでなく、何かを残せた人だと思うんです。その希望の部分も描けたら、と思います。
-なるほど、これは今までのルドルフ役の方の解釈とは大分違うような・・・?
僕は先輩の方がどう演じているかも気になるのですが、僕にしかできないことをやりたいと思っているので、新しい発想を取り入れていきたいなと思います。
-小池先生からはオーディションのときなどに、何と言われましたか?
「歌い方や表現方法が他の人とは違うから面白いね」と言っていただきました。
-自分でもそう思います?
うーん、どうだろう? 僕はオーディションのときはありのままでいこうという意識があって、いい意味でリラックスしてできたから、小池先生もそう感じられたのかもしれないですね。
-ルドルフ役が決まってから、どんな準備をしていましたか?
まず、歌のレッスン。ボイストレーニングと、自宅だと近所迷惑になるので毎日カラオケボックスに往って歌ってました。時代背景が難しいので理解することから始まり、ミュージカルの台詞や歌詞を理解することに時間をかけましたね。
-『エリザベート』の稽古が始まっての感想は?
いよいよ動き始めてきたんだなって感じでした。自分としては受かった瞬間から動き始めていたんですけど。
稽古が進んでいくにつれ、自分が思い描いたものとは違うものへと変わっていくと思っています。でも、最終的には自分の思いのままにまっすぐにぶれないで演じたい。台本を読んでいろいろ調べた限りでは、いろいろなルドルフが存在するなと思っていて、そこに今回も前回もトリプルキャストだった意味がある気がしているんです。その中で自分のルドルフを作らないといけない。いろいろな意見に耳を傾けながら、最終的にはまっすぐにルドルフを演じたいと思っています。
-稽古や本番で、楽しみにしていたことは?
(平方)元基君から「小池先生の演出は厳しいよ」と聞いていたんですが、すべてが勉強になると思うので楽しみにしていました。経験が浅い僕がベテランの素晴らしい方々に混ざってやるわけですから、大変なことがあったとしても、まず自分から楽しむことが必要だなと思いますね。一つ一つを楽しみながらやる。多分、心が折れそうなこともあると思うんですけど・・・。
-共演者で今まで関わりがあった方はいらっしゃいますか?
高嶋政宏さんとは人を通したご縁があって、製作発表のときから気さくに話しかけてくださって。「稽古期間が短いけど、頑張ろうね」と話してくださったので、少しホッとしました。
-では逆に大変だなと思うことは?
歌、お芝居、ダンス、コミュニケーション・・・すべてにおいて大変だと思いますね。体調管理も気をつけないと。
-長丁場の公演ですからね、体調管理はどうしていますか?
はい、以前ミュージカル『テニスの王子様』で今回と同じくらいの期間で全国を公演したんですが、それとは全然雰囲気が違うので。その経験がプラスになればいいと思いますが。体調管理は基本的なことですね。手洗いとうがい、喉飴なめたり加湿器を使ったりして、喉の調子が常にいい状態でキープするように気を配ろうと思います。
-『エリザベートという作品で魅力を感じるところは?
『エリザベート』が長く続いているのはちゃんと理由があることだと思いますね。魅力もとてもたくさんあると思う。内容としてエリザベートという強い女性の生き方が描かれているところ、そしていろいろな登場人物が運命の渦に巻き込まれていくところが魅力だと思いますね。もちろん、歌のナンバーも素晴らしいし、魅力を言い出したら言いつくせない。ルドルフという存在もとても魅力的だと思います。
-作品しては最後のほうに登場して、ルドルフの生涯を約20分の出番ですべて生き切る、という役ですものね。
そうなんです、そこですべてを表さなければいけない。難しいですが、挑戦していきます。
-最後にお客様へメッセージをお願いします。
今回はルドルフ役はトリプルキャスト。三者三様のルドルフになると思うので、ぜひ三人とも見ていただきたいと思います。ほかのキャストの方々ともいろんな組み合わせで見られるのも魅力の一つと思うので、楽しみにご覧いただけたらうれしいです。」
2012年、帝国劇場では『エリザベート』に続いて『ルドルフ・ザ・ラスト・キス』が上演されました。井上芳雄さんとルドルフ3人衆によるルドルフトークもあり盛り上がりました。(司会は宝塚OGの久路あかりさんでした。)この時は声も体の線も細かった古川さんが成長していった姿に『ルドルフ~』を演ってほしいなあと思うようになりましたが、年齢を考えるともうないかな、わたしの中で勝手に心残り。
『Rudolf THE LAST KISS』(4)